日本テレビ系で9月7日に放送された『ザ!世界仰天ニュース』の内容について、番組公式サイトが14日、謝罪文を掲載した。番組中の、肌荒れを克服した女性のエピソードをめぐって日本皮膚科学会などから抗議が寄せられていた。
番組公式サイトでは、「治療中の多くの患者の皆様とそのご家族、携わる医師の方にご心配及びご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます」と謝罪している。
■どんな放送内容だった?
7日の『ザ!世界仰天ニュース』は「衝撃の症状!謎の病SP」として、さまざまな病気を再現VTRで紹介した。
その中の一つが、都内のIT企業に勤める女性がひどい肌荒れとなったエピソードだった。病院で処方されたステロイド薬を使っていたが、一時的には症状が治るものの、再発を繰り返した。
そこでネットを検索して見つけた「脱ステロイド療法」を試したところ、症状は悪化したものの約1年後は「すっかり元通りの肌」になったとする内容だった。
■抗議は?
この放送内容に関して「患者さんの心を折りかねない残念な内容」と、皮膚科専門医から批判する声が出ていた。そうした中、日本皮膚科学会や日本アレルギー学会などの6つの医学会と、アトピー性皮膚炎などの患者らによるNPO法人「日本アレルギー友の会」が14日、連名で日本テレビに抗議文を提出した。
番組内のナレーションでは、「ステロイドは本来体内で作られるが、彼女の場合、ステロイド薬を使いすぎたことで体内でステロイドが作られなくなったと思われる」。「再び体内でステロイドが作られるようにするには、ステロイド薬を断つしかない」と紹介していた。
このナレーションについて、日本皮膚科学会などの6団体は「科学的に明らかに根拠のない内容」として、患者さんへの悪影響が懸念されます」と批判した。番組が「ステロイド外用薬の使用を、種類も使用法も区別すること無く否定」していることから「ステロイド外用薬を用いた治療中の患者さんに恐怖と不安をあおる内容」だと指摘していた。
日本皮膚科学会などの7団体が日テレに提出した抗議文と、日テレ公式サイトに掲載された謝罪文の全文は以下の通り。
■【重要】2021年9月7日に放送された日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース」に関して抗議文を提出したことについて
2021年9月7日に放送された日本テレビの「ザ!世界仰天ニュース」のなかで、「ひどい肌荒れがまさかの方法で回復」との番組がありました。そのなかには、「ステロイドは本来体内で作られるが、ステロイド薬の使い過ぎにより体内でステロイドが作られなくなった。」(23:53)や、「再び体内で作られるようにするには、ステロイド薬を断つしかない」(24:09)といった、科学的に明らかに根拠のない内容もあり、患者さんへの悪影響が懸念されます。
日本皮膚科学会、日本アレルギー学会、日本臨床皮膚科医会、日本皮膚免疫アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本小児皮膚科学会、日本アレルギー友の会(患者会)は以下に当番組の問題点を指摘します。
1.ステロイド外用薬の使用を、種類も使用法も区別すること無く否定し、ステロイド外用薬を用いた治療中の患者さんに恐怖と不安をあおる内容であったこと。
2.脱ステロイド「療法」という用語を用いることで、ステロイド外用薬を使わないことをひとつの治療法として、あたかも疾患が治るかのごとき期待を抱かせる内容であったこと。
3.ステロイド外用薬を使うことの危険性を把握し、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」に沿って診療を行っている医師と患者さんに不必要な不安と妨害を与えるものであったこと。
4.番組を視聴した結果、多くの健康被害をもたらす可能性が高いこと。
1990年代に始まったステロイド外用薬に関する誤解や誤った報道により、「脱ステロイド」と呼ばれる不適切な治療が横行し、多くの患者さんが不利益を被った歴史があります。日本皮膚科学会では「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」を策定し、標準治療の普及に努めて参りました。その結果、ステロイド外用薬に関する誤解や誤った報道が減ってきましたが、今回またこのような番組が放送され、医療の混乱を来すことは、看過することができません。
マスメディアは科学的根拠に裏打ちされた情報を基に、患者さんの利益になる番組を制作することが使命であると考えます。そのため、当番組を制作・放映したことに対して、日本皮膚科学会、日本アレルギー学会、日本臨床皮膚科医会、日本皮膚免疫アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本小児皮膚科学会、日本アレルギー友の会から連名で日本テレビに対して厳重に抗議しました。
■『ザ!世界仰天ニュース』公式サイトに掲載された謝罪文全文
9月7日の放送で、肌荒れを克服した女性の体験談をお伝えしました。
番組内容で、治療中の多くの患者の皆様とそのご家族、携わる医師の方にご心配及びご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
VTRでは、ステロイド薬の使用を中止したエピソードに触れました。一方で、日本皮膚科学会のホームページによりますとステロイドの外用薬は、皮膚炎の炎症を十分に鎮静することができるなど、有効性と安全性が科学的に立証されている薬です。正しく使用すれば、全身性の重篤な副作用は起きないとされています。
患者の方が自らの判断で急に薬の使用を中止すると症状が悪化し、白内障や網膜剥離などのリスクがありますので、絶対にやめてください。
治療は、医師の指導に従ってください。また日本皮膚科学会などのホームページも参考にしてください。今後、番組では再発防止に努めてまいります。
Source: ハフィントンポスト
『ザ!世界仰天ニュース』の謝罪文全文。ステロイド剤の描写に日本皮膚科学会などが抗議していた