「規則正しい生活を求めない」「冗談を言わない」ADHD女性が幸せな関係を築くためパートナーにお願いしたこと

私は発達障害当事者だ。ADHD(注意欠如多動性障害)とASD傾向(自閉スペクトラム症)、算数LD(学習障害)があるため、会社員として勤務していた頃は発達障害の特性のせいで仕事に支障をきたすことも多く、働きづらさを感じていた。

しかし、フリーランスのライターとなってからはその働きづらさはほぼなくなり、自分の得意な分野で活動できるようになった。

そんな私に半年ほど前、パートナーができた。

パートナーには最初から発達障害について伝えていたが、付き合って4、5カ月ほど経った頃には私の衝動性の特性から失言してしまったり、ワーキングメモリ(短期記憶)の低さから彼の話が長いと最初の情報が抜け落ちる形になって「話を聞いていない」と言われてしまったり、彼の冗談をすぐに受け止められなかったりと、小さなトラブルが頻発した。ASDの傾向がある人は、言われた言葉をそのまま受け取ってしまったり、冗談が通じなかったりとコミュニケーションに難を感じる場合があるのだ。

そのたびに話し合ってなんとか乗り越えてきたが、私以外の発達障害当事者でパートナーのいる人は、どのような工夫をしてパートナーシップを築いているのかとても気になった。

そこで今回は、私と同様にADHDとASD傾向を持ち、現在、結婚5年目で妊娠5カ月のあかりさん(仮名・31歳)に、どのような点に気をつけ合ってパートナーとの関係性を保っているのか、お話を聞いた。

「そんな風には見えないし、性格じゃない?」

━━発達障害であることは交際の時点からすでに伝えていましたか?

はい。夫は高校時代の同級生で、社会人になってからも飲みに行くなど友達としての関係が続いていたので、ある程度自分のことは話していました。

でも、お酒を飲みながら「実はこういう障害があって、気分の波があることもある」と話した際、「全然そんな風には見えないし、性格じゃない?」と言われました。

━━性格の問題にされてしまうと、「でもこっちは困っていることが多いんだよ!」と反論したくなりませんでしたか?

確かに性格という範疇ではないし、これはおそらく時間をかけて理解してもらったほうがいいのかなと。そのことを伝えたのが10年ほど前で、当時はまだ発達障害がどのようなものか今ほど知られていなかったので、理解できなくて当然なのかなとも思いました。

その後、お付き合いするようになってからは、発達障害について少しずつ理解してもらうために発達障害に関する本を読んでもらったり、WAIS−Ⅲ(発達障害の傾向を見るための知能検査)の結果を見せて「ここの数値が凹んでいるから地図が読めなかったり片付けが苦手だったりするんだよ」と説明したりしました。

━━きちんと発達障害に関する本を読んでくれたんですね。

そうですね。やはり、深く付き合うようになってからは、性格の問題ではなく、私が定形発達の人とは違うことを理解したようで、夫も「勉強しないと」と、渡した本以外にも自ら発達障害についての本を買って勉強してくれました。

夫のフォローで、失くし物や忘れ物が激減

━━発達障害について理解してもらった今、どういう工夫をして関係性を保っていますか?

私は発達障害の二次障害(※)で気分の浮き沈みがあるのですが、本当にどん底まで沈んでしまったときは何もできないので「あっ、ヤバいな」と感じた時点で美味しいものを食べたり、夫と一緒にいる時間が好きなので二人で公園に散歩に出かけたりしています。

そして、一番は夫とのルール作りです。夫には「規則正しい生活を求めない」ことをお願いしています。

発達障害がある人は定型発達の人と比べて脳が異常に疲れてしまうので、朝遅くまで寝ていたりお昼寝をしたりしちゃうんですね。最初の頃は夫に「いつまで寝てるの? 時間がもったいない…」と言われていたのですが、発達障害の脳疲労について理解してくれてからは好きなだけ寝かせてくれます。

※二次障害…発達障害の特性が原因で起こる症状や疾患のこと。

 ━━私も付き合いたての頃、睡眠時間の多さについて彼に驚かれました。あかりさんは片付けが苦手とのことですが、家事の分担などはどうしていますか?

