Netflixのリード・ヘイスティングCEOは、7月20日に行われた投資家向けのビデオ会議で「テレビは死ぬ」と語り、同社の立場の優位性をアピールしました。しかし現状のNetflixは、けして楽観的にはなれない厳しい状況にあります。
*Category:テクノロジー Technology|*Source:The Verge ,NetFlix
ヘイスティングCEOは、もう8年以上も「テレビ殺し」を掲げています。今回の会議でもビデオ会議でもその信念を繰り返し、「5年から10年でリニアテレビは死ぬから、Netflixは素晴らしい場所にいる」と語りました。
しかし、Netflixが現在、苦戦を強いられているのは疑いようのない事実です。同社の第2四半期決算報告では、今年3月末から6月末までの間で、米国とカナダで会員数が128万人の減少し、全世界の加入者数が100万人減少していることが明らかになっていました。
同社はこの原因としてアカウント共有の問題を挙げており、改善のための様々な試みを行おうとしています。しかし、根本的な原因として、ストリーミングサービスの飽和も挙げられています。
この飽和の影響で、コロナ渦はNetflixにとって上手く働きませんでした。コロナ渦が始まる前から、ストリーミングで番組や映画を楽しむ人のほとんどは、すでにNetflixを契約している状態でした。そのような既存ユーザーがコロナ渦により、他のサービスを試すようになったのです。
すでに限界に近いNetflixとしては、他のサービスからの加入者を狙う必要があります。つまりヘイスティングCEOとしては、テレビ放送が滅びてくれるというよりは、むしろ滅びてもらう必要があるのです。
また、この発言を取り上げたテック系メディア「The Verge」は、リニアテレビが無くなることについて疑念を抱いています。テレビの視聴者数が減っていることは間違いありませんが、それでもまだ多くの視聴者を持っています。
その理由の1つが、テレビ放送が無料で見られることです。同メディアは、人気のティーン向けテレビドラマが、長い間Netflixで最も消費されたコンテンツの一つであったことを指摘しています。テレビとアンテナさえあれば、ストリーミングサービスのように月額を払わなくても、このような多くの人気コンテンツを視聴することができるのです。
また、リニアテレビの最大の特徴として挙げられるのが、「垂れ流しでストリームされていること」です。日々の生活のバックグラウンドとして機能するのは、多くのストリーミングサービスにはない特徴です。このように棲み分けが進んだ現在、今後急激にテレビ視聴者が消えるということは考えにくい状態になっています。
「The Verge」は、テレビがNetflixよりも苦戦していることは確かなものの、ストリーミングサービスも多くの問題を抱えていると指摘しています。この状況で、ヘイスティングCEOが望むように「5年から10年の間」でテレビ放送が滅ぶのかどうかはまだ分かりません。
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Netflix CEOの「テレビは死ぬ」発言が示す危うい現実