自社や取引先の企業で起きている人権リスクを特定し、予防や軽減策を実施する「人権デューデリジェンス(人権DD)」に日本企業がどの程度取り組んでいるか、政府が初の調査を行った。
調査では、人権DDについて「実施方法が分からない」「予算や人員が足りない」といった課題を抱える企業が一定数いることも判明。経済産業省の担当者は「今後具体的な方策を決めていく」と話している。
■政府として初の調査
この調査は経済産業省と外務省が2021年9月から10月にかけて、東証一部と二部の上場企業などを対象に実施した。回答したのは対象企業のうち27%ほどにあたる760社だった。
日本は2020年10月に「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)」を策定していて、企業への人権DD導入を「期待」するとしていた。同時に、企業の取り組み状況について現状を把握するとも表明していて、今回の調査はその一環となる。政府として調べるのは初めて。
■人権DD「実施」は52%
調査では▽人権方針を策定しているか▽人権DDの実施状況などについて聞いた。
人権方針については、760社のうち69%にあたる523社が「策定している」と答えた。残りの31%のうち「1年以内に策定を予定」とした企業は58社(8%)で、「策定/明文化していない」は67社(9%)だった。
人権DDについては、「知っている」と答えた企業がちょうど7割の534社で、「知らない・内容は知らない」とした企業は226社(30%)だった。
その上で、実際に人権DDを実施している企業は52%にあたる392社。どの範囲まで人権リスクを調べているかという問い(複数回答)については「自社」が351社(実施企業中の90%)と最多で、直接仕入れ先まで調べているのは日本国内で244社(62%)、海外では192社(49%)だった。
対象範囲を間接仕入れ先まで広げている企業は、国内・海外ともに99社と全体の25%だった。
■実施方法や予算・人員に課題
調査では、人権DDを実際に実施することの課題と難しさが浮き彫りになった。
人権DDを「実施していない」理由を聞いたところ、「実施方法が分からない」が122社(32%)と最多。「十分な人員・予算を確保できない」が105社(28%)、「対象範囲の選定が難しい」が102社(27%)と続いた。
一方で「必要性を認識していない」という企業も45社(12%)あった。
実際に今回の調査では、人権方針の策定や人権DDの実施、それに組織体制の整備といった取り組みについて、売り上げ規模が大きい企業ほど積極的に取り組む傾向にあったことも分かっている。
例えば人権DDでは、売り上げ規模500億円未満の場合は実施率は3割を下回るが、5000億円〜1兆円では7割を超え、1兆円以上になると9割近くまで上昇していた。
人権DDの実施方法や予算、それに人員確保の問題について、政府はどのように対応するのか。経済産業省大臣官房ビジネス・人権政策調整室の担当者は「調査結果を分析する段階で、今後具体的な方策を決めていく。取り組みが比較的進んでいない企業からは特に『実施方法が分からない』などの声が多く上がっているため、周知・啓発に取り組みたい」と話している。
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人権デューデリジェンス「実施方法分からない」「予算足りない」企業の約3割。政府初の調査で判明