7月10日に投開票を迎える見込みの参議院議員選挙。若者の政治参加が進まず、未来へ希望が持ちにくいと言われるなか、各政党はどのようなビジョンを示すのか。
SNSなどでわかりやすくニュースや社会問題を伝える「NO YOUTH NO JAPAN」の代表で、ハフポスト日本版のU30社外編集員を務める能條桃子さんが、各政党にインタビューを実施。政治への疑問や社会に対する不安をぶつけた。
第4回は日本維新の会。幹事長の藤田文武(ふじた・ふみたけ)衆議院議員(41)が取材に応じた。
*7月10日投開票予定の参院選に向けて、ハフポスト日本版は政治家とU30が同じ目線でリアルに対話するイベントを開催します。アンケートへのご協力をお願いします。
■一言で言うと「チャレンジが溢れる社会」を目指す
能條桃子さん(以下、能條):
まずはグランドビジョンからお伺いします。日本維新の会では、次の世代にどんな日本を残したいと考えていますか。
藤田文武・幹事長(以下、藤田):
一言で言うと、チャレンジが溢れる社会です。チャレンジを推奨し、たまたま不遇な環境に置かれている人たちにちゃんとスタートラインに立ってもらう、失敗してしまった人を再チャレンジで押し上げられる、そういう社会を目指しています。
というのも、私は41歳なんですけれども、バブルも経験していなくて、社会が自然に右肩上がりではない時代をずっと過ごしてきたので、漠然とした不安みたいなものを感じてきました。皆さんもありますよね。それを一新させるような社会像を全ての政策において散りばめて、目指していきたいなというのがあります。
■「私立高校の授業料無償化」を実現した、大阪維新の会
能條:
まさにその「漠然とした不安」から、子どもが欲しくてもなかなか産みづらかったり、そもそも子どもを産むことに前向きになれなかったりする若い世代も多いと思います。こういう社会を変えるにはどうしたらいいと思いますか。
藤田:
一番はやっぱり、将来世代に投資する政策を増やすということだと思います。日本維新の会は大阪維新の会から始まったのですが、まさに柱に置いてきたのはそこです。
たとえば、(大阪府で2020年度から始まった)私立高校の授業料無償化(編注:所得制限あり)。これ実は増税もしていないし、国のように国債を発行することもできないから、何をやったかというと、無駄を省きましょうと行財政改革をやって実現しました。
子どもを産もうというときの足かせになるのは、データを見てもやっぱり経済的な問題が多いので、できる限りそういうものを取り除いてあげたいと。
もう一つの視点で言うと、大阪は子ども貧困の割合が全国平均より少しだけ高くて、親の経済的な理由で進路を諦めないといけない子どもがいる。これって、単純にかわいそうじゃないですか。だからそういうものをなくしていく。生まれた環境に関係なく、チャレンジできる、スタートラインに立てる、そういう政策を僕らはずっと大阪でやってきたんです。
■ 法人税・所得税・消費税の減税を
能條:
よく「日本にはこれだけ借金がある」という話を聞きますが、そのツケを背負うのは将来世代です。プライマリーバランス(基礎的財政収支)が赤字になっている現状にどう対処していきたいと考えていますか。
藤田:
解決策は、“入”(収入)を増やすか、“出”(支出)を減らすかしかありません。
“出”を減らすというところでは、無駄を省いていきましょうというのは絶対にやらなければならないこと。
“入”を増やすという部分では、やっぱり経済成長だと思うんですね。経済成長すれば税収が増えるというすごく単純な仕組みをやるべきだと思っています。
これからの時代は「こっちの方が成長産業だからどんどんそっちに投資しないと」というスピード感が求められる。こうした流動性が高い世界のスピードに付いていける経済環境を日本でも作らなければという問題意識があります。
能條:税金のあり方についてはどう考えますか?
