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レズビアンカップル、子どもの認知を求めて国提訴。一方が「男性」だった頃の凍結精子を用いた子、認知届受理されず

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会見に出席したBさんと長女

血縁上の親子関係がある子ども2人の認知届が受理されなかったのは違法だとして、女性同士のカップルが6月4日、国に損害賠償などを求める訴訟を起こした。カップルの一方は、性別変更した女性で、子ども2人は過去に「男性」だった頃の凍結精子を用いて生まれた子だ。

女性は子どもたちと血縁関係にあるが、法律上の親子関係はない。子どもたちの認知を望み、認知届を自治体に提出したが、受理されなかった。

Bさんは、認知届を受理される地位にある。そして、認知届が受理されなかったことは違法であり、受理されなかったことによって、様々な不利益を被っている――。原告らはそう訴えている。

 

どんな裁判なのか?

原告は、東京都内で暮らすAさん(仮名、30代主婦)とBさん(仮名、40代会社員)。2人は事実婚状態にあるレズビアンカップルで、2歳の長女と0歳の次女を育てながら暮らしている。

娘2人は、Aさんが出産した。Aさんは娘2人と血縁関係にあり、実の親にあたる。

そして、Bさんも娘2人と血縁関係がある、実の親だ。なぜなら、娘2人は、Bさんが「男性」だった頃に凍結保存していた精子を使って産まれたためだ。

Bさんは、出生時に割り当てられた性別は男性だったが、自身の性自認は女性で、2018年に性別適合手術を受けた後、性同一性障害特例法に基づいて法律上の性別を女性に変更した。現在は、法的にも女性として生活している。

Bさんは男性として生活をしていた時、自身の精子を凍結保存していた。

AさんとBさんは、その凍結保存した精子を使って2人の娘を授かったのだ。

 

娘2人と法律上の親子関係がないBさん。認知届を提出するも、受理されなかった

つまり、AさんもBさんも、娘2人と血のつながりのある、実の親だ。

そして、2人を出産したAさんは、法律上も娘たちと親子関係にある。

しかし、性別変更したBさんと娘2人の間には、法律上の親子関係がない。

AさんとBさんは婚姻関係になく、長女も次女も、戸籍上の「父」欄は空欄となっているためだ。

Bさんは性別変更後、長女と次女を認知するため、本籍地と居住地の自治体に2度にわたって認知届を提出した。

認知届は、婚姻関係にない父母との間に生まれた子と、その父との間に法律上の親子関係を生じさせる届出だ。認知届を提出することによって、子どもの戸籍の父母欄に「父」の氏名が記載されるようになる。

Bさんは、認知届の手続きにならい、長女と次女の生物学上の「父」として、認知届を自治体に提出したという。

訴状によると、1度目に認知届を提出したのは、Aさんが次女を妊娠中だった2020年3月2日。Bさんは長女の認知と次女の胎児認知を求め、2人の本籍地である自治体(X市)に認知届を提出した。

しかし、市は認知届を直ちに受理せず、法務省の指示を仰いだ結果、「認知は無効な認知であり不受理」とするとの回答が9月4日にあったという。

その後、2021年5月22日、Bさんは長女と次女の認知届を居住している自治体(東京都のY区)に提出した。その時も、「法務省に問い合わせる」などと伝えられた。認知届は現在に至るまで正式に受理されておらず、保留にされている状態にあるという。

 

なぜ、認知届が受理されないのか?

同性同士の婚姻が認められていない日本。同性カップルは、子どもの共同親権を持つことも認められていない。

そのため認知届を提出しようとしたが、届出は受理されなかった。不受理になった理由は、自治体や法務局から明かされていない。

現行の制度は、「『女性』の凍結精子を使って子が生まれるということを十分に想定していない」のではないか――。

原告弁護団はそう指摘する。

戸籍上の続柄欄には「父」「母」欄があるが、今回のように血縁上の親が2人とも女性の場合、「母2人」とするか、「女性である父」を認めなければならない現行の制度では「整合性が取れない」と判断され、認知届が受理されなかったと弁護団はみている。

 

