Image:SchmidtOceanInstituteviaGIzmodoUS深い、暗い海の底にうごめくものたち。太平洋のほぼ真ん中に位置するキリバス共和国には、33の島々が広大な海域にぽつぽつと点在しています。フェニックス諸島もその一部で、付近の公海にはいまだ人類が目にしたことがない海山がいくつもそびえ立っています。その謎の海域に文字どおり光を当てるため、今年の6月初頭にアメリカのシュミット海洋
最近新たに発見された、シュールな深海生物の姿
- Dharna Noor – Gizmodo US
- [原文]
- ( 山田ちとら )
深い、暗い海の底にうごめくものたち。
太平洋のほぼ真ん中に位置するキリバス共和国には、33の島々が広大な海域にぽつぽつと点在しています。フェニックス諸島もその一部で、付近の公海にはいまだ人類が目にしたことがない海山がいくつもそびえ立っています。
その謎の海域に文字どおり光を当てるため、今年の6月初頭にアメリカのシュミット海洋研究所(Schmidt Ocean Institute)が保有する海洋調査船R/V Falkor号がフェニックス諸島を目指して出発しました。R/V Falkor号は34日間の調査を経て、およそ3万平方キロメートルに及ぶ海域の地図を作成。高解像度水中カメラで海底の様子をつぶさに捉え、これまで誰も見たことがなかった5つの海山の撮影にも成功しました。
「今回の調査対象範囲はとにかく驚くほどの広さでした」とプレスリリースで語っているのはR/V Falkor号に乗船したウッズホール海洋研究所所属の生物学者、シャンク(Tim Shank)さん。
調査を進めていくうちに、赤道の周辺における海抜と地形によって、またサンゴの種類によっても異なる生物が生息していることがわかってきました。これらの深海生物たちを観測しながら、今までわたしたちが考えていたことを覆すような発見がいくつもありました。ひとつは深海生物がどのように海山をすみかとし、お互いどう影響し合っているか。もうひとつは深海領域においてどのように生物の多様性が育まれているかです。
今回映像で確認された深海生物の中には、今まで一度も記録されたことのなかった幻のジンベイザメや、まるでガラスでできたみたいに透きとおったタコもいました。長い航海を終えた調査船は無事港にたどり着き、乗船していた研究者たちはほっと息を吐く暇も惜しいほどに早くもデータの解析に取り組んでいます。今後どんな大発見があるのか、みな一様にワクワクしながら。
まずは、壮大な海の旅からの美しいおみやげの数々をお楽しみください。
- 深海で食らうもの、食われるもの
- 海の幽霊
- 幻のジンベイザメ
- お宝をめぐる争奪戦
- まだ見たこともない神秘の世界
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深海で食らうもの、食われるもの
フェニックス諸島へたどり着く以前から、ちょこちょこ海底へ降ろされていた遠隔操作式の海底カメラが非常に珍しい海洋生物の姿を捉えられていました。
こちらはヒトデの一種で、サンゴの粘液、細胞組織、なんと固い骨格までもを食らう大食漢。すでにサンゴの上半分が食い尽くされている様子が見て取れます。
海の幽霊
海洋調査船R/V Falkor号に搭載されているロボット水中カメラの名は「SuBastian」。「Sub=水面下」と「Sebastian=ディズニー映画『リトル・マーメイド』に登場する愛らしいジャマイカ訛りのカニ」をかけたネーミングだと思われます。
そのSuBastianが、フェニックス諸島周辺の保護区域内でこんな美しいサンゴの姿を捉えました。深海サンゴの一種、ゴールド・コーラルの新種である可能性が高いそうですが、なにせこれまで誰も見たことがなかったので定かではありません。
ゴールド・コーラルはものすごく希少です。今回捉えられた映像からは、名前のとおり「ゴールド」な外見ではなく、幽霊のように真っ白な姿が浮かび上がってきました。この白さは、おそらくサンゴの骨片(sclerite)から由来していると思われるそうです。
もちろん科学者たちはただサンゴの美しさを鑑賞していたわけではありません。航海している間にも、彼らは海底から採取してきたサンゴの標本を使って実験を重ね、サンゴや海綿の捕食についての包括的研究を行っていました。船内のラボではサンゴや海綿に15種類以上もの細菌を与え、どのように反応するかを調べました。サンゴが自然環境下でヒトデなどの天敵に食べられたり、傷つけられたりした際にどのように反応しているかを知るために有効な手がかりが得られたそうです。
幻のジンベイザメ
科学者たちは計21回海に潜り、182時間以上を海底で過ごしました。こちらの映像はそのうちのハイライトをまとめたものです。2:22あたりからは大変珍しいジンベイザメの姿が世界で初めて映像に収められています。
ジンベイザメはもう何百万年も前に地球上に誕生した種で、おもに深海に棲息しています。英語で「whale shark」と呼ばれるのはその大きさゆえ。12メートルを軽く越す体長のものも発見されています。
人間が一緒に泳げるぐらいおとなしい動物なのですが、残念ながら年々数が減ってきています。インド洋と太平洋での生息数は過去75年間でおよそ63%まで減少してしまいました。魚の乱獲と、魚網に絡まる事故が原因と考えられています。
お宝をめぐる争奪戦
ジンベイザメのように厳かな生物が観測された例もあれば、ちょっとユーモラスな生物同士のやりとりが明るみに出た例も。
こちらの2匹のカニたちは何やらもめている様子。それもそうでしょう、片方がもう片方のお宝を奪ってしまったんですから。
右側のカニが「ひょいっ」とサンゴの中から小魚をつかみ出して、そのまま食べ始めてしまいます。ところが、どうやらこの魚、左側のカニが事前に仕込んでおいたお宝だったようなんです。かわいそうに、必死に奪い返そうとしてますね。
一部始終は上記の映像の0:45あたりからご覧いただけます。
まず深海に棲むカニが魚を食べている姿が捉えられたこと自体初めてですし、さらに魚を隠しておく習性があるらしいことも新発見です。
「信じられない!!」と研究者が映像で声を上げていますが、まったく同感です。
まだ見たこともない神秘の世界
そして、こちらの透き通ったタコ。
「ガラスタコ(glass octopus)」と呼ばれる深海生物で、色づいているのは眼球・視神経・消化器系のみ。今回の海洋調査では深海の奥底にゆらめく姿を2度捉えることができたそうです。
ガラスタコの生態が謎に包まれてきたのは、生きている個体を自然環境下で観測したことがなかったからです。これまでは捕食者の胃におさめられていたガラスタコの標本を解剖するのに限られていました。今回、SuBastianが至近距離から捉えたガラスタコの鮮明な映像や画像は、これらの謎めいた生物についてもっと詳しく知る機会を与えてくれました。
海は私たちには想像もつかないような、まだ発見すらされていない不思議と期待とに満ちています
これはシュミット海洋研究所を創立したひとり、シュミット(Wendy Schmidt)さんの言葉です。
生身の人間では到底たどり着けることのない深海の秘境に、最新技術の粋を集めた海洋探査機が今日もどこかで不思議と遭遇しています。
Reference: Schmidt Ocean Institute, Smithsonian Institution
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Source: ギズモード・ジャパン
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