東京オリンピックは、開催期間中の8月6日に広島原爆の日を迎える。
被爆者団体から、黙とうの呼びかけなどに期待する声が上がっているが、組織委員会は当日の取り組みは予定していないという。
7月16日にあった国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長と橋本聖子組織委会長の広島訪問は、コロナ禍で市民から反対の声があがるなかで、決行された。
一方で、大会期間中と重なる8月6日にはなぜ、平和や広島に思いを寄せる取り組みを予定していないのか。IOCの対応に注目が集まっている。
広島、長崎は招致に名乗りをあげていた
そもそも、2020年のオリンピックを広島、長崎で開催しようとする構想があった。両市は2009年「核廃絶を五輪通じて世界にアピールできる」として招致に名乗りを上げていた。財政難で市民の反対が強かったという事情はあったものの、1都市開催を原則とするIOC側が共催に否定的で採用されず、広島でのオリンピック構想は消えた。
東京オリンピックでは、広島に原爆が投下された日である8月6日は、大会期間中と重なる。
広島県原爆被害者団体協議会の箕牧(みまき)智之理事長代行は、IOCや組織委としてこの日にどう向き合うのかに関心を寄せる。
「(原爆投下された時刻の)8月6日午前8時15分、選手やスタッフが祈りの時間を設けてもらえたら、今回のバッハ会長が広島にきた意義にもなるのではないでしょうか」
黙とうはリオ五輪でも計画があった
大会中の黙とうは、2016年のリオオリンピックでも話題にのぼっていた。広島への原爆投下の時刻がオリンピックの開会式に重なっていたことから、演出家のフェルナンド・メイレレス氏が「ブラジルから平和のメッセージを送る」として会場全体で黙とうをささげることを計画。しかし、IOCから「政治的な行動にあたる」として反対された経緯がある。
世界で唯一の被爆国・日本でのオリンピック開催は2度目だが、1964年大会は、秋開催だった。この時の聖火最終ランナーは、広島に原爆が投下された1945年8月6日に広島県で生まれた坂井義則さんが務め、オリンピックの場で「広島」が発信された過去もある。
今回は開催期間中に8月6日を迎える。だが、今のところ黙とうの予定はないという。
日本の組織委員会は7月15日時点、ハフポスト日本版に対して、「現在の競技スケジュール上では8月6日に黙祷等を実施する予定はございません」と答えている。
黙とう行為をオリンピックで行うことには異論もある。「平和のための博物館国際ネットワーク」(International Network of Museums for Peace, INMP)共同代表の乗松聡子さんは「第二次世界大戦において加害国の一つであった日本の原爆被害にだけ黙とうしなければいけないのか、それは日本を戦争被害国として扱うことではないかという心情になる人はいると思います。全員に黙とうを強制することはできないと思います」と語る。
しかし、コロナ禍で賛否両論あるなかバッハ会長の訪問をうけた広島では、毎年平和祈念式典が全国中継され、黙とうの防災無線が鳴る日本で「8月6日にアクションを」 という声がある。
長崎とともにオリンピック招致をしていた2009年当時、広島市長だった秋葉忠利さんは朝日新聞の取材に「この時期に広島に来たことの責任を果たして欲しい」と述べ、バッハ会長が黙とうの呼びかけるか注視していると明かした。
箕牧理事長代行は「日本で開催されるのであれば黙とうなどがあってほしい。(組織委としての対応を予定していないことについて)広島市長や広島県知事は、何か一言、(バッハ会長に対して)言われるのでないでしょうか。なにもないよりは、何かしらのアクションはあってほしい」と話している。
Source: ハフィントンポスト
オリンピック中の8月6日「黙祷の予定なし」 被爆者から期待の声も。問われるIOCの広島・長崎訪問『強行』