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「趣味が仕事に繋がれば」という邪念は捨てた。ロッチ・コカドさんの「生きるのがちょっと楽になった」ミシンの話【インタビュー】

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コカドケンタロウさんコカドケンタロウさん

【あわせて読みたい】ロッチ・コカドさんが43歳で出会った「ミシン」。大量生産で綺麗なものより「不完全さ」が自分らしい

43歳でミシンにハマった、お笑いコンビ「ロッチ」のコカドケンタロウさん。

ミシンや刺繍の様子をSNSに投稿して話題になり、初のミシン本「コカドとミシン」(ワニブックス)を出版したが、実は最初は「趣味は自分から探すものではない」と考えていたという。しかし40歳になる時に「もっと人生を豊かに楽しみたい」と、趣味を探し始めた。

ギターやゴルフなどもやってきたが、ミシンは初めて触った瞬間に「これや!」と閃きを感じた。

それからおよそ3年。コカドさんにとってミシンは、人の目を気にせず、100%の純度で夢中になれるもの。「何をしてる時が幸せか真剣に考えた」という趣味探しの旅や、仕事との距離感について、インタビューで詳しく聞いた。

「今までは仕事に全エネルギーが偏っていた」

ーーミシンを始める前に趣味としてやっていたことは、どこかで仕事に繋がればいいなと思ったり、他の人にどう思われるのか気にしたりしていて、それは「邪念」だったと本で書かれていたのが印象的でした。

趣味で始めたゴルフや料理をレギュラー番組でもやらせてもらったり、実際に仕事に繋がっていたんですよ。だから、じゃあ今後は仕事でこうするためにこれを趣味で始めよう…と知らず知らずのうちに邪(よこしま)な考えが出てきてしまって。でも、それだと趣味に100%没入して夢中になれなくて、何%か仕事のことを考えてしまうようになっていたんですよね

コカドさんがミシンで作ったサコッシュやミニ財布。アイデアのベースは、学生時代から好きなアメリカ古着だというコカドさんがミシンで作ったサコッシュやミニ財布。アイデアのベースは、学生時代から好きなアメリカ古着だという

ーーたしかに、何かを新しく始めようとする時に、仕事に役立つかどうかで判断してしまうことは多いかもしれません。

僕は40歳から趣味探しを始めたんですけど、30代までは仕事以外に熱中できるものがなかったんです。学生時代はお笑いが趣味で、それを仕事にしたから、他に趣味と言えるようなものがなくて。

僕たちは芸人として世に出るまで十何年かかって、その間はバイトを続けていました。最初はバイトしながらでもお笑いができればいいと思っていたんですけど、ある日バイト雑誌を見ていたら、募集条件がほとんど30歳までだと気づきました。

それで30歳くらいからお笑いで食べていけるようになって、仕事はずっと楽しくやっていますけど、やっぱりどこかで、お金や生活のこと、人からの評価について考えないと駄目じゃないですか。特にお笑いは、人から面白いと思ってもらうことが仕事なので。それは別に悪いことではないとは思うんですけど、そうではないもう一つの人生の軸として、人の目や評価を気にせず夢中になれる趣味がほしかったんです

今までは仕事に全エネルギーが偏っていたけど、100%夢中になれるミシンがあるおかげでうまくバランスが取れるようになりました。相乗効果で仕事も前より調子良く、楽しくできてる感じがしますね。

「何のためにやってるの?」と聞かれて

ーー今、結果的にミシン本の出版や連載などお仕事にも繋がっていますが、葛藤があったりはするんですか?

