北京冬季オリンピック・スノーボード女子ハーフパイプ決勝で2月10日、アメリカ代表の21歳、クロエ・キム選手が優勝した。平昌に続き、2つ目の金メダルを手にした彼女は、同競技の2連覇に成功した初の女性選手となった。
4年前の平昌オリンピックで一躍有名人となったキム選手。1月には米Time誌の表紙を飾り、自身のメンタルヘルスの問題についても打ち明けていた。
優勝後の記者会見では、オリンピックやスノーボードの話題に混じり、私生活に関する質問も挙がったが、彼女は自分が経験していることを「喜んで話す」と語った。
「最初のオリンピックから私が学んだのは、できるだけオープンに話すこと」「いつか、小さな女の子が私の話を聞いて影響を受けて、諦めず挑戦し、嫌な日があっても乗り越えてより成長できることを学んでほしい」と話した。
また、「アスリートがメンタルヘルスについてオープンに会話することの重要性」について問われると、メンタルヘルスを理由に東京オリンピックを途中棄権した体操米代表のシモーン・バイルズ選手や全仏オープンを棄権した大坂なおみ選手の名前を挙げ、「彼女たちの行動は、私たちは皆人間だっていうことを教えてくれた」と話した。
「私たちは色々な事を経験するし、みんなメンタルヘルスと闘っていて、それは簡単に克服できることじゃない」「問題は、自分を1番に考えず、助けを求めないこと」と彼女は語った。
「悩んだり、自分を労ったり1番に考えていいんだよ、と彼女たちは教えてくれた。私たちがやっていることは簡単なことではなく、すごいプレッシャーがのしかかっていて、多くの期待を背負ってる。それは全然普通のことじゃない。だから、そういったプレッシャーに悩むのは普通なんだ、ってね」
「たとえば、今朝、私は全然いい気分じゃなかったの。でも自分がこう感じていてもOK、自分のベストをやるだけなんだっていうことを思い出して、自分をリセットすることで、やるべきことに集中できた」と話していた。
2018年の平昌オリンピックで17歳で金メダルを手にし、一気にスターダムへ駆け上がったキム選手。両親が韓国出身で、韓国系アメリカ人の彼女は、これまで多くの批判や人種差別を経験してきた。
Time誌でのインタビューでは、平昌オリンピック後の鬱や、白人選手が多いスノーボードにおいての人種差別、新型コロナウイルスによるパンデミック中のヘイトクライムに対する恐怖について語っていた。
パンデミック後、SNSでの人種差別コメントにより生じる怒りや恐れをプロセスするためカウンセリングに通い始めたことも告白しており、セラピーによって、心の中に溜めていた感情を少しづつ解放できているという。
記事では、オリンピック後あまりにも自分に重くのしかかっていた平昌での金メダルを「ゴミ箱に捨てた」(後に取り出したようだが)と述べていた彼女だが、今大会の優勝後に行われた会見では、「前回よりずっと良い気分でいられている。金メダルをゴミ箱には捨てない」と話していた。
北京オリンピック開幕前に、スポーツ庁の室伏広治長官は「アスリートも一人の人間。一部の方による心ない書き込みや投稿がアスリートの心を深く傷つけることにつながる」と指摘し、SNSで選手を誹謗中傷しないよう呼びかけた。
しかし実際には、女子スキージャンプの高梨沙羅選手に対しての「メイク批判」や、海外では女子フィギュアスケートで転倒し結果を残せなかった、アメリカ出身で中国代表の朱易(ジュ・イー)選手に対する非難などが問題となっている。
スポーツ庁のウェブサイトによると、ハイパフォーマンスセンターでは、北京大会期間中も現地での対面相談だけでなく、電話やインターネットなど様々な形で心理サポートを提供しており、選手やコーチへ相談を呼びかけている。
また、国際オリンピック委員会(IOC)や国際パラリンピック委員会(IPC)は、北京冬季オリンピックに参加する全ての選手、家族、指導者を対象に24時間のメンタルヘルス支援を提供するヘルプラインが設置されており、日本語対応も可能だという。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
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