4月20日に発売した月刊誌『mina(ミーナ)』(夕星社)の6月号。俳優の本田翼さんをメインにした表紙の上部には、いつもは黄色で統一されているはずのタイトルロゴが、上半分だけ青い「ウクライナカラー」になって掲げられていた。
ネット上では「タイトルがウクライナカラーで泣いた」「(雑誌の中身は)ウクライナ侵攻に触れていないけど、ウクライナに心を寄せるのはいいこと」などと反響が広がっている。
ハフポスト日本版は、表紙にウクライナカラーを採用した理由について、『mina』の矢野圭祐編集長に尋ねた。
「平和な暮らしの一方で戦争、忘れないで」
2001年3月に創刊した『mina』は「週末女子のためのファッション&ライフスタイル雑誌」を謳う月刊誌。
2022年6月号は「アウトドア特集」を掲げ、女性だけのグループでもキャンプを楽しめるヒントや便利グッズを紹介している。表紙を飾った本田さんへの「新生活」をテーマにしたインタビューを含め、雑誌の中身には「ウクライナ」や「戦争」といった言葉は一度も出てこない。
ただ、表紙にはウクライナカラーが取り入れられた。
「私たちは『mina』を読んで、どんな休日を過ごしたいか、何を食べたいか、どんな洋服を着ようかを考えられる。そんな平和な暮らしの一方で、悲惨な戦争が起きていることを、決して忘れてはいけない。その一心で、タイトルロゴをウクライナカラーにしました」
通常のタイトルロゴは、「ワクワクと楽しい気分になれる」という理由で、黄色系で統一されることが多かった。青色を交えてウクライナカラーにしたのは、今回が初めてだという。
「新型コロナウイルスが感染拡大した当初は、何らかのメッセージを掲げる雑誌などが増えました。ですが、『mina』は雑誌そのものを楽しんでもらうために、コロナ禍でも『情勢的な話題や政治的なメッセージは一切出さない』という矜持を貫いてきました」
「でも、いま、ウクライナでは多くの人が亡くなっている。これまでとは違い、何かメッセージを出さないと、という思いがありました」
“No War” ではなく “imagine”
タイトルロゴの左上には、“imagine” というコピーも掲げた。
「湾岸戦争中、反戦ムードを誘うとしてイギリスの放送局で『自粛曲』になったことで知られるジョン・レノンの楽曲 “imagine” を指しています。“imagine” の一言で、平和の尊さを考えてもらいたい。そんな願いを込めました」
いつもなら、この位置には、編集長の一存で毎回異なるコピーが並ぶ。5月号は「ぶらり旅。今から計画を。」、4月号は「“好き”に囲まれて暮らしたい。」だった。
「6月号では、日に日に悪化するウクライナ情勢を考慮し、“No War” など、より直接的でわかりやすいコピーにすることも考えました。でも、『mina』を読むときは『mina』を楽しんでほしいという思いもありました。読んで素敵な時間を過ごせる雑誌というコンセプトはそのままに、戦地のウクライナに思いを寄せられるようなメッセージを送りたい。“imagine” は、そう考えて選んだ言葉でした」
「表紙のウクライナカラーや “imagine” のコピーを目にした読者に『こうしてほしい』と何かを押し付けるつもりはありません。何を考えるか、個人としてどう動くか、動かないかは、受け取った人それぞれに委ねたいと思っています」
「拳銃に花を」
実は、ウクライナにまつわるメッセージは表紙だけでなく、別のもう1カ所にも込められていた。雑誌の冒頭、目次ページに使われた写真だ。
白っぽいリネンシャツを着た本田さんが窓の外を眺めている傍に、青色と黄色の花々が映っている。
「ベトナム戦争下で米国で反戦運動をしていた『フラワー・チルドレン』をイメージしました。『武器ではなく、花を』というスローガンに共感し、ウクライナカラーの花を用意しました」
「ネット上での反響の大きさから、少なからぬ人々の心に、私たちのこうしたメッセージが届いたのだろうと感じました」
翌月号以降のタイトルロゴのカラーなどは、現在も検討中だという。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
『mina』のロゴ、なぜウクライナカラーに?「平和な暮らしの一方で戦争、忘れないで」と編集長