不妊検査に非協力的なカエルが、パートナーのウサギと話し合ったのちに病院を受診するエピソードを描いた漫画「男性不妊戯画」が公開されている。
泌尿器科医のサラリ医マンさん(@saraly_man)が、デザイナーのダーヤマさん(@TopeconHeroes)の協力を得て制作した。 デリケートなテーマを扱いながらも、登場キャラクターたちのコミカルな掛け合いに思わずクスッとするような仕掛けが散りばめられている。
男性不妊の外来に携わる医師であり、生殖補助医療で子どもを授かった当事者でもあるサラリ医マンさん。自身の経験から、「男性の受診意欲を高めるようなことができないか」と考え、漫画の制作を思い立ったと明かす。
公開された「男性不妊戯画」第一章のタイトルは「カエル、オタマジャクシ(精子)を調べる〜不妊外来のすすめ〜」。結婚して2年たつ、ウサギとカエルのカップルの話だ。
食事中、ウサギは「1年経っても子供ができない場合は不妊って事みたいなのよ」とカエルに話しかける。 婦人科の医師から、ウサギの検査結果に大きな問題はなかったこと、不妊の原因の半分は男性にあるため、パートナーも検査したほうが良いと勧められたことを伝えた。
「どうする?」と問われたカエルは、「どうするって、俺は平気じゃない?」と自信ありげに答える。さらに、「婦人科なんて居心地悪くて行ってらんないね」とそっぽを向いた。
パートナーの非協力的な態度に、ウサギは「貴様がオタマジャクシからやり直せ!」とキレた後、泌尿器科でも検査を受けられることをカエルに伝える。
カエルは後日、渋々泌尿器科に行った。精液検査の結果、医師から「少し所見が良くないですね」と知らされた。思いがけない告知に動揺するカエル。
「色々と順調に行くもんだと思ったんだがな…」
自ら検査を受けたことで、婦人科を予約し、検査を受け、待ち時間を費やし、費用を負担するというウサギの大変さに思いを馳せるようになった。
カエルはウサギの好物にんじんのタルトを買って帰宅。検査結果を伝えると、ウサギは「現状を知るって事が大事ね」と返した。
「僕の人生、まだまだ発見と驚きの連続よ」
「『私たちの』人生ね」
戯画の最後で、サラリ医マンさんは漫画に込めた思いをつづった。
「中の人(自分)は生殖補助医療の助けを得て子宝に恵まれましたが、その過程の中で様々な葛藤や夫婦関係のトラブルを経験しました。また自身が臨床に携わる中で、不妊に悩む男性患者さん・非協力的な男性パートナーに悩む女性の方・意欲はあるが踏ん切りがつかない男性、様々な方を見てきました」
「デリケートな話題ですので、一人で悩んでいる方も多いと思います。ご自身の悩みを相談しやすい先生、そして何よりパートナーの方と一緒に取り組んでいただければ何よりです」
サラリ医マンさんは、常勤先の病院で一般泌尿器科の診療のほか、男性不妊外来や男性不妊の手術を行っている。
男性が不妊の検査を受ける際、どんなことが障壁になっているのか。
「子どもを希望するカップルの多くは働き世代で、平日は仕事をしているためそもそも来院のハードルが高いです。さらに、男性側の『お産は女性の仕事』という意識がいまだに根強く、『自分は大丈夫』という根拠のない自信のせいで女性が協力を得られずに悩む、という現実もあります」(サラリ医マンさん)
不妊は、男性側に理由がある割合と、女性側に理由がある場合はほぼ半々とされている。男性不妊の理由には、精子をつくる能力に問題がある場合や、性行為がうまくできない性機能障害などがある。
サラリ医マンさんは、漫画を通じて「不妊の原因の半分は男性にあること、男性不妊の検査は泌尿器科で受けられる場合もあることを知ってほしい」と話す。
戯画には、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に出てくるシーンのオマージュが描かれるなど笑いを誘う仕掛けもある。
「世間に溢れる妊活情報の多くは女性側に立ったもので、男性に対して訴えかける資料が少ないです。パロディーを含めて男性にも刺さる内容を織り交ぜた方が、読み進めてもらえるし、行動を変えるきっかけにしてもらえるのではないかと思いました」
「男性不妊戯画」は、医学振興に関する財団の助成金を受けて制作し、イラストの使用料や冊子の印刷費などに充てたという。クリニックや病院から要望があった場合、製本した冊子を無料で配布している。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「自分は大丈夫」な男性にこそ読んでほしい。コミカルな『男性不妊戯画』、泌尿器科医が作ったわけ