伝説のアニメソングシンガー、ヒデ夕樹(ひで・ゆうき、1940-1998年)の生涯に迫った評伝本が7月25日に発売される。「ヒデ夕樹とテレビまんが主題歌の黄金期」は当時のアニメソング界の盛衰とリンクし、業界史の側面も持つ。ものまね芸人の顔を持ち、イベント制作などを手がける著者の剣持光さん(44)に話を聞いた。
【写真】在りし日のヒデ夕樹、異色アニソン歌手の個性的な姿
◆評伝本、世に実像広めたい
紆余(うよ)曲折の取材が、ついに形になった。剣持さんは「ヒデさんは破天荒な男で、他人にどう見られようが自分の信じる格好良さを貫いた。こんな風に生きられたら楽しいでしょうね。ただ、想像していたよりも、ギャップがすさまじかったです」と意味深に笑った。
ヒデ夕樹はレイ・チャールズのようなブラックミュージックを得意としたシンガーだった。日立CMソング「この木なんの木」でタッグを組んだ作曲家・小林亜星からは「舶来の声」と認められ、「怪傑ライオン丸」「ブロッカー軍団Ⅳ マシーンブラスター」の主題歌にも起用された。現在でも高校野球のアルプス応援で頻出する『海のトリトン』の「GO! GO! トリトン」でも有名だ。しかし、活躍の大半は70年代で、80年代中盤以降の消息は知られていなかった。
剣持さんは小学校5年生の時、レンタルビデオで鑑賞した『海のトリトン』に衝撃を受けた。作品のみならず主題歌にも心酔し、ヒデが登場するCDやレコードを集めた。執筆のきっかけは2018年、出版社の企画でアニメソング本の取材を続けていた際、ヒデの遺族と知り合ったことだった。翌年、ヒデの没後20年イベントを開催した際の大盛況を受け、執筆を決意。頓挫していたアニソン本の取材は、今回の本に生かされた。
日本コロムビア学芸部で音楽プロデューサーを務めた木村英俊の取材が実現したことも大きかった。堀江美都子、水木一郎、ささきいさいお、子門真人を輩出したアニソン〝育ての親〟は取材翌年の2019年に死去。ヒデ夕樹、成田賢、藤本房子、町田義人、山野さと子らが世に出た経緯、日本コロムビアの隆盛と衰退に関する証言が得られた。
◆ボーカル変更…デマに憤りも
1979年のテレビアニメ『キャプテン・フューチャー』主題歌のボーカルが途中でタケカワユキヒデに変更された点を挙げ、「理由はヒデ夕樹が逮捕されたからだ」というデマがいまだにあると憤る剣持さん。晩年まで描くことで、世の誤った認識を正し、その魅力をさらに広めたいと願っている。「ヒデさんには〝孤独〟がテーマの楽曲が多い。表舞台から突然消えた経緯から、晩年も孤独やさみしさをイメージしていましたが、全く異なりました。ヒデさんは晩年、信じられない幸運を手にしていました。ぜひ本を読んでいただきたいです」と呼び掛けた。
「ヒデ夕樹とテレビまんが主題歌の黄金期」は出版取次を通さないインディーズ本。書店には並ばない。剣持さんの個人ホームページ、単行本ホームページからネット販売される。
7/15(木) 17:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/f1ccd39f1b90abf3e9e72c72aac64d865d7a3131
続きを読む
Source: まんがとあにめ
「海のトリトン」「この木なんの木」突然消えたヒデ夕樹 伝説的アニメシンガーは何をしていたのか