中国のEC(ネット通販)最大手・アリババグループは、温室効果ガス排出量の実質ゼロを指す「カーボンニュートラル」を2030年までに実現させると発表した。
さらに独自の概念「スコープ3+」として、2035年までにECサイトの出店者や消費者など、従来の基準には含まれない関係者から生じる炭素排出量を1.5ギガトン(15億トン)減らすともした。中国政府は2060年までにCO2(二酸化炭素)排出量の実質ゼロを達成すると公言していて、大手IT企業などが相次いで呼応する姿勢を示している。
サプライチェーンの温室効果ガス排出量は、3つの段階から構成される。
▽事業者自らによる直接の排出量が「スコープ1」▽供給される電気や熱、蒸気の使用に伴う排出量が「スコープ2」、そして▽販売した製品の使用・廃棄や従業員の通勤などによる間接的な排出が「スコープ3」だ。(参考:環境省)
これに対しアリババは、グループ全体で2030年までに▽スコープ1と2でカーボンニュートラルを達成し、▽スコープ3の炭素強度を50%低減させることを目指す。アリババによると、長・短距離の物流に活用される自社車両や、倉庫や小売店の空調設備などが主な排出元だという。
また、傘下のアリババクラウドでは2030年までにスコープ1、2、3の全てでカーボンニュートラル実現を目指す。
さらに、独自の概念として「スコープ3+」を設ける。これは、スコープ1、2、3に含まれないECサイトの出店者や消費者など、より広い意味での関係者から生じる炭素排出量を指すものだ。この「3+」から生じる炭素排出量について、2035年までに1.5ギガトンの脱炭素化を目標とする。ちなみに気象庁の公式サイトによると、1ギガトン炭素(=10億トン炭素)は、二酸化炭素を構成する炭素が10億トンあることを表す。
このスコープ3+について、アリババグループ・サステナビリティ運営委員会の陳龍・議長は発表で、「低炭素の製品、サービス、行動を推奨したり、エネルギー効率を向上させるテクノロジーや革新的なビジネスツールを共有したりすることで、カーボンフットプリントを削減する可能性に基づいている」と説明している。
カーボンフットプリントとは、ある商品の原材料の調達から生産、そして使用され捨てられるまでの過程で排出される二酸化炭素量を示すものだ。
中国の大手ITでは、他にも脱炭素の動きが出ている。
中国メディアによると、SNSやゲーム事業を手がける「テンセント」は、2030年までにグループにおける全てのサプライチェーン上でのカーボンニュートラル達成を目標とする。データセンターやオフィスビルで使用される電力に由来するものに加え、間接的な排出量でも実質ゼロを目指すという。
検索エンジン最大手で、AIにも注力する「バイドゥ(百度)」も同じく、2030年までにデータセンターやサプライチェーンを含めたカーボンニュートラルを目指すと発表している。
中国の大手IT企業は、アメリカの「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」と比較して「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」などと呼ばれた。
ファーウェイの「H」や、TikTokで知られるバイトダンスの「T(ニュースアプリ・トウティアオが由来)」などを含めるパターンもあるが、知名度の高い大手3社のカーボンニュートラルへ向けた方針が出揃ったことになる。
中国は、国家単位で脱炭素の取り組みを進める。習近平国家主席は2020年の国連総会で、二酸化炭素排出量を2030年までにピークアウトさせ、60年には実質ゼロにする方針を打ち出している。IT企業への強力な締め付けが続くなか、いずれも国の目指す方向に積極的に呼応する狙いがあるとみられる。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
中国IT大手、そろって「カーボンニュートラル」宣言。アリババの独自概念「スコープ3+」とは?