「議会のジェンダー配慮への評価に関するアンケート調査」の報告書が発表されました。
衆院議員465人を対象に無記名で実施されたものですが、「現在、女性国会議員は十分だと考えるか」という質問に対して、82.7%の議員が「不十分」「どちらかといえば不十分」と答えています。
結果詳細については、各報道で確認していただければと思いますが、なにしろ衆院が現職議員を対象にアンケート調査を行うのは初めてのこと。アンケート記入という形で議員たちがこの問題に向き合う機会があっただけでも私は意義があったのではと感じています。
永田町のジェンダー平等に対する「無関心」
というのも、昨年からスタートした「クオータ制実現に向けての勉強会」を通じてこのテーマを永田町で取り上げるたびに感じるのは、女性国会議員を増やすことが「男性議員とのイス取りゲーム」とだけ捉えられて本質的な議論にならない壁。そして、もう一つが国会議員の圧倒的な数を占める「無関心」だからです。
選挙前になると「我が党は女性候補者擁立を重要視する」といった発言も報じられますが、通常モードの永田町での「ジェンダー平等」に対する優先順位は著しく低い。「総論では賛成」という議員も「でも他にやるべきことがあるよね」と各論になると反対にまわる。
未だに妻が地元と家を守り、男性議員が永田町という文化は根強くて、それができない男性あるいは女性議員が地元と国会の往復で疲弊したり、他の家族の協力を得ることが難しいシングルマザー、シングルファーザーの候補者がなかなか入り込めなかったりするのが日本の国会の現状なのです。
「鉄の女」しか国民の代表になれないのか
今回のアンケートでも「そもそもジェンダー平等の必要性を感じない」という回答がありました。「今なぜ女性国会議員を増やすべきなのか」。これについては、4月に開催した「超党派女性議員が討論!女性の国政進出を阻むふたつの壁をぶち抜け!」という7党の議員による公開イベントでも、その部分の議論がそもそも国会で欠如しているという指摘が出ました。
驚いたのは、そもそも国会に「家族的責任」を持つという考えがないという議員の意見です。つまり、国会議員たるもの、夫としての「家族的責任」を放棄してでもガンガン働くべきであり家に構っている場合ではない。そこは妻が内助の功で支えるべきことだと。
しかし、妻が議員である場合、夫に家と地元を任せて同様に働くことはほぼ不可能です。国民の代表である国会議員がこうした文化をふまえて政策を作っていると思うだけで、ずいぶん現実とかけ離れているなあと思ってしまいます。
こうなると女性議員は人一倍強くなるしかない。現職で出産をした橋本聖子さんは、出産後すぐに本会議場に担架で運ばれてきたことから、アイアンウーマン(鉄の女)と賞賛されたといいますが、そこまでしないと女性は国民の代表になれないのでしょうか。どれもこれもがとにかく時代錯誤で今の日本社会からかけ離れている。これは9割が男性という衆議院のあり方に大きく関わっていると思います。
「なぜ女性議員を増やすべきか」より踏み込んだ議論を
今では多くの女性が働くことが当然になりましたが、コロナ禍での女性の雇用政策とか、生理、更年期など女性特有の健康問題なども、厚労省に持ち込むのは女性議員という意見もありました。男性議員はもちろん関心が向かないわけです。
一方、圧倒的多数の男性が直接被害をうける薬品問題などはすぐに飛びつくという実態も語られました。人口減も加わり、すでに日本の経済は女性労働力なしでは立ちゆかない状況であるにも関わらず、それこそ人口比の半分を占める女性についての政策が国会で取り上げられる機会が少ないというのは日本全体にとってもマイナスではないでしょうか。
民間においては、これまで目を向けてこなかった新しいビジネス分野を開拓する必要性や、拡大するESG投資に沿った会社経営のために女性登用を積極的に進めている企業が増えています。昭和のように、それこそ力尽くで国の成長を推し進めるためには男性中心の政治が適していたのかもしれません。
しかし、それから時代は変わり、女性の社会進出も進んだ現代において、子育て環境やデジタルによる社会の効率化、働き方自体の変化などグローバルに価値観やライフスタイルが変容する中においては、これまでのような男性だけによる均質的な発想だけでは、企業も社会全体の需要に追いつかなくなっているのが実態なのです。
国民の生活に直接関わる国の政策もまた、より多様な価値観を国会に取り入れることで、幅広く国民のニーズに応えることが可能になるのではないでしょうか。もちろん、限られた定数においては席の奪い合いということになるかと思います。しかし、国にとって今、どのような改革が必要なのか。その本質的な議論をしない限り、議論はイス取りゲームで膠着し、いつまでも同じ場所で足踏みです。
「なぜ国会に女性議員を増やすべきなのか」。より踏み込んだ議論をすることで、9割を男性が占める衆議院に多様性を取り入れることが国民にとってプラスということになれば、例えば選挙に強い党であれば、小選挙区でぼろ負けしても比例で当選するような議員にかえて、新しい女性のみならずダイバーシティに富んだ候補を比例上位に据えるなど、現状でもやれることはあると思います。
ぜひ今回のアンケートをきっかけにして、広い視野にたった議論を深めてほしいと思います。
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「鉄の女」しか国民の代表になれないのか。9割男性の衆院議員への調査結果から考える