宮廷魔道師団の師団長・ユーリのもとで、「鑑定」を受けることになったセイ。だが、セイはユーリの鑑定魔法を無意識に弾いてしまう。それは彼女の魔力量がユーリよりも多いことを物語っていた。確証はなかったが、魔力の特異性からもセイが聖女であると判断したユーリは、その件をジークフリート国王に報告。王宮の使者はセイに、国王が謁見を望んでいることを伝えた。謁見の日、セイは気合いが入った侍女たちによって美しく仕立てられ、護衛役として迎えに来たアルベルトと共に王座の間へ向かう。
脚本:王雀孫 絵コンテ:清水空翔 演出:胡蝶蘭あげは 総作画監督:松本麻友子・井出直美・石川雅一
『さて。今日はあなたの鑑定をしたいと思います。鑑定魔法は相手の承諾がないと弾かれる場合があります。ですからどうぞ気持ちを楽にしてください』
(病院での一件以来王宮はある噂でもちきりになっていた。私が聖女ではないかという噂…)
セイ(今日まで私やアイラちゃんの鑑定が行われてこなかったのは国内で唯一人物を鑑定できる魔導師が聖女召喚の儀の後昏睡状態にあったからだという。その人がついに永い眠りから覚めたらしく…)
『聖女召喚の儀以降徐々にではあるが魔物の数は減っているという話だ。つまり聖女は間違いなく召喚されている』
『古の聖女は騎士団と共に討伐に赴き聖女にしか使えない術を用いて魔物を殲滅したという。今回も王宮はそうしたことを期待しているだろう』
『戦闘に混ざるってことですか?私…そういうのとは無縁で。向こうの世界は平和で戦いなんて…』
『おそらく何かしらの訓練をしてからにはなるだろう。お前と一緒に召喚されたアイラという子もアカデミーでそういうことを学んでいるらしい』
『あの…もし今日の鑑定で私が聖女じゃないとわかったらどうなるんですか?』
『だが…おそらくお前には支援要請が来ると思う。回復魔法を使える魔導師は多くないからな』
『その要請を受けたら宮廷魔導師団へ異動になるんでしょうか?』
『どうだろうな』
『私…できれば研究所を離れたくないです』
『そうだな。俺も善処はするよ』
『ようこそ。宮廷魔導師団へ。私は宮廷魔導師団師団長ユーリ・ドレヴェスです』
『ああ。彼は副師団長のエアハルト・ホーク。お会いしたことはあるんでしたね?』
『え…ええ(偉い人なんだろうなーとは思ってたけど副師団長様だったのね。あれ?ホークって…)』
『そうですか…であれば理由は一つ。あなたの魔力量が私より多いということになります』
『師団長より上…だと!?』
『その代わり…魔法を使ってる所を見せてもらってもいいですか?』
『それくらいなら…』
『ではヒールを』
『え?ヒ…ヒールですか?(ヒールって…そんな初歩の魔法でいいのかな?)』
『気づきましたか?私や他の魔導師のヒールは対象が光る。しかしあなたのヒールは加えて金色に輝く光の粒が乗っています。あなたが病院で治療した騎士達からも同様の報告が上がっておりました。それを確認したかったのです』
『あの…私の魔法の…あの光の粒は何なのでしょうか?』
『それは…今はまだわかりません』
(特に5割増しの呪いの原因はなんだかわかってしまった気がする)
(これまでも私の行動が周りの人達を驚かせてしまうことはあったけど思えばそれにはいつだって私の魔力が関わっていた。私の魔力だけの光る粒…)
『報告とは聖女の件か?』
『はい。本日予定通りに鑑定を行いました』
『いいえ。そうではないようです』
「ではなぜだ?」
『セイ様の魔力量が私のそれを大きく上回っていたからでしょう』
『恐れながら事実です』
『ところでアイラ殿の方は滞りなく済んだようだな』
『はい。詳細はそちらの通りに』
『…多方面において成長が著しいな』
『ええ。セイ様の鑑定が行えない今わかっていることはセイ様の魔力量が極めて多いこと、そしてアイラ様の成長がこの国の人間に比べ異常に早いこと』
「それでは判断材料が足りんな…結局どちらが聖女かはわからずじまいか」
『いいえ。おそらくセイ様かと』
『セイ様が聖属性魔法を発動する際に伴う金色の粒子、当初それは異世界人特有のものだと思っていました。しかしアイラ様の魔法にはそのような現象が見られなかった。金色の魔力はおそらく聖女特有のものかと思われます』
『また魔力が関係する事象においてセイ様は常人よりもはるかに優れている。こちらに関してもアイラ様とは異なります』
『はぁ…ご苦労だった。下がってよい』
「さて。困ったことになりましたな。事は殿下の王位継承問題に関わってきますぞ」
『カイルは相変わらずか?』
「倅の話ではそのようでございますな」
『召喚の儀でのあやつの言動、セイ殿への無礼、最早有耶無耶にはできまい』
『セイ殿は重要な国賓として遇する必要がある。早急に事を進めよ』
セイ『所長…』
ヨハン『どうした?』
セイ『陛下とお会いするのに着て行く服がありません』
「それでしたら問題ありません。全てこちらで準備させていただきます」
『マ…マナーに不安があるので…』
「陛下はそのようなことを気にされるお方ではありません。是非にと仰っておいでです」
(でも…ここで無理に断ってまだ私が召喚の時の事を怒っていると思われても困るし…断り続けて所長に迷惑がかかっても…)
覚悟決めたなw