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娘の発達障害に、パパは「ママと一緒? なら大丈夫」YouTubeで動画を配信する「あっちゃんファミリー」の歩み

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YouTube動画クリエイター「あっちゃんファミリー」

YouTube動画クリエイター「あっちゃんファミリー」は九州在住で、小学5年生のあっちゃん、2年生のすっちゃん、そしてパパとママの4人に、猫のこっちゃんを加えた4人1匹家族だ。あっちゃんとママに発達障害の特性があることを公表している。  

あっちゃんには小3のときにADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の診断がつき、同時期にママにもADHDの特性が判明した。

家族の生活を発信しているYouTubeチャンネル『あっちゃんファミリー』は、2021年6月時点のチャンネル登録者数が13万人を超えていて、なかには100万回再生を超える動画が10本以上ある。

筆者も発達障害があり、子どもを育てている当事者でもあるが、気になることがあった。

あっちゃんファミリーのみなさんは、顔を出して障害について発信することへの抵抗感はなかったのか。ママとパパは、どんなことを目指して子育てをしているのか。発達障害を取り巻く社会と家族をどのように考えているのか。あっちゃん、ママ、パパにリモートで話を聞いた。

 

泣き顔も「それはそれでおもしろいじゃん」

400万回再生を超える動画には、外食時に聴覚過敏の影響で頭が痛くなり、泣いているあっちゃんの様子が映し出されている。

この動画を公開する前に、ママが「泣いた顔とか映っとうけど、これ公開していいと?」と尋ねると、あっちゃんは「いいよ、全然して!」と気にしなかったそうだ。今回のインタビューでも、あっちゃんは「それはそれでおもしろいじゃん」と応えてくれた。

「もともと同世代で活躍しているYouTuberの子たちを見ていてYouTubeをやりたがっていたし、あっちゃんは注目されるのが好きです。例えば、キャラクターショーに行ったときでも、ショー自体はあまり見ません。最後にステージ上でキャラクターと握手ができる場面になると、ステージに上がって客席に向かって自分が『わーっ』と両手を振って、キャラクターそっちのけなんですよ(笑)。

ASDは“自閉”と書くように、あっちゃんの場合、自分は他の人のことに興味はないのですが、他の人に自分を知ってもらうことは好きです。だから、風邪を引いたときのだらりとした顔も、泣いている顔も変顔も『撮って撮って』という感じなんです」(ママ)

発達障害の特性は当事者によって多様だ。自分のことを伝えたいあっちゃんのようなタイプもいれば、なるべく見せたくない当事者もいる。ママとパパは、あっちゃんの特性や意思をよく観察して尊重した。

YouTubeチャンネル『あっちゃんファミリー』を開設したのは2019年11月。あっちゃんの発達障害がわかったのは、ちょうど同時期だった。

「チャンネルではVlog(動画ブログ)形式で家族の暮らしを発信していこうと決めたのですが、(発達障害を公表しなかったとしても)あっちゃんの感覚過敏などの特性や行動に違和感を抱かれるし、公表しながら活躍している方も多かったので、隠すようなことではないと思いました」(ママ) 

「普通」ではなく「興味のあることにのめり込む強さ」を

あっちゃんの発達障害がわかったとき、パパは「ママと一緒やろ? なら大丈夫やん」と言ったことが動画でも紹介されている。

あっちゃんには以前から授業中にぼーっとしてしまうなどの困りごとがあり、3年生のときに発達障害の診断を受けた。4年生までは普通級に在籍し、5年生になった2021年の春から特別支援学級に転籍したそうだ。

「あっちゃんが診断を受けたタイミングで、ママも特性を持っていることがわかり、納得しました。私にとって長い付き合いのママと近い特性があっちゃんにあり、ママと同じように得意なことを見つけて生きていけるのだとしたら、配慮や支援は必要だとしても『大丈夫だろう』と思いましたね」(パパ) 

ママは大学卒業後、企業でウェブデザインの仕事をしていた。退職後にはブログ執筆やミニチュア制作で「パートで働く程度の収入」(ママ)を得ていたそうだ。結婚を経て、親として奔走する様子は、一連のYouTube動画で見て取れる通りである。

一方のパパも、「普通」へのこだわりがなかった。

「大学で映画サークルの活動にのめり込んで留年したり、会社も何度か転職していて、最終的に仲間と一緒に起業し、今はその会社で主にエンジニアとして働いています。だから私自身も、レールに乗って“普通”に進んできてはいなくて…。

ただ、留年していたときに映像をやっていたのが今のYouTube活動に生きていますし、その頃流行りはじめたインターネットを大学にも行かずに自分で勉強し始めていたことが、エンジニアの仕事にもかなり役立っています。

学校の勉強だけではなくて、自分が興味のあることを見つけてのめり込むことの強さは身をもって知っているので、子どもたちにも興味のあるものには突き進んでいってほしいと思っています」(パパ)

