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6000超の声は生かされた?パブコメは「アリバイづくりのような制度」と専門家。第6次エネルギー基本計画、検証してみた

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10月22日に閣議決定された第6次エネルギー基本計画。その前にはパブリックコメントが募集され、6392件の意見が寄せられた。前回の第5次エネルギー基本計画の際に集まったのは1710件。約3.7倍のコメントが集まり、市民からの関心の高まりが伺える。

しかし、賛否さまざまなパブリックコメントを受けたにも関わらず、第6次エネルギー基本計画はほとんど変わらなかった。

国際NGO「WWFジャパン」の気候エネルギー・海洋⽔産室⻑の⼭岸尚之さんは「そもそもパブリックコメントの制度自体に問題があります」と指摘する。

COP26開催中のグラスゴー現地で、「Japan stop funding coal」と書かれた看板を持つ抗議者たち

主な変更点は5つ

経産省によると、パブリックコメントを踏まえての主な変更点は、誤字脱字などの細かな修正をのぞいて以下5カ所だという。(詳細は記事の最後に記載した)

・直前に発表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書とパリ協定について合計3カ所の追記

・東京電力福島第一原発事故について追記

・SDGsについて追記

2点目の原発事故に関する記載について経産省担当者は、「元々の案には記載されていた一文。編集の過程で抜け落ちていたものを復活させた」と説明した。

再エネや石炭火力の目標値が変わらなかったのはなぜ?

パブリックコメントには、日本政府の温室効果ガス削減目標(2030年に2013年度比で46%)の引き上げや石炭火力の撤退などの声も寄せられた。しかし、2030年度の電源構成の目標値などは変わらないまま閣議決定され、案からの主な変更点は上記の5点のみにとどまった。

経産省担当者は、「温室効果ガスの削減目標や2030年までの電源構成比の目標は、元々専門家の様々な意見を踏まえて出された数字だ。より高い目標を求める専門家の声も踏まえているため、目標値は変わっていない」と説明した。

WWFジャパンの⼭岸さんは「パブリックコメントはほとんど案が固まった段階で募集されるため、『市民の声を聞きました』という政府の“アリバイづくり”になりかねません」と指摘する。

「パブリックコメントの前には『意見箱』を設置していましたが、寄せられた声は会議資料の一番最後に載せるだけ。ほとんど意味がないのではないでしょうか。市民社会の声を吸い上げ、計画を策定するプロセスの中に組み込む制度が必要です」

2019年9月20日、日本の東京で開催された全国的な気候変動行動日に抗議する「Fridays For Future」運動の参加者たち。

経産省によると、第6次エネルギー基本計画の案を議論する間に募集された意見箱には、のべ約700件の意見が寄せられていた。それらの意見がどのように議論に生かされたか尋ねると、「個別の意見に対して答えるのではなく、分科会の議論全体を通してお答えできるようにしている」と答えた。

なお、パブリックコメントには「温暖化が実際に起きているかが不明確な中で、高い目標を掲げるべきでない」など温暖化対策への懐疑的なコメントも寄せられた。これらに対し政府は「IPCC第6次評価報告書・第1次作業部会報告書では、(中略)『人間の影響が気候システムを温暖化させていることは、疑いの余地がない』と報告されました」など、科学的根拠を用いながら対策の重要性についてコメントしている。

欧州で始まる「国民に開かれた」政治って?