妊娠前は半々くらいでやっていましたが、安定期に入る前の妊娠初期は8:2で夫がやってくれて、身体を動かしやすくなった現在は7:3くらい。やっぱりそれでも「お腹が重いから大変でしょう」と、夫が結構やってくれています。彼はもともと家事が好きなので、それがストレスにはなっていないようです。

結婚当初、私は本当にモノが片付けられず、すぐに床にモノを置いてしまうので、夫が大きな箱を買ってきて「ここに入れてくれれば失くさないで済むから」と、とりあえずモノを入れる、というアイデアを出してくれたおかげで、失くし物は減りました。

ほかにも、バスや電車に乗ると忘れ物をしてしまいがちなので、降りる前に夫が座席を確認してくれるようになりました。そうしたら私も降りる前に確認する習慣がついて、忘れ物センターに問い合わせをすることがなくなりました。習慣付いたので、今は一人でバスや電車に乗るときも忘れ物の確認ができています。

トラブル防止のため「冗談」は言わない

━━ASD傾向があると冗談を受け止められず傷ついたり戸惑ったりしてしまいがちですが、あかりさん夫婦の場合どうしていますか?

夫曰く「まだ練習中」とのことですが(笑)、冗談を言わないようにしてもらっています。彼の冗談は私にとってはとても分かりづらくて、後になって「ごめん、冗談だったのに」と言われて「そんな紛らわしい言い方しないでよ!」とケンカになったことがあったので…。

モノを入れる箱を用意することや忘れ物対策の確認などは夫が提案した対策ですが、冗談を言わないことについては私からお願いしました。

━━私も冗談が通じなくて傷つくことがあるので、「冗談を言わない」と決めておくのは良いですね。今一番パートナーに対して感謝していることは何ですか?

日々の細かなサポートもですが、寛容でいてくれることです。

私が失敗をしたり迷惑をかけたりしても「いいよ、そんなの別にたいしたことじゃないよ」と受け止めてくれることです。安心させてくれるのは本当にありがたいです。

あと、絶対的な味方でいてくれることですね。

例えば私に嫌なことがあったときも一緒に「それはひどいね」と共感してくれるとか。本当に小さなことの積み重ねで、この人は私のことを特別に想ってくれているんだな、裏切らないのだなと愛情を感じます。だから私も何かフォローしてもらったら「ありがとう」と必ず言うようにしているし、毎日「好きだよ」と愛情表現をしています。

━━感謝と愛情を言葉にするのはとても大事ですよね。私も人よりできないことが多いと感じているので、彼に何かをしてもらったら「ありがとう」と言っているのですが、「当たり前のことをしただけだよ」と返されます。

私の夫もそういうタイプで、「ありがとう」と言っても「いや、別に」という感じなので最初は「ありがとう」と言われるのが嫌なのかなと思ったのですが、言わないでおくのは絶対によくないと思って。

「どういたしまして」と返ってこなくてもいいから、ありがたいなと思ったら必ず「ありがとう」と言うようにしています。でもこれは感謝することを忘れてはいけないという、半分は自分のためかもしれません。

寛容な心を持つ夫と素敵なパートナーシップを築いているあかりさん。ただひたすらその懐の広さに感心していたが、あかりさんも彼のフォローにきちんと感謝の言葉でお返しをしている。

しかし、発達障害は特性が人それぞれなので、配慮の仕方やルール作りは違う。私もいまいちど自分の特性と向き合い、それをパートナーに伝え、あかりさんのように日々パートナーに感謝の言葉を口にしていきたい。

(取材・文:姫野桂 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版) 

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