ママは「パパが起業するとき、私が100万円出したんですよ」と苦笑いしながら、パパの言葉に頷く。

「学校は、お友達との関係を築くといった大事なところがあるので、少なくとも高校卒業まではサポートするつもりです。だからと言って、『勉強しなさい』『良い会社に入るために頑張りなさい』とは全く思っていません。

正直に言うと、あっちゃんの場合は、“普通”に就職して生計を立てるのは“夢物語”だと思っています。逆に、YouTubeの活動や最近やり始めたモデルのお仕事のように、個人で何か仕事をして食べていくほうがよっぽど合っています。将来何をするかはまだわかりませんが、脳のつくりが多くの方とは違うので、同じ生き方をする必要はないなと」(ママ)

トップになるより、「好き」を守ることを大切に

ママとパパは、子どもたちの「好き」を守ることを大切にしている。

「発達障害のある人たちは、天才的な側面があると言われがちですが、実際にはそうでない人のほうが多いと思います。そのなかで、いかに自分の好きなことを見つけていくか。それを一緒に探していくことが、親としては大事だと思っています」(ママ)

「好きなことが見つかったときに『その分野でトップにならなきゃ』というような過度な期待をして、気負う必要もないのかなと。子ども本人のなかでの好きなことや長所を見つけて、その芽を摘まないようにしたいです」(パパ)

妹のすっちゃんはゲームが好きで、ゲーム実況の動画を『すっちゃんゲーム』で公開している。

「すっちゃんは、私のお下がりですが、小学生がなかなか持っていないようなスペックのゲーミングパソコンで好きなゲームをしています。小2で、もうキーボードとマウスで操作をしていますね。だから、これも将来困らないための投資になっているかなと思います」(パパ)

一方のあっちゃんは現在、YouTubeでの活動のほか、雑誌のモデルにも挑戦している。

「以前、モデルの撮影の様子を動画にしたのですが、コメントで『トップモデルになるにはこうしなきゃ』といった視点でご意見を多くいただきました。でも、トップになる必要はないんですよね。

感覚過敏があって、移動するだけでも大変だったあっちゃんがスタジオに足を運び、たくさんのスタッフさんやモデルさんの中で無事撮影を終え、それが雑誌に載っただけで、本当に頑張ったなと思います。トップになることよりも、好きなことややりたいことのためにここまで頑張れていることに目を向けたいですね。

推しのアイドルを応援するために仕事を頑張れると言う方を見たことがあって、すごく良いことだと感じました。好きなことややりたいことがあれば、それに関係のない別の仕事を頑張るという考え方も良いと思います」(ママ)

 

本人が困っていることは?

学校でいま困っていることを尋ねると、あっちゃんから「虫が多いことかな」と意外な答えが返ってきた。ママは「客観的に見て発達障害によって困っていることと、本人が本当に困っていることは、全然違うんだなと思いますね」と言う。

ほかにも、不注意の特性で、消しゴムや鉛筆がなくなっていくことに困っていたそうだ。

「朝持ってきた消しゴムが、2時間目が終わる頃にはなくなってるんだよね。鉛筆もすぐ減っていって、前は『あっちゃんボックス』と言って、落としたものを入れる箱が教室にあったけど、そこに鉛筆がどんどん入っていっちゃって、帰ってきたら鉛筆が少なくなってるからママが補充する。ママに気をつけるように言われてもまた落として、またボックスに入っていくのを繰り返して、どんどん鉛筆が溜まっていった(笑)。

ボックスがあることを忘れちゃうから、教室のめっちゃ目立つところにおいてレインボーに光らせるぐらいにしないと多分気づかん」(あっちゃん)

自宅近くの商業施設に行ったときには、店員さんがYouTubeチャンネルを見ていて、うるさい音が苦手と知ってくれていたため、静かな席に案内してくれたこともあったそうだ。

パパは、障害をこう捉えている。

「同じ特性を持っていても、環境が違えば手助けなしで自分でできる人もいて、それは障害とまで言わなくてもいいと思います。ただ、いまのあっちゃんの場合は、やはり配慮や支援をしてもらう必要があるので、その意味では障害があります。

だからと言って、他の人と比べて劣っているとか、差別されないといけないとか、そういうことは全くないと思っています」(パパ)

成人の当事者である筆者の正直な気持ちを言うと、あっちゃんを取り巻く環境がうらやましいとも思う。しかし、私たちの生きてきた時代を経て、未来を担う子どもたちの育つ環境が新しいフェーズに入っていることに、希望を感じるのも事実だ。

恵まれない環境で奮闘する当事者の生きづらさへ誠実に向き合いつつも、「それはそれでおもしろいじゃん」と軽やかに生きる子どもたちもまた、心から応援したい。

(取材・文:遠藤光太 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版) 

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Source: ハフィントンポスト
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