ノルディックスキー複合団体・ラージヒルの決勝が2月17日に行われ、渡部暁斗選手ら4人で出場した日本が銅メダルを獲得した。
試合後、渡部選手はTwitterを更新。「チームで取るメダルは最高だ」という言葉とともに、4人の選手が笑顔で喜んでいる1枚の写真を公開した。ノルディック複合団体チームは、共に戦うことの素晴らしさを写真で教えてくれた。
今大会の「団体戦」では、歓喜の瞬間もあれば、いくつかの競技で波乱の展開と言えるものもあった。振り返りながら、その魅力について考えたい。
「団体戦」が私たちに伝えてくれること
渡部選手が投稿した写真では、国旗を前に渡部選手、渡部善斗選手、永井秀昭選手、山本涼太選手の4人が笑顔で喜びを噛み締めていた。
チームで取るメダルは最高だ。
ありがとう🇯🇵🥉🙌#teamjapan#olympics#beijing2022#NordicCombinedpic.twitter.com/nN6q43BGqd— Akito Watabe 渡部暁斗 (@WTBAKT) February 17, 2022
「ダメだったら真剣に謝ろうと」
いくつかの競技の団体戦を振り返っていく。
まずは、日本が銅メダルを獲得したフィギュアスケート団体。日本はロシアオリンピック委員会やアメリカやイタリアなど世界の強豪としのぎを削った。
樋口新葉選手と鍵山優真選手は、共に団体戦がオリンピック初出場の試合だった。
その2人は、女子シングル・ショートプログラムと男子シングルフリースケーティングでそれぞれ自己ベストを更新する演技を見せ、日本のメダル獲得に大きく貢献した。
また、男子シングル・ショートプログラムに臨んだ宇野昌磨選手も自己ベストを更新する演技を見せた。
フィギュアの団体戦は、1人(もしくは1組)の演技の出来栄えにプレッシャーがかかる戦い。そのことを踏まえた宇野選手の試合後のインタビューは反響も集めた。
「1番最初ということで、日本スケート男子はすごく(メダル候補として)有力だと認知していたので、迷惑をかけたくないという思いもあったんですけど、ただ、後ろ向きな気持ちで試合に臨むことだけは絶対に避けたいと思っていた。しっかりそのあたりは(気持ちを)切り分けることができ、ダメだったら真剣に謝ろうと思っていました。でも無事に出来てよかったなと思います」
(※フィギュアスケート団体は、法的な問題の影響を受けて、「メダル授与式」は現時点で行われていない)
物議を醸した「スーツの規定違反」
一方で波乱の展開となったのは、日本が4位と健闘したスキージャンプ・混合団体。北京オリンピックで初めて実施された新種目だったが「スーツの規定違反」により、日本を含む複数のチームのジャンプが失格となった。
日本は高梨沙羅選手が1回目のジャンプの後に失格を言い渡されたが、その後、チーム全員の奮闘で順位を押し上げた。
日本の鷲沢徹アシスタントコーチは、規定違反の理由について「太もも(部分)が2センチずつ大きかった。本人のせいではない。ぎりぎりで攻めていかないとメダルを取れない。どのチームもぎりぎりまで攻めてやっている」などと説明していた。
物議を醸した「スーツの規定違反」。なぜ選手が飛ぶ前に検査をせず飛んだ後に検査をするのかという点に、多くの視聴者が疑問を感じていた。
日本はチームとして抗議はしなかったものの、ドイツなど海外チームの関係者は怒りを露わにした。
高梨選手は試合後、自身のインスタグラムを更新。
「私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です。謝ってもメダルは返ってくることはなく責任が取れるとも思っておりませんが、今後の私の競技に関しては考える必要があります。それ程大変なことをしてしまった事深く反省しております」などと投稿していた。
高梨選手が責任を感じてしまっていることに対し、SNSでは、彼女を気遣い応援するメッセージが多く寄せられた。
一人ひとりの選手が団体戦に強い気持ちで臨んでいるからこそ、感じてしまう「責任」。強い気持ちは間違いなく力になるが、たとえ結果が伴わなかったとしても、観る側が選手を責めるようなことは決してあってはならない。
小林陵侑選手の試合後の「(高梨選手を)ハグしてあげました」というコメントには多くの反響が寄せられていた。
ジャンプ競技の新種目は、残念ながら後味の悪いものになった。順位やメダル獲得よりも願うのは、まず各々の選手が納得のいくパフォーマンスが出来ることだ。そのために、運営側が出来ることしっかりと見直してほしい。
転倒した姉を、妹は寄り添うように抱き寄せた
2月15日に開かれたスピードスケート・女子団体パシュート決勝。日本はカナダと対戦して敗れるも、堂々の銀メダルを獲得した。高木美帆選手と菜那選手は姉妹で出場した。
3人の選手が隊列を組み、前に進んでいくパシュート。残り1周の残り200メートルを切ったところで、最後尾を滑っていた高木菜那選手が転倒し2位でゴールした。
前回の平昌大会に続く金メダル獲得を目指していただけに、選手たちは試合後、悔しさを口にし、高木菜那選手は泣いていた。
象徴的なシーンがある。レースの直後、妹の美帆選手が転倒した姉の菜那選手の元にかけよると、寄り添うようにそっと抱き寄せた。
菜那選手に寄り添ったのは、レースに出場した選手だけではない。出場メンバーから外れサポートに回っていた押切美沙紀選手も菜那選手を労っていた。
オリンピックの決勝という大舞台での戦いで、攻めたレースをした結果の転倒。転倒した選手が注目されてしまいがちだが、誰も責めることはできない。
個人の戦いとは違い仲間との絆が強く感じられる団体戦。だからこそ、渡部選手は「チームで取るメダルは最高」と言ったのだろう。
メダルという結果に至らなくとも、多くの人の心を惹きつける魅力がやはりチーム戦にはある。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
なぜ「団体戦」に惹かれるのか。渡部暁斗選手の1枚の写真が、その素晴らしさを改めて伝えてくれる【北京オリンピック】