警視庁の警察官に、個人情報を同意なくトラブルの相手に提供されるなど違法な対応を受けたとして、南アジア出身の40代女性が東京都に損害賠償を求めた訴訟の第2回口頭弁論が1月25日、東京地裁(古田孝夫・裁判長)であった。被告の都は、個人情報の提供を認めた上で、「女性の了承を得ていた」などと反論した。
3歳児ひとりに聴取
訴状などによると、女性は南アジア出身で、10年前に来日した。2021年6月、東京都内の公園で、女性と当時3歳の長女が見知らぬ男性から「(長女に)子どもが蹴られた」などと抗議を受けトラブルになった。女性は、男性から「ガイジン」「在留カード出せ」などと詰め寄られたと訴えている。仲裁に入った30代男性の証言によると、駆けつけた警察官が、長女に対して「お前がどうせ蹴ったんだろ」「本当に日本語しゃべれねえのか」などと追及していたという。
母子は公園で聞き取りを受けた後、警察署への同行を求められ、署で再び聴取をされた。原告側は、長女ひとりに対して最大5人の警察官が個室で聴取を行ったと主張。さらに、同意していないにもかかわらず、氏名や住所、電話番号といった個人情報をトラブル相手の男性に対して警察官が提供したと訴えている。
女性は、約3時間半にわたる署内での聴取で、帰宅の要望を聞き入れられなかった上、トイレの利用や長女のオムツ替えを認められなかったとも訴えている。
「了承得た」都の反論は
これに対し都側は、この日の弁論で、警察官が「お前がどうせ蹴ったんだろ」「日本語しゃべれねえのか」と発言した事実はないと否認した。長女ひとりに対し、最大5人の警察官が10分以上聞き取りをしたという原告の訴えに対し、都は長女ひとりに事情聴取したことは認める一方、「女性の了承を得ていた」「聴取室に入室した署員は最大2人。複数の警察官で長女を取り囲んだ事実はない」「聴取は2、3分で終わった」などと反論している。
帰宅やトイレ利用の希望、娘のオムツ替えを認められなかったという訴えに対し、都は女性が「帰宅を繰り返し申し出た事実はない」「トイレ、オムツ交換の要望の事実はない」といずれも否認した。民事裁判を目的に、トラブル相手の男性が母子の連絡先を教えるよう求めたことについて、都側は連絡先を提供したことは認めるが、女性の承諾を得ており「強要した事実はない」と主張。違法行為とは認められないとして、請求棄却を求めた。
(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
母子への不当聴取訴訟、東京都が反論。個人情報の提供は「強要の事実ない」