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退職や育休・産休などで欠員が発生した際、約8割の組織で人員の補充が「なかった・できなかった」ことが分かった。
シンクタンク「パーソル総合研究所」(東京都)が11月27日、「オフボーディング(欠員発生時の組織的取組)に関する定量調査」の結果を発表した。
欠員発生後の組織では、後任・上司ともに残業時間が増え、バーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクが高まる傾向にあったという。
ハフポスト日本版のキャンペーン報道「ネットスラング『子持ち様』」でも、子育て社員が子どもの体調不良で早退したり、休んだりした場合、企業側が対策を取らなければフォローする同僚社員も一定数が高ストレスを抱えることが分かっている。
「欠員が発生しても補充がなかった」
調査は2月16〜20日、インターネット上で実施。
従業員規模10人以上の会社に勤務する正社員3万7244人(20〜59歳)を対象にしたスクリーニング調査に加え、①「半年以内に退職・3カ月以上の中長期休」を取得した前任者②前任者の業務を引き継いだ後任者③そのような部下がいた上司の各1350人に本調査を行った。
退職や育休・産休などで欠員が発生した際、業務を引き継いで後の成果に繋げる「オフボーディング」の重要性が高まっている中、実際は組織内で何が起こっているのか調べる目的で実施したという。
その結果、上司のうち77.0%が「欠員が発生しても補充がなかった・できなかった」と回答した。内訳は、「なかった・しなかった」が最多の47.4%、「募集しているが、できていない」が29.6%だった。
続いて、「離脱前に新たに人員を採用した・社内異動で充足した」が10.1%、「離脱直後に新たに人員を採用した ・社内異動で充足した」が6.5%、「離脱から1カ月以上経過した後に新たに人員を採用した・社内異動で充足した」が6.3%だった。
次に、「欠員発生後のリスク・トラブルの状況」を聞くと、後任のうち40.0%が「他にも退職する人がいそうだ」と回答した。
「必要な情報や資料が見当たらなかった」が33.7%、「チームから離れた前任者が以前引き受けた業務が引き継がれていなかった」が32.8%などと続いた。
自由記述欄では、「退職者が出て仕事量が多くなっているのに、さらなる退職者が出た」「相次いで退職したのに人が補充されることはなく、新たな業務も加えられた」「担当者しかわからないことがあり大変だった」といった声が寄せられたという。
欠員を現場レベルで解決⇨「子持ち様」問題に発展
さらに、「欠員発生時の残業時間や精神的状態への影響」を見ると、後任と上司に共通することとして、残業時間が長く、バーンアウト傾向が高いことが分かった。また、後任の退職意向が高くなっていることも判明した。
後任の正社員(2347人)では、欠員がない場合の月間残業時間は16.6時間だったが、「半年以内に欠員あり」の場合は21.0時間と、4.4時間増えた。
上司(1877人)も同様の傾向にあり、欠員ありの場合は24.1時間と、なしに比べて2.0時間増えた。
バーンアウトと退職意向も、欠員ありの場合はなしに比べて増える傾向にあり、後任はそれぞれ0.2ポイント増加、上司はバーンアウトが0.2ポイント、退職意向が0.1ポイントそれぞれ増えた。
ハフポスト日本版のキャンペーン報道「ネットスラング『子持ち様』」でも、子どもの体調不良で子育て社員が早退したり、休んだりした場合、本人だけでなく、その分の業務をフォローする同僚社員も約4割が高ストレスと判定されたことが分かっている。
そもそも育休による欠員の場合、その間は育休取得者の人件費が浮くことから、有識者はハフポストの取材に「人員補充について会社の考えを示し、実行していくことが求められる」と指摘していた。
一方、今回の調査では、「欠員発生の際に業務の割り振りを指示していない上司」は22.4%と、約5人に1人は指示を出していないことも判明した。
欠員により発生した業務の皺寄せを現場レベルで解決させようとすると、「子持ち様」問題に発展してしまうのは、これまでハフポストが報じてきた通りだ。
だが、指示を出していたとしても、最も多かったのは「類似業務の担当者に引き継がせる『横滑り』」(48.3%)で、約半数は同僚に負荷がかかる形が取られていた。
このほか、退職・中長期休の取得の際に業務の引き継ぎを行っている前任者は77.6%にとどまったほか、業務を引き継ぐ後任者の47.1%が引き継ぎ時間に不足感を覚えていることも示された。
日常的な組織文化の見直しの重要性
今回の調査結果を受け、パーソル総合研究所の今井昭仁研究員は、「『現場でうまくやっておいてほしい』と欠員の発生や引き継ぎから目を背ける管理職。『立つ鳥跡を濁さず』の理想を理解しつつも慌ただしく立ち去る退職者。『別れを惜しみつつも『今の仕事で手一杯』の同僚。オフボーディングにおいてはそれぞれが後ろ向きになりやすい」と見解を示した。
欠員発生後の補充がないことで、後任・上司の残業時間が長くなったり、バーンアウトリスクが高くなったりしていることから、「個別対応だけでなく、日常的な組織文化の見直しの重要性も確認されている」と指摘。
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退職や産休・育休で欠員⇨約8割の組織が「人員補充」なし。業務の「横滑り」…日常的な組織文化の見直しを