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金融教育、まず何から始めたらいい?お金の専門家と経済記者が教える5つのポイント【解説】

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「国家戦略」としても注目の集まる「金融教育」。金融教育とは、家計管理の方法や資産形成など「お金」の知識や判断力を身につけるもの。学校教育の現場でも拡充されつつありますが、家庭での金融教育はどこから始めたらいいのか。お金の専門家で「日本金融教育推進協会」代表理事の横川楓さんと、お金や経済をテーマとした青春小説「おカネの教室」の著者で経済記者の高井浩章さんに聞きました。

【目次】

1. 身近に感じさせ、子どもたちの「感情」を動かす

2. 「財布の中」から始める

3. 家庭で「お金」について話せる環境を作る

4. 勉強の仕方を学び、自分の人生に当てはめる

5. なぜ金融教育は重要なのかを知る

(左から)横川楓さん、高井浩章さん=提供写真(左から)横川楓さん、高井浩章さん=提供写真

ポイント①身近に感じさせ、子どもたちの「感情」を動かす

金融教育をする上で、まずはじめに大事な“前提”として、高井さんは「『お勉強』として押し付けるのではなく、子どもたちが学びたいと思うように『感情』を動かすこと」だと指摘しました。

「実は『お金』は人の感情を動かしやすい。『これを知らないと損するよ』とか、『これがわかると面白いんだよ』と伝えることがまず大切だと思います」

高井さん自身、3人の娘の父親。2018年に出版した小説「おカネの教室」は元々、家庭内で娘たちに向けて書いた連載がきっかけでした。

「長女が10歳になった頃、お小遣いを自分でコントロールするようになり、そろそろ『お金』について知って欲しいなと思って小説を書き始めました。単なる解説ではなく、面白いストーリーにしないと娘は読んでくれませんから」

横川さんも、子どもたちに興味を持ってもらうためにも、「教える側の先生や大人の視点が大事」と指摘しました。

「教科書を読むだけだと、どうしても『テストのためだけの勉強』になってしまいます。『教わる側がいかに教わる内容を身近に思えるかどうか』がすごく大切だと思っています」

その一つの例として、クレジットカードの仕組みや使い方を教える際のアドバイスとして、こう説明しました。「親がどうやって日頃使っているかという話や、そもそも『お金』はお母さんやお父さんが働いて、稼いできて入ってきたものだという話など、生活に寄り添った視点を入れ込むと理解が深まると思います」

ポイント②「財布の中」から始める

イメージ写真イメージ写真

高井さんは、教える際の「金額」の規模についても指摘しました。

「子どもたちは自分の財布の範囲内くらいしか『お金』のことをイメージできません。いきなり高校の授業で『資産形成』と教えられたり、『老後資金2000万円問題』と言われたりしても、大きな金額や将来の話は想像しにくい。『財布の中』から説明する形にするのがいい」

その上で、まず大事なのは「お小遣い規模」だといいます。

「子どもが自分で触れたことのある金額から始める。その次は『家計』。毎日ご飯を食べたり、家賃を払ったりしているけれど、そのお金はどこから来ているのか。お父さんやお母さんが働いて、お給料がもらえる仕組みがあるけれど、そのお給料はどこから来ているのか……というふうに広げていく」

その次のステップとして高井さんは、子どもたちがニュースやYouTubeなどに触れ、「お金」について関心を持ったタイミングで、教えていくことをおすすめしました。

「経済や金融、投資について『これどうなってるの?』と聞かれたらその都度答えていく。親だって全て答えられるわけではないので、分からなかったら調べればいい。子どもが関心を持ったタイミングで、伝えていくのがいいと思います」

ポイント③家庭で「お金」について話せる環境を作る

イメージ写真イメージ写真

横川さんは、家庭での金融教育において1番大切なこととして、「お金のことを話せる環境作り」を挙げました。

「家庭で具体的に何かを教えましょうという前に、まず大切なことは『お金のことを話せる環境作り』です。例えば、誰かにお金を借りてしまったといったトラブルについてや、投資してみたい、家計簿アプリを使ってみたいなど、『お金』について気軽に親に相談したり、聞いてみたりできる場を家庭で作るということが、1番の金融教育なのではないかと思っています」

