寄り添う同性カップルの後ろ姿に込められたメッセージは、「当たり前に一緒にいられる、そんな未来を」――。
東京・新宿にあるコスメブランドLUSH(ラッシュ)旗艦店は6月24日、「結婚の平等」の実現を表現したアートやメッセージであふれた。
これは、ラッシュのキャンペーン「結婚の自由をすべての人に」第2弾の企画「アートでアクション」だ。
「公益社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に(通称:マリフォー)」の活動を支援するもので、アートを通して、法律上同性のふたりが結婚できる社会の実現を、後押しする。
「声こそが、結婚の平等を後押しする」
今回のキャンペーンは、6月24日〜7月10日まで、全国70以上のラッシュ店舗や公式サイトで実施される。
キャンペーンの中心になるのは12名のクリエイターが手がけたアート作品。結婚の平等実現の重要性や、そのための行動の大切さについて表現している。
作品は店舗で展示されるほか、数量限定でポストカードも配布される。また、データをラッシュ公式サイトからダウンロードして投稿したり、待ち受けにしたりすることも可能だ。
すでに、SNSには #結婚の自由をすべての人に #マリフォーLUSH #マリフォー国会メーター などのハッシュタグとともに、作品や「素敵なイラスト」「待ち受けにしました」などのメッセージが投稿されている。
【ArtでAction】賛同いただいた12人のクリエイターが想いをアートで表現。待ち受けにしたりシェアしたり賛同の輪を広げていきましょう!ハッシュタグもお忘れなく!DLはこちらからhttps://t.co/RE9x3ooQPS#結婚の自由をすべての人に#マリフォーLUSH#マリフォー国会メーターpic.twitter.com/M5q6PF6NNQ
— LUSH (ラッシュ 公式) (@LUSHJAPAN) June 24, 2022
ラッシュは3月にも、この「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンを実施していて、今回で2度目となる。
両方に共通しているのは「結婚の平等に賛同する声」を可視化し、会話を広げること。
ラッシュジャパン合同会社のコーポレートコミュニケーションマネージャー小山大作さんは、その理由を「声こそが、結婚の平等を後押しするから」と話す。
「私たちはキャンペーンを通して、結婚の平等の法制化には、賛同者の声を可視化して、国会に届けることが必要だとお伝えしています」
「市民の声が大きければ大きいほど『これだけ多くの人が必要としているんだ』ということを、国会や裁判所に伝えられます。社会にムーブメントを起こそうと活動しているマリフォーを支援するためにも、声を上げ、会話を可視化させるためのプラットフォームとして、ラッシュを使ってもらいたいと思っています」
声を国会に届けるために大切な方法の一つが選挙だ。
マリフォーは、現役の国会議員が結婚平等に賛成かどうかわかるウェブサイト「マリフォー国会メーター」を作っていて、ラッシュ店内には、そのページを紹介するパネルも展示されている。
また、小山さんは今回アートという形を選んだ理由について「声を上げにくいと感じている人も発信する力があるから」と話す。
「声を上げることは大事ですが、難しいと感じる人もいると思います。そういった声を可視化するにはどうしたらいいだろうと考えた時に、言葉がなくても伝えられる、アートが良いのではということになったんです」
「アートとハッシュタグだけで意思表示できるような、カジュアルに会話する一つの方法として、展開したいと思っています」
ラッシュがキャンペーンをやる理由
ラッシュが結婚の平等を後押しする背景には、同ブランドのビジネスの核である「社会を、誰もが生き生きと自分らしく生きられるものにする」という考え方があるという。
ラッシュはこれまで10年近く、日本でLGBTQ当事者を支援するためのキャンペーンを実施してきた。その間に社会は大きく変化し、LGBTQいう言葉が知られるようになっただけではなく、全国の地方自治体にパートナーシップ制度も広がった。
しかし、パートナーシップには、結婚のような法的効力はない。