法的な親子関係が認められず、不利益を被っている。国を提訴

6月4日、AさんとBさんは国を相手取って訴訟を起こした。Aさんが法定代理人となり、長女と次女も原告に加わった。

裁判で国に対して求めることは、以下の2つだ。

①Bさんが認知届が受理されるべき地位にあることの確認

②認知届が受理されなかったことによって負った精神的損害の賠償

法律上の親子関係があると、所得税などの扶養控除や医療費控除が受けられ、相続税上も優遇措置が認められる。社会的な福利厚生を得られ、養育費の請求などもできる。

しかし、Bさんと娘2人は法律上の親子関係が認められていないため、こうした様々な法的利益を享受することができない。

原告らは、Bさんと娘2人には生物学上の親子関係があり、さらに、親であることの意思が存在する以上、法律上の地位の確認は認められるべきであると主張。そして、法務局が認知届を受理しなかったことは、認知について定めた民法(779条および781条1項)に反しており、違法であると訴えている。 

さらに、Aさんは娘2人を代理して、東京家裁に認知の訴えを提起した。

認知の訴えは通常、訴訟を起こす前に調停による話し合いで解決を試みなければならないとされているが、今回のケースでは、認知をすることはむしろ双方が合意している。国・自治体が認知届を拒絶している状態を受け、認知の訴えを起こした。

 

「国のシステムが追いついていない」「親子関係が認められれば、幸せになる人が増える」

会見に出席したBさん、長女

提訴後、原告のBさんと長女、弁護団が司法記者クラブで会見を開いた。

Bさんは、「私たちは普通の家族ですし、出産の時は立ち会ったり、保育園も顔を出したりもしている。最近ではLGBTの理解も広まってきていると感じていますが、その中で、国の理解が足りていないと感じています」と話す。

法律上の親子関係が認められないことで、福利厚生の恩恵が受けられないなど、実生活でたくさんの不便を被っている。

「私たちの認知が通ったとしても、誰も困らない。一般の方達に迷惑がかかることではないと思うんです。認知を認めていただけたらというのが強い思いで、皆さんが応援してくださると嬉しく思います」 

原告弁護団の一人である仲岡しゅんさんは、今回のケースは、「多様な性のあり方、家族の在り方が現に存在しているにも関わらず、国のシステムが追いついていない」ことが問題だと訴える。

「この社会は多様化しています。ゲイカップルやレズビアンカップルなど、同性カップルはこの社会には実態として存在している。Bさんのように性別変更をされている方が相当数いる。そういった多様な性のあり方、家族の在り方が現に存在しているにも関わらず、国のシステムが追いついていない。そのことを問うてほしいと思っています。

原告と原告長女の間に親子関係が生じたからといって誰も困らない。むしろ親子関係が生じることで、幸せになる人が増える。そのことを訴えかけていきたいと思っています」

会見する原告弁護団。

 

 

【時系列】

2017年秋ごろ Aさん、Bさんの凍結精子を使って妊娠

2018年夏 長女が産まれる。Aさん、Bさんは婚姻していなかったため、長女は摘出推定を受けなかった。戸籍上の「父」欄は空欄になっている。

同年秋 Bさんが、性同一性障害特例法に基づき、法定上の性別取扱変更の審判を申し立てる。※なお、性同一性障害特例法では、性別変更の際に「現に未成年の子がいないこと」という要件を満たすことを求めている(いわゆる「未成年子なし要件」)。長女とBさんとの間には法律上の親子関係が存在していなかったため、この要件に抵触することはなかった。

同年冬 Bさん、「男性」から「女性」に性別を変更。

2019年秋ごろ Aさん、Bさんの凍結精子を使って妊娠。

2020年3月2日 Bさん、本籍地を置いていた地方の自治体(東京都外)に、長女の認知届と次女の胎児認知届を提出。しかし、法務局が受理しない旨を指示し、認知届は不受理。

同年夏 次女が産まれる。Aさん、Bさんは婚姻していないため、次女も摘出推定を受けず、戸籍上の「父」欄は空欄になっている。

2021年5月22日 Bさん、東京都内の自治体に、再度、長女と次女の認知届を提出。しかし、法務局に相談すると言われたまま保留状態。

6月4日 Aさん、長女と次女を代理して、Bさんに認知の訴え提起。またAさん、Bさん、長女、次女共に、国に対して法律上の地位確認と国家賠償請求を提訴。

 

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Source: ハフィントンポスト
レズビアンカップル、子どもの認知を求めて国提訴。一方が「男性」だった頃の凍結精子を用いた子、認知届受理されず

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