横川さん自身、子どもの頃に親と実際のお金を使ったお店やさんごっこや、商売を体験するようなごっこ遊びをした経験から、「お金」について考えることに抵抗がなくなったといいます。

高井さんも、家族で買い物に行った際、子どもが欲しがったものの値段をきちんと伝えたり、売っている店によって値段が変わったりすることを教えてあげることが大事だといいます。

「いつもコンビニで買っているアイスクリームに比べたら、この店のアイスクリームは3倍する。なぜかといえば、お店の場所がいい、土地の値段が高い、店員さんがよそってくれて笑顔で渡してくれる。だからその分値段が高くなるんだよ、と」

高井さんは、「お金」の話をポジティブに話す姿勢も大事だといいます。「欲しいものがある子どもに『我慢しなさい』というのは親として辛い部分もありますが、『その欲しいものを買うためにどうやってお金を貯めたらいい?』というふうに考えさせる」

ポイント④勉強の仕方を学び、自分の人生に当てはめる

経済や金融の仕組みのほか、将来に向けての資産形成について、高井さんは「収入や保有資産の状況など、人によって全く異なります。特に資産形成は、100人いたら100人答えが違う。全員にとっての『正解』はないので、『学び方を教える』ことが大切です」と語りました。

書店に行けばたくさんの金融商品についての本があり、インターネット上にもさまざまな情報があふれています。

高井さんは、日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会が運営する情報サイト『知るぽると』をおすすめしつつ、こう語りました。

「問題は、どの本を読んだらいいかわからないし、『知るぽると』のどこを見たらいいのかがわからないことです。なので、子どもには、どこから勉強したらいいのかを教えてあげることが大事だと思います」

日頃から、学生や女性たちに向けて「お金」にまつわるセミナーなどに登壇している横川さんも、「学生さんたちの中には『何を学んだらいいのかわからない』というところからスタートする方もいますし、生き方も多様化しています。そんな中で大事なのは、お金についての基礎知識をつけて、それを自分の人生に当てはめていくことだと思います」と語ります。

結婚や家族のあり方も多様化し、人によって必要な知識もタイミングもそれぞれ。横川さんは「自分の人生に知識をどんどん当てはめていくことが、これからよりスキルとして必要になってきます」と指摘しました。

ポイント⑤なぜ金融教育は重要なのかを知る

金融教育がなぜ必要なのかについて改めて知ることも重要です。横川さんは、その重要性について3点を挙げて説明しました。

①選択肢が増える

②トラブルを未然に防げる

③社会の解像度が上がる

「私は小学校で母子家庭になりましたが、親が制度などを活用してくれたおかげで、住む場所を変えられたという経験があります。制度や仕組みを知っていれば、選択肢が増えたり、活用できるものを活用できたりするということがあります。

また、基本的な知識があれば、お金に関するトラブルを未然に防ぐことにもつながりますし、制度や仕組みを知ることで、社会の解像度も上がります」

高井さんは金融教育のゴールとして、「『たかがお金、されどお金』と言えるようになること」を挙げました。その理由について、「日本では『たかがお金』ということはよく言われますが、『されどお金』なんです。『されどお金』という考えで、きちんとお金や経済に関する知識を身につける。その上で、やはり『たかがお金』なんだと理解することが大事だと思います」と話しました。

その上で、こう説明しました。「お金はゴールではありません。お金は『どう使うのか』が先にあるものです。自分らしく充実した人生を送るために必要なお金があればいい。『たかがお金』のことで人生が左右されないように、『されどお金』だということを知ることが大人になるということです」

(この記事は、2022年8月29日に開催されたTwitter Spaces「#お金を話そう」の内容を一部加筆・編集しました)

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