初めは仕事になってミシンが今より好きじゃなくなったら嫌だなと思ってたけど、本も連載も、趣味としてのミシンの延長線上にあるものなんです。ロッチの単独ライブでも、ミシンで何か作りながらトークをしているので、何が趣味で何が仕事か、もう分からなくなってきてるかもしれません。

「LOTTI」のハンコを押し、持ち手をつけたジップバッグ。防水で便利だとSNSでも話題に。人にプレゼントを渡す時などにも使っているそう「LOTTI」のハンコを押し、持ち手をつけたジップバッグ。防水で便利だとSNSでも話題に。人にプレゼントを渡す時などにも使っているそう

僕、(THE BLUE HEARTS、ザ・クロマニヨンズの)甲本ヒロトさんと真島昌利さんが大好きで、昔ラジオで共演させてもらった時、ヒロトさんに「ロックが趣味であり仕事だと思うんですけど、どう切り替えてるんですか?」って聞いたんです。そしたらヒロトさんが「切り替えないよ。趣味をもっと踏み込んで、激しく遊んだらそれが仕事になるんだよ。それを続けてるだけ」と言ってたんですよ。その時はよく分からなかったけど、今やっと少しわかるようになりましたね

ーーミシンをやっていると話した時、周りの反応はどういうものでしたか? 

芸人やし男性やし、っていうので周りには色々言われましたね。何のためにやってるの?どうなりたいの?とか。芸人はお笑いのキャラや武器として何かやり始める人も多いんですけど、ミシンとお笑いは繋がらないじゃないですか。「ミシン芸人」とかいないですし。

でも、僕はただただミシンが好きでやっているだけで、目的とか「どうなりたい」とかはなくて、それで良くない?って思ってましたし、伝えてましたね。ただ、洋服を作り始めた頃から、何のため?とは言われなくなって、逆に興味を持ってくれて「今なに作ってるの?」と聞かれることも増えましたね。

「何をしてる時が幸せか真剣に考えた」

趣味を見つけるため、これまでの人生を振り返り「何をしてる時が幸せだったかを真剣に考えた」と明かすコカドさん趣味を見つけるため、これまでの人生を振り返り「何をしてる時が幸せだったかを真剣に考えた」と明かすコカドさん

ーー趣味を見つけたり、長く楽しんだりするためのコツは何だと思いますか?

僕の場合は、年始にチャレンジするものを決めて、1年間は続けるけど、それほど楽しくなかったら辞めて、次の夢中になれることを探すと決めていました。無理に続けようとしない。そもそも、人生に必ず趣味が必要なわけじゃないですし、長く続けるのが正しいってわけでもないですからね。

最初は趣味は探すものじゃない、気づいたらハマっているものだと思ってたんですよね。でも、待ってても趣味のほうからはやってきてくれなかったから、本気で探しました。子どもの頃から自分は何をしてる時が幸せだったかを真剣に考えた(笑)。小学生が公園で野球しながら、仕事に繋がればとかお金のこととか一切考えないじゃないですか。そういう感じがほしかったんです。

それで、昔から古着や洋服、何かを作ることが好きだったと気づいて、その周辺にあるものを考えた時にミシンが見つかりました。ミシンはどこまで突き詰めても一人でできるし、時間や場所の制限もほぼないので、ずっと続けられているんだと思います。

自作のシャツと帆布トートバッグ。普段から愛用している自作のシャツと帆布トートバッグ。普段から愛用している

ーー何かに100%で夢中になることは、コカドさんにとってどんな良い影響がありましたか?

1日の充実度が格段に違うのと、あとは変に遠い先のことを考えて不安になることがなくなりました。コロナの時みたいに、もし周りに誰もいなくても、仕事がなくなっても、家で一人でいても、これをやれば楽しいと思えることに出会えた。生地を買ってミシンを踏んで、自分で気に入るものを作ったり、人にあげたりすることが自分にとっての今のところの最大の楽しみだとわかったから、ミシンをやっとけば僕は幸せなんやろし、それで生きるのがちょっと楽になったというか

最初はミシンをここまで好きになるとは自分でも想像できていませんでした。だから、また新たに想像もしていなかったことを始めて今より広がっていくかもとも思うようになりましたし、それはそれで楽しみですね。

(取材・文=若田悠希、撮影=川しまゆうこ)

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「趣味が仕事に繋がれば」という邪念は捨てた。ロッチ・コカドさんの「生きるのがちょっと楽になった」ミシンの話【インタビュー】

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