ラッシュは、LGBTQの権利擁護のため、日本で実現すべき課題は結婚の平等だと考えているという。そのために、3月に実施した1回目のキャンペーンでも「結婚できないとどんな不利益が起こるのか、なんで婚姻の平等が必要なのか?」を伝えてきた。
小山さんは今回のキャンペーンでも「結婚平等について考えるきっかけを作り、実現のための輪を広げていきたい」と強調する。
「結婚の平等の法制化について、さまざまな意見があると思います。大切なのは、まず結婚の平等を知り、どう思うのかを考えることです。そして、実現を望む人に何かしらの行動に結びつけてもらえたらと思っています」
「家に帰って家族と話す、友達と話をする、ソーシャルメディアに投稿する、結婚の平等についての記事を検索する……何でもいいと思うんです。私たちのプラットフォームを介して、行動の輪をどんどん広げていけたらと思っています」
予期せぬ嬉しい反響
小山さんによると、第1弾のキャンペーンでは、予期せぬ反響もあった。
このキャンペーンでは、チャリティーソープを販売。その時に、ラッシュのショップスタッフは来店者に商品の情報だけではなく、結婚の平等の法制化に対する自分達の考えなども伝えた。
すると、全国の店舗やSNSで「家族や友人にはカミングアウトしていないという人が店を訪れ、スタッフにカミングアウトした」という声が、続々と寄せられた。
小山さんは「お客さまが信頼して下さったんだと思います。そのおかげで、コミュニティができた」と話す。
「もちろんお店は買い物をする空間なのですが、その概念を大きく超え、コミュニティスペース化したと感じました。買い物をするしないに関係なく、多くの方がラッシュを安心できる場所と感じて何度も戻ってきて下さり、話しができる場になりました」
「カスタマーセンターに『化粧品の買い物をして、自分のセクシャリティや結婚の平等について話をしたのは、生まれて初めてです。本当に感動しました』という声も寄せられました。本来の目的とはまた別の、想定もしていなかったサクセスだったと感じています」
小山さんは今回のキャンペーンでも、こういったコミュニティが広がってほしいと願っている。
企業にはできることがある
1回目のキャンペーンでの予期せぬ喜びがあった一方で、つい先日、結婚の平等実現を願う人たちにとって、ショックな出来事もあった。
全国5つの地裁・高裁で進められている「結婚の自由をすべての人に」裁判で、大阪地裁は6月20日、「法律上同性のふたりの結婚を認めない現在の法律は、憲法に違反しない」という判決を言い渡した。
「非常に残念な結果だった」と話す小山さん。その一方で、判決後に「だからこそ、もっと声を上げないといけない」というポジティブな波が起きているのを感じているという。
そのため、今回のキャンペーンでポジティブな波をもっと大きくして、日本中で結婚の平等の大切さを伝えていきたいと決意している。
さらに、小山さんは「こういった時にこそ、企業はその影響力を使ってできることがある」と話す。
「企業は情報を発信するプラットフォームやコミュニティを持っています。メッセージを発信し、届けられる土壌があると思うんです」
「それぞれの会社で異なると思いますが、私達のようなリテール業界は、お客様を相手にビジネスをしていて、当然その中には、セクシュアルマイノリティーの方たちもいらっしゃいます。みんなが共存する社会でビジネスをしている企業としては、(判決は)人ごとではないと思います」
「だからこそ、私たちは今回のキャンペーンでアート素材をフリーで提供し、企業や個人の皆さんに『これを使って会話を始めてみませんか』と呼びかけています」
「企業は影響力があります。特にLGBTQを応援する、という声を上げている企業さんには、一緒に変化を作っていきませんか?と伝えたいです」
今回のキャンペーンは7月10日までだが、小山さんがそれで終わることはない、とも話す。
「私たちは結婚の平等の法制化が実現するまで、声を出し続けます。お約束します」
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結婚の平等実現のため、企業にできることがある。ラッシュが「結婚の自由をすべての人に」キャンペーン第2弾を開始