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低迷する投票率、投票所の減少と関係は?「いまこそ投票しやすい環境の議論を」【参院選2022】

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7月10日に行われた参院選。総務省のまとめでは、投票率(選挙区)は52.05%となり、前回(2019年)の48.80%から3ポイントほど増えたが、引き続き低い水準となった。

国政選挙の投票率の低迷にはさまざまな背景があると見られるが、投票所の減少や投票時間の短縮が投票率の減少につながるという気になる研究結果も…。

専門家は、期日前投票をさらに充実させることやネット投票、郵便投票の導入など「いまこそ投票しやすい環境の議論を」と語る。

参院選の投票をする有権者(東京都新宿区、2022年7月10日)参院選の投票をする有権者(東京都新宿区、2022年7月10日)

1万人あたりの投票所数が1つ減ると投票率は0.17ポイント下落する

総務省によると、今回の参院選(7月10日投開票)の当日投票所は全国で4万6017か所。前回の参院選(2019年、4万7033か所)から1000か所ほど減った。また、投票時間を法定の午後8時から繰り上げる投票所も広がっていて、今回は全国1万7269か所が終了を繰り上げた。

衆院選でも同じ傾向にあり、2021年の衆院選では全国4万6466か所で、2017年の衆院選から1275か所減った。

こうした投票所の減少と投票率の関係を調べたのが、大阪大学の松林哲也教授(政治学)だ。

2016年の論文で、以下の分析結果を踏まえて「日本の有権者が投票環境の違いに敏感に反応し、利便性の高い投票環境が整備されると投票率が上昇することを示唆している」とまとめた。

・2005年から2012年の3回の衆院選における34都府県の市町村パネルデータを用いた分析によると、1万人あたりの投票所数が1つ増えると投票率は0.17ポイント上昇する(1万人あたりの投票所数が1つ減ると投票率は0.17ポイント下落する)。

・市町村内の全ての投票所で投票時間が2時間短縮されると投票率が0.9ポイント下落する。

一方で、期日前投票所は数が増えている。今回は全国で6157か所で、前回の5713か所から400か所以上増えた。ショッピングセンターや大学、駅構内などさまざまな場所にも開設されている。

今回は期日前投票には全体の18.60%にあたる1961万人あまりが投票。前回よりも選挙期間が1日長いため単純な比較はできないが、2.49ポイント上回った。

松林教授は2017年の論文で、期日前投票所と投票率の関係についても分析。

2005年から2014年にかけての衆院選における市区町村パネルデータを用い、市区町村内の期日前投票所数の増加により投票率が上昇したという「暫定的エビデンス」が導き出されたとし、「期日前投票制度が普段は投票に行かない人々の参加を促した可能性を示唆する」としている。

人口減少なども踏まえて当日投票所が減る傾向が続く中で、どんな議論が必要か、松林教授に聞いた。

環境を変えることが、意識を変えることにもなる

ーー今回の参院選でも当日投票所の減少傾向は続きました。ご自身の研究も踏まえ、国政選挙で投票所が減り続けている状況をどのように見ていますか。

特に地方で人口が減少していることも踏まえて、各地で投票所が減っています。投票所がたくさんある方が良いのは間違いないのですが、投票所の運営には立会人の確保など人手も必要で、特に小さな自治体にとっては大きな負担になっています。

自分の研究からも投票所が減ると投票率が減る傾向は示されており、今回も投票所が減ることで利便性が低くなり、結果として投票所に行かない有権者がいたことは想像できます。

ーー一方で、期日前投票所は数も増え、ショッピングセンターで投票できるなど充実してきました。

当日投票所に行くのが不便になったとしても、買い物や役所に行くついでに期日前投票を済ませられるということで、利便性が高いと感じる人もいるでしょう。 

いまちょうど衆院選のデータを集めていて、期日前投票所が増えることで、当日投票所が減少することによる投票率の減少を相殺できるのか調べています。

投票機会をできるだけ確保するべきですが、一方で資源的な意味でできないこともある。

それであれば、投票環境の充実が有権者にとってどういう意味があるのか、何があれば私たちにとって便利になるのかということを、いま、考えていかないといけないのかなと思います。

ーー 具体的にはどんな議論が必要ですか。

現在の公職選挙法は、基本的には選挙当日に投票に行くことが前提となっていて、期日前投票は「例外措置」です。

もちろん自治体によって期日前投票所を増やしていますが、法律上は各市町村に1か所以上あれば良いことになっています。

そもそもその制度設計で良いのかということも議論が必要だと思います。

例えば、当日投票所はもう少し減らしたとしても、期日前投票所をもっと増やすよう、徒歩圏内に設置義務を課すやり方もある。 

選挙当日に投票することが原則ではなく、例えば1週間投票期間があって、その間は同じ自治体内であればどこで投票しても良いというような制度も考えられます。

また、郵便投票の仕組みを簡略化したり、ネット投票も議論するべきだと思います。

ーー投票に参加するということの意味を教えてください。

投票に行く、行かないは個人の判断にはなるのですが、少し大きな視点で考えたとき、いま日本では投票に行かない人が特定の層に固まっているということが想定されています。ひとつは年代ですね。

ほかにも、労働環境が悪くなって格差が広がる中で、特に経済的に困窮している人たちが投票に行かない状況になっているとも言われます。

経済的に苦しんでいる人たちの声が、政治に反映されないという状況がさまざまな国で起きているということを示す研究結果もあります。

そうすると、政治的な不平等と経済的な不平等がつながっていることも考えられます。現在の制度では誰が投票に行けてどういう人にとって有利な設計になっているのかを考えることも大切かなと思います。

「投票に行こう」という意識の啓発はとても大事なのですが、意識を変えることはなかなか難しい面もあります。

環境が変わることで意識が変わることもあるので、そういう意味で投票環境の充実は大事だと思っています。 

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低迷する投票率、投票所の減少と関係は?「いまこそ投票しやすい環境の議論を」【参院選2022】

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