アメリカ最高裁判所は9月1日、テキサス州で施行された中絶を規制する法律を差し止めないとする判決を言い渡した。
法律が差し止められなかったことで、テキサス州の女性たちは憲法で保障されてきた中絶の権利が奪われることになった。
どんな問題が生じるのだろうか。
どんな法律なのか?
テキサス州の中絶規制法は、妊娠6週目以降の中絶を禁じる。しかし多くの女性が6週目では妊娠に気づかないため、実質ほとんどの人たちが中絶を受けられなくなる。
さらに、同州で妊娠6週目以降の中絶を施した医療関係者や、中絶を「手助け」や「ほう助」した人を一般市民が訴えることができ、民事訴訟で勝訴すれば、最大1万ドル(約110万円)の報奨金とかかった裁判費用が得られる。
「ほう助」には、中絶にかかるお金を援助した人や、車で病院に連れていった人も含まれる可能性がある。
また、レイプや近親相姦による例外は認められていない。
「見て見ぬ振りをしている」痛烈に批判
法律は、共和党が主導するテキサス州議会で5月に可決され、共和党のアボット知事が署名した。
アメリカでは1973年のロー対ウェイド裁判で、胎児が子宮外で生きていけるようになるまで(妊娠22〜24週)女性が中絶手術を受ける権利が保障され、中絶を不当に規制する州の法律が違憲とされた。
差し止めを求めていた中絶の権利擁護者たちは、テキサス州の法律が違憲だと訴えていたが、最高裁は5対4で請求を退けた。
今回差し止めに反対したのは、トランプ前大統領が指名した3人の判事を含む5人の保守派判事だ。
彼らは差し止め請求の主張が「合憲性についての重大な問題を提起している」としたものの「立証責任を果たしていない」という見解を示した。
その一方で、最高裁の決定は「テキサスの法律の合憲性についてのいかなる結論にも基づいたものではない」と説明し、テキサス州内を含む裁判所で、法律を巡る法廷闘争をすることは可能だとした。
差し止めを支持したのは、リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事と、スティーブン・ブライヤー判事、エレナ・ケイガン判事の3人と、保守派のジョン・ロバーツ首席判事だ。
ソトマイヨール判事は、ブライヤー判事とケイガン判事と共同で発表した反対意見書の中で「最高裁の決定に呆然とさせられる」 と判決を痛烈に批判。
「多数派の判事たちは、女性が憲法上の権利を行使することを禁じる著しく違憲な法律を提示し、さらに巧妙な方法で司法審査を回避したことで、問題を見て見ぬ振りをしている」と指摘した。
今後、どんな影響が出てくるか
ニューヨークタイムズによると、テキサス州では85〜90%が妊娠6週目以降で中絶を受ける。
新しい中絶規制法が施行されたことで、同州の中絶を望む女性の多くが州外で中絶を受けなければならず、金銭的・精神的負担が増える。
また、女性の権利や中絶の権利の支持者たちは、テキサス州の法律が差し止められなかったことで、共和党が優勢の他の州でも、類似の法律が施行されるのではないかと危惧している。
その一方で、中絶の権利支持派は、権利をめぐる闘いを諦めていない。NPRによると、テキサス州内などいくつかの裁判所で、新法の合憲性を問う裁判の準備が進められている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。
Source: ハフィントンポスト
妊娠6週目以降の中絶が禁止に。レイプも例外なし…全米で物議を醸すテキサス州の法律、その問題点は?