「学校に行きたくない」━━。
さまざまな理由から悩みや不安を抱え、生きるのがつらいと感じ、自ら命をたつ子どもが多いとされる夏休み明け。
「私たち大人にできることはないか」との思いからさまざまな発信や取り組みが進むなか、子どもの生きづらさへの社会的な関心が高まっていることが、ニュースアプリ「SmartNews」を運営するスマートニュースの調査(※)で分かった。
閲読数は2倍、滞在時間は3倍以上に
2020年から2021年において、ニュースアプリ「SmartNews」に掲載された「不登校」「いじめ」「生きづらさ」に関する記事についてユーザーの閲読データを調査したところ、1人あたりの記事数、閲読数(PV)、記事滞在時間(合計)のいずれも増加していることが分かった。
調査結果について、同社は「子どもの生きづらさへのメディアの関心の高まりによって記事数が増えていることに加え、記事の閲読数(PV)や滞在時間が2、3倍以上になっており、子どもの生きづらさへの社会的な関心が高まっていることがうかがえる」と分析した。
コロナ禍で大人の悩みは仕事から子育てへ
調査結果を受けて、企業の産業医を務め、クリニックで若い世代のカウンセリングも行う精神科医の尾林誉史医師(VISION PARTNER メンタルクリニック四谷院長)は、次のようにコメント。
<「不登校」に関してはその量が、「いじめ」に関してはその質が、大きく変化したのではないでしょうか。
学びの場や遊びの場が奪われ、子どもたちの活動の場は否応なしに家庭へと移りました。両親が共に働く家庭は多く、学校をはじめ、習い事や塾などの代替機能を、家庭が果たさざるを得ない現実に直面し、大人も子どもも、呆然と立ち尽くす状況になった。
そして、生活習慣が大きく歪められた結果として、不登校となった子どもが増え、相手との距離感やコミュニケーションの取り方を正しく身につけられないことで、いじめの質が変容してしまった。
危機感を抱きつつも、日々働かなければならない現実に葛藤する大人と、救いを求めた一部の子どもが、一縷の望みを託して情報を求めた結果が、今回のデータが持つ意味なのではないかと考えています。>
<コロナ以前は大人の相談ごとの多くが、仕事由来でした。
それは、子育てに悩まなかったというよりも、悩みのプライオリティーという点で仕事の方が高く、仕事を充実させることが、同時に子育ての悩みも解決することにつながっていた、ということなのだろうと思います。
しかし、代替機能として多くの役割を果たしていた学校や習い事、塾などに一切頼れなくなると、路頭に迷い、傷つき、疲弊しきった子どもが、家庭に四六時中いる状況が生まれます。
すると、子育ての問題は、いくら経済的な手段を用いても、誰も解決してくれないことがありありと理解されるわけです。
子育てに悩む大人が増えたという表現を精緻に言い換えれば、間接的に子育てしていたがために悩まずにいた大人が、直接的に子育てするほかないために悩み始めた、と言うことなのかもしれません。>
また、子どもが「学校に行きたくない」と伝えてきた時の対応について、
<格好をつけないことです。子どもの気持ちは、揺れ動くものです。子どもの顔色を窺うということではなく、その時に感じている子どもの気持ちを尊重してあげることが大切です。
そのために大人は、常に柔軟であること、首尾一貫に徹しすぎないこと、時に優しく包み込み、時に本気で励ますことなどを心がけると良いでしょう。
「あなたのことを、いつでも見守っている」という子どもにとっての安心感と、「社会の中で、しっかりと戦っている」という大人としての振る舞い、どちらも欠かすことなく示してあげることが大切だと思います。>
とアドバイスした。
夏休み明けに向けて、同社では8月25日より国内ニュースチャンネル内に特集ブロック『夏休みが明ける〜子どもたちの生きづらさ』を設置。
「子どもの周りの大人の方々が、子どもたちの生きづらさに目を向け、寄り添うことのきっかけになれば」と、不登校、いじめ、貧困など、子どもを取り巻く社会課題や、その解決を目指す取り組みを伝える記事をまとめて配信するという。
(※)SmartNews閲読データ調査概要
調査期間:2020年1月1日〜2021年12月31日
対象記事:期間中にSmartNewsアプリに掲載された記事
記事の抽出:記事タイトルに「不登校」「いじめ」「生きづらさ」のいずれかを含み、本文中に子どもに関連するキーワードを含むもの(子どもの話題と直接関係のない記事は除外)。
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生きるのがつらいと感じたり、悩みや不安を抱えて困っているときには、以下のような気軽に相談できる場所があります。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「不登校」「いじめ」子どもの生きづらさへの社会的関心が1年で2倍超える【調査結果】