オーストラリアのシドニー南部で野生のキバタン(Cacatua galerita)が「ゴミ箱の蓋を開ける」という行為をするようになったと報告されています。一見簡単なようにも思えるこの行為について、学術誌大手のScienceに新たに掲載された論文は、「オウムが文化的に進化しつつある例証だ」と説明しています。
オウムが「ゴミ箱のフタの開ける」という行為を急速に学んでいるという報告
オーストラリアのシドニー南部で野生のキバタン(Cacatua galerita)が「ゴミ箱の蓋を開ける」という行為をするようになったと報告されています。一見簡単なようにも思えるこの行為について、学術誌大手のScienceに新たに掲載された論文は、「オウムが文化的に進化しつつある例証だ」と説明しています。
Innovation and geographic spread of a complex foraging culture in an urban parrot | Science
https://science.sciencemag.org/content/373/6553/456
Clever cockatoos in southern Sydney have learned to open kerb-side bins — and it has global significance
https://theconversation.com/clever-cockatoos-in-southern-sydney-have-learned-to-open-kerb-side-bins-and-it-has-global-significance-164794
Cockatoos in Australia Are Teaching Each Other How to Loot Trash Cans
https://www.sciencealert.com/clever-cockatoos-have-learnt-and-spread-a-culture-of-trash-bin-looting
キバタンは人目を引く黄色い冠羽が特徴的な、非常に高い知能と、豊かな好奇心を有している大型のオウムです。キバタンはその知性からペットとして愛される一方で、オーストラリアでは野生の個体数が増えすぎているため、害鳥として扱われています。
近年、このキバタンが「ゴミ箱のフタを開けて中身を漁るようになった」とオーストラリアで相次いで報告されています。実際の映像が以下。
Cockatoo raiding bin – YouTube
以下の映像では、フタにのせられた重しも器用にどかしてフタを開けています。
Cockatoo’s getting into our bins – YouTube
ドイツ・マックスプランク研究所のバーバラ・クランプ氏らは、オーストラリアのシドニー近郊で「キバタンがゴミ箱のフタを開けている」報告が2014年にさかのぼれる点に着目し、キバタンの間で問題の行為がどのように広がったのかを調べました。
シドニー郊外に住む住民478人に対して継続的な聞き取り調査を行った結果、「ゴミ箱のフタを開けるキバタンを見たことがある」という報告は1396件中338件を占めました。2018年以前の聞き取り調査では「見たことがある」という報告はシドニー郊外の3カ所に限られており、この3カ所は互いにかなりの距離がありましたが、2019年には「見たことがある」という報告する地域が急速に増加して41カ所となりました。
これらの報告を分析したところ、ゴミ箱のフタを開けるキバタンを報告した地域に隣接する地域で次第に同様の報告が行われるようになったことや、フタを開けるキバタンの報告のうち90%超で「他の個体がフタを開ける様子を観察していた」という内容が含まれていたことから、「キバタンはゴミ箱のフタを開けるという行為を同種から学んでいる」と考えられるとのこと。このフタを開ける行為を学んだキバタンは群れの約10%ほどで、オスの成体が最もフタを開ける行為を理解している可能性が高いこともわかりました。
また、今回発表された論文では、「フタの開け方などの差異」も研究対象となっています。ゴミ箱のフタを開けることを学習したキバタンの中でも「フタの開け方」や「フタを開けた後の行為」については地域によって差があったそうです。以下の映像では、「フタを口だけで開ける」というスタイルのキバタンと、「脚と口で開ける」というスタイルのキバタンをそれぞれ捉えています。
Sydney’s Cockatoos Have Found Multiple Ways of Opening Bins – YouTube
フタを開けた後の行為については、シドニー北部では「ゴミ箱の開口部の右側に乗って歩き回る」というスタイルが主流である一方、シドニー中心部では「激しく踊るか飛び跳ねる」というスタイルが主流でした。これらのスタイルの差異については、各地域に「ゴミ箱のフタを開ける」という文化を持ち込んだキバタンのスタイルが踏襲されているものだとみられています。
以上のオーストラリアのキバタンにおける「ゴミ箱のフタを開ける」という報告について、研究チームのジョン・マーティン氏は「社会的学習を示す動物を日常生活の中で観察できると示した点が重要」だと解説。1950年代に科学界に登場したとされる「人間以外の種も文化的に多様性があるかもしれない」という考え方を改めて認める結果になったと語りました。
・関連記事
オウムは「確率に基づいて判断を下せる」ことが判明、大型の類人猿以外の動物では初 – GIGAZINE
オウムは道具の使い方や作り方を仲間から学習できることが判明 – GIGAZINE
オウムやイルカなどの「おしゃべりな動物」に共通する特徴とは? – GIGAZINE
・関連コンテンツ
Source: ギガジン
オウムが「ゴミ箱のフタの開ける」という行為を急速に学んでいるという報告