環境社会学などを専門とする北海道大の三上直之准教授は、「政策決定のプロセスをもっと市民に開くべきだ」という。

「フランスやイギリスなど欧州では、市民の中から抽選で社会全体の縮図となる参加者を集めて議論する『気候市民会議』が行われるようになりました。背景には代表制民主主義の機能不全があります」

「気候変動対策は何十年と長いスパンで考える必要があり、選挙でも争点になりにくい。しかし本来、多くの人に影響が及ぶ重大な問題であり、政治家や行政に白紙委任して済む話ではない。市民も直接参加して議論し、社会的な合意をつくる新しい方法が模索されています」

札幌で日本版の気候市民会議を実験的に行った三上准教授は、「もともと関心が薄かった人も参加する議論は、たとえ高関心層だけの議論と似たような結論が出たとしても、持っている意味が違う。札幌市も結果を深く受け止めていた」と気候市民会議の有効性を実感したそうだ。

A group of 150 members of the Citizens' Convention for the Climate arrived at the Elysée for a meeting with French President Emmanuel Macron. Paris, 29 June 2020. (Photo by Andrea Savorani Neri/NurPhoto via Getty Images)

東日本大震災後からエネルギー政策に国民の声が取り入れられるよう取り組みを続けてきた国際環境NGO「FoE Japan」の吉田明子さんは、「さまざまな方法を組み合わせて国民の声を聞くことが重要」と話す。

「実は日本でも震災後の2012年に、福島を含む全国11都市でエネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会が開催されたり、討論型世論調査、民間団体主催の意見交換会に政府関係者が出席したりと、パブリックコメントだけでなくさまざまな方法で国民の意見を聞く取り組みが行われていました。『国民的議論』の試みは、大きな意味を持っていたのです。議論の全体について検証委員会も開かれ、その結果、『少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる』とまとめられ、『2030年代に原発をゼロにする』ことが決められました」

しかし、民主党から自民党に政権が交代し、2014年、2017年、そして今回のエネルギー基本計画の見直しの際には意見箱とパブリックコメントのみ実施されている。

「国民の多様な意見を取り入れるには、多様な方法が必要です。国民の生活に直結するエネルギー政策であるにも関わらず、第6次エネルギー基本計画案へのパブリックコメントを受けた議論の場さえも開かれないまま閣議決定されたことに、憤りを感じています」

<パブリックコメントを受けて修正した主な箇所(第6次エネルギー基本計画)>

 

P4…IPCC報告書について追記

(原案)世界各地でこれまでに無かったような極端な気象現象が生じており、気候変動問題は世界各国が取り組まなければならない課題である。

(変更後)2021年8月に公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約」によると、極端な高温、海洋熱波、大雨の頻度と強度の増加などは、地球温暖化の進行に直接関係して拡大すると報告されており、気候変動問題は世界各国が取り組まなければならない課題である。

 

P11…IPCC報告書とパリ協定について追記
(原案)個々の気象災害と地球温暖化との関係を明らかにすることは容易ではないが、地球温暖化の進行に伴い、今後、大雨や猛暑等のリスクが更に高まることが予測されている。

(変更後)また、「IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約」では、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と報告された。個々の気象災害と地球温暖化との関係を明らかにすることは容易ではないが、同報告書では、人為的な気候変動は、世界中の全ての地域で、多くの気象及び気候の極端現象に既に影響を及ぼしていると報告されており、極端な高温、海洋熱波、大雨の頻度と強度の増加が予測されている。

(追記部分)世界全体 の平均気温の上昇を工業化以前よりも2℃高い水準を十分に下回るものに抑えるこ と並びに1.5℃高い水準までのものに制限する努力を継続すること、主要排出国を 含む全ての国が気候変動に対する世界全体での対応に向けたNDCを5年ごとに提 出・更新すること、共通かつ柔軟な方法でその実施状況を報告しレビューを受けるこ と等を定めている。

 

P66…原発事故について追記
(追記部分)また、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて、そのリスクを最小限にするため、万全の対策を尽くす。その上で、万が一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき、責任をもって対処する。

 

P101…SDGsについて追記

(追記部分)また、2015年に採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、エネルギー、経済成長と雇用、気候変動等に関する持続可能な開発目標(SDGs)が掲げられており、気候変動対策のみならず、SDGsの達成に貢献していくことが重要である。

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オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
6000超の声は生かされた?パブコメは「アリバイづくりのような制度」と専門家。第6次エネルギー基本計画、検証してみた

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