生理用品のずれや経血の漏れへの不安を軽減する、「ショーツ型ナプキン」の人気が高まっている。
中でも、大王製紙が2023年秋に発売した、異例の「黒色」のショーツ型ナプキンが、「かっこいい」「新鮮」と注目を集めている。
発売から1年で出荷数は累計400万枚を突破。ブラックカラーがオムツっぽくなく履きやすいと好評を呼んだ。
黒色のショーツ型ナプキン開発の背景を聞いた。
広がるショーツ型ナプキンの人気。異例の「黒」で販売した理由
生理を経験したことがある人は、「寝ている間に経血が漏れてシーツを汚してしまわないか」「トイレになかなか行けない忙しい日や運動中に服を汚してしまうのではないか」と心配したことがあるかもしれない。
そんな不安を軽減するため、経血の漏れを防止するショーツ型ナプキンが一役買っている。
寝具への漏れが心配な就寝時用には各社、吸収量やサイズが大きい「夜用ナプキン」があるが、大王製紙のショーツ型ナプキン「エリスショーツ」は、同社の夜用ナプキンと比較しても吸収量が3枚分だという。
夜も経血の漏れを心配することなく就寝でき、日中、スポーツをする際も生理用品のズレや汚れへの心配が大幅に軽減される。
【あわせて読みたい】「生理は恥ずかしい」「生理用品が買えない」そんな社会を変える。台湾で女性たちが向き合うスティグマと「生理の貧困」
エリスショーツの特徴は、「黒」という色にある。
生理用品は白色の印象がある中で、モデルが黒色のショーツ型ナプキンを着用した姿は「生理用品」というよりは「ショーツ」を履いているような見た目だ。
大王製紙はハフポスト日本版の取材に、「従来のショーツ型ナプキンは、夜の『多い日』に使用するイメージが強いですが、エリスショーツは下着のようなカラーと履き心地を実現することで『昼間も着用して活動的に過ごせる』という新しい価値観を提供しています」と話した。
他社からもショーツ型ナプキンは発売されているが、白色やベビーカラーなどの薄い色が多く「オムツっぽさ」が否めず、着用に少し抵抗を感じてしまう人も少なくないという。
黒色で開発しようとしたきっかけも、そのような消費者の声があったからだ。
ショーツ型ナプキンを使ったことがない人を対象に、同社が2022年9月に実施した調査では、ショーツ型ナプキンは「オムツっぽい」「厚そう」という声が多かったことからも、色や薄さにもこだわり、吸収量を保ちつつ、吸収体はわずか2.9mmの「超うす型設計」を採用した。
色についても、同時期の調査で「ショーツとして使用したいカラー」で最も人気だった黒色を採用。「初めて生理用ショーツ型ナプキンを使用する方にも取り入れやすいスタイリッシュなデザイン」を目指した。
色を黒にすると決めたものの、開発には難しさもあったという。ショーツ型ナプキンに使用している不織布は色をつけると硬くなる性質がある。担当者は「やわらかい履き心地を実現するために、素材選定にも時間を要しました」と振り返る。
試行錯誤を重ね、見た目と履き心地、機能性が全て揃ったショーツ型ナプキンを目指した。
「オムツっぽくない」「黒でかっこいい」と好評に
発売すると、SNSなどで「黒は新鮮」「黒でかっこいい」「ショーツ型なら安心して眠れる。しかも黒だからより安心」との声が寄せられた。
発売4カ月で累計100万枚を出荷し、1年で400万枚を突破するなど好調だ。デザインや機能性についても「オムツっぽくない」「伸縮性があって窮屈に感じない」と好評となっている。
大王製紙は11月には、「#ブラックショーツ革命」をテーマに掲げたプロジェクト「elis BLACK REVOLUTION PROJECT」を実施。ブラックカラーを前面に打ち出したキャンペーンを展開した。
生理用品は「白色」という決まり。ショーツ箇所で変化球色も
私たちが普段目にする生理用ナプキンなどが「白色」なのには、実は理由がある。
医薬品医療機器法(薬機法)や厚生労働省が定める「生理処理用品製造販売承認基準」では、生理用ナプキンは「白色」であるべきと定義されている。
そのため、エリスショーツを含む色付きのショーツ型ナプキンも、経血吸収部分は白色になっている。
経血吸収部分以外は白色でなくても承認を得た成分であれば着色が可能であるため、「変化球」のカラーバリエーションが販売されているのだ。
大王製紙によると、経血吸収部分の白色が黒色のショーツ部分から目立って見えないよう、開発段階では工夫を重ねたという。
経血の色や量、状態は健康状態を表すこともあり、経血の色が目立つ白色のナプキン上で確認することも大切だ。
運動中、ユニフォームへの漏れの心配も。ショーツ型でサポート
アスリートや、スポーツ系の部活をする学生たちは、生理中に白や薄い色のユニフォームを着用する際、それらに経血が漏れる不安に悩まされてきた。
柔道や空手の道着も白色が多い。
アメリカの女子プロサッカーチーム「オーランド・プライド」では2023年、そのような心配を軽減するために、ユニフォームの短パンを白色から黒色に変更していた。
テニスの4大大会のひとつ「ウィンブルドン選手権」でも、白い服装の着用を求めるドレスコードを2023年大会から緩和。希望すれば濃い色のアンダーショーツを選ぶことができるようになるなど改善の動きが出ていた。
プロチームや世界大会も対策を講じるほど、運動中の生理はアスリートたちの不安の種になっていたのだ。
ショーツ型のナプキンでは、運動中のナプキンのズレや漏れなども防ぐことができ、ユニフォーム着用時を含む、生理中の運動への不安を軽減することに期待が寄せられている。
(取材・文=冨田すみれ子)
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
生理用ショーツ型ナプキン、異例の“黒色”採用で「オムツっぽい」→「かっこいい」に。1年で出荷400万枚突破の大人気。開発の背景は