藤田:税金って一番ダメなのは、不公平なことと重税感みたいなもの。日本の税金はほとんどフロー課税と呼ばれるもので、要するに日々稼いでいるお金にすごい高い税金がかけられている。法人税も所得税も、稼げば稼ぐほど取られる。消費税は、お金を使えば使うだけ取られる。僕は、この大きな3税を一旦減税して、新しい価値を生み出そうとする人に減税してあげるというのをやるべきだと思っています。
世界中の税って不思議なんですけども、じっとしているとお金は取られないんですよ。でも、チャレンジをして、しかも利益や付加価値を生み出した人はごっそり取られるという。
だから、経済の巡りを良くする税制、チャレンジを押し上げるセーフティネット、そのような改革を僕は制度改革で十分にできるんじゃないかと思っています。
■シルバー民主主義の弊害に「0歳から投票権を」
能條:
日本の国会は、議員の多様性がまだまだ少なく、それが政治の風通しにも影響していると思います。世代の多様性に関して言えば、私は24歳ですが、まだ選挙に立候補はできません。被選挙権年齢の引き下げについては、どのようにお考えですか。
藤田:
僕の個人的な意見では、被選挙権は成人年齢まで引き下げてもいいと思っています。
なおかつ、党の公約には「ドメイン投票制度」というのを入れています。
日本では、高齢者の方が投票率が高い上に、人口が多い。そうすると何が起きるかというと、政治家としても、票が沢山ある高齢者層に対して有利な政策をやりたくなってしまう。こういう弊害をシルバー民主主義と呼んでいます。
ドメイン投票制度は何かというと「0歳から未成年の人にも投票権を与えましょう」というものです。ただし、たとえば0歳児は意思表示ができないので、保護者の方に一票を代行する権利があります。
そうすると、(政治家の)景色が結構変わって、子育て世代や若い人の声をもっと聞いたらいいんじゃないかというインセンティブが自然に働きますよね。子育て世代や若い人の票の強さを制度として高めるのは、僕は今の時代に合っていると思います。
能條:
ふと一つ気になったのが、子どもの一票を保護者である両親が代行するとなったとき、父親と母親のどちらが投票するのでしょうか。
藤田:
それは喧嘩になりますよね。家庭の事なのでじゃんけんで決めてもらいましょう。
能條:
私の周りのカップルで、政党に関する意見が合わないというのは結構聞くんですよ。なので、どういう議論をされているのかなと思って。
藤田:
そこまで議論を細かく詰めてはいないですね。
今のお話は、実際に進めるとなると、とても重要なお話です。でも今ふと思ったのは、ファーストステップとして、家庭内で「この子の一票を誰に託すか」を会話するのは、逆にすごく良いことなのではないでしょうか。
■国民全員へのベーシックインカム、想定している金額は?
能條:
若い世代が抱えている問題の一つが、可処分所得(編注:給与やボーナスなどの個人所得から、税金や社会保険料などを除いた手取り収入のこと)の少なさです。この問題について、どう思いますか。
藤田:
この「日本大改革プラン」(冊子を見せながら)は、税と社会保障と労働市場で日本を元気にしようというという改革です。政策目的の一つが、可処分所得をいかに上げるかということです。
データからは、所得水準も伸びていないけれども、実は可処分所得の水準はより下がっているというのが明らかです。その理由は定かで、経済のパイが伸びていないのと同時に、税金と社会保険料が上がりすぎているからです。
だから、僕はまずはそこ(税金と社会保険料)を下げるべきだと思っています。
能條:
少子高齢化で社会保険料は上がり続ける一方だと思うのですが、そもそも減らせるものなんでしょうか。
藤田:
普通でいうと減らせないんですよ。だから僕らが言っているのは、ベーシックインカム。年金は二階建てですが、一階部分の基礎年金がどんどん厳しくなっている。
そこを清算して、全員に、最低所得保障を担保します。高齢者だけではなく現役世代にも。その代わりに、みんなチャレンジできるのだから、元気に稼いだ人、成功した人は、ちゃんと税を納めてくださいという仕組みです。
能條:
ベーシックインカムは、どのくらいの金額を想定していますか。
藤田:
今僕らが試算しているものでは、6万円〜10万円くらいの幅です。基本は6万円からで、高齢者には少しプラスオンにしてあげようという感じで、6〜7万円が相場。
なぜこの金額かというと、基礎年金(編注:国民全員加入の「国民年金」)については、満額払っている人は、6万5000円もらえるんですよ。それより下回ると文句が出ますよね。
あと、生活保護は、住宅と医療費などの生活扶助部分が、大体6〜7万円くらい。だから、その金額とベーシックインカムの数字を合わせていくと、(ベーシックインカムで)生活扶助を吸収できるんですよ。
僕は、社会保障論では、一つの制度でより多くの人を救うのが大事だと思っています。
今は「こういう風に困っている人にはこの給付金」というように「100人の困りごとに100通り」みたいな制度設計になっていますが、ベーシックインカムがあれば、100個の問題のうち80個ぐらいは全部解決してしまいます。もちろん、残り20%ぐらいは、ベーシックインカムだけでは救えないものもありますが。たとえば、障害福祉に対しては、プラスアルファは絶対しなきゃいけない。
より多くの人をまず一つのシンプルな仕組みで救って、そこでチャレンジしてもらう。でも、個別具体で苦しんでいらっしゃる方には手当てするのは当たり前です。
能條:
格差是正の点では、政党としてのスタンスはありますか?
藤田:
競争とか切磋琢磨というのは容認すべきだと思っています。たくさん稼ぐ人たちにちゃんと還元してもらえる税制などの仕組みがあればいいだけの話です。だから、頑張れる人にはどんどん頑張ってもらっていい。でも、弱者や失敗した人に寛容な社会。会社にたとえると「固定給はどんな人にも担保されていますよ。でも、頑張った人はインセンティブで結構稼げます」みたいな。これは両立すると思うんです。
(執筆:吉田遥 写真:坪池順)
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「0歳から投票権を」を公約にする理由は?藤田文武幹事長インタビュー【U30×日本維新の会】