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法人向けにD&Iの推進サポートに取り組むアカルクが、LGBTQ+当事者も働きやすい職場づくりに向けたeラーニング教材「学んで終わらない!LGBTQ+ e-Learning」の一部を、企業向けに1週間無料で視聴できるキャンペーンを展開している。10月31日まで。
無料公開するのは、相談窓口やDE&I、カミングアウトとアウティングなどをテーマにした5本で、利用者はそのうち1本を選べる。
教材はなぜ生まれたのか。またLGBTQ+当事者の人権課題に関心が高まる中、企業の取り組みはどう変化してきたのか。アカルク代表の堀川歩さんに聞いた。
見えてきたのは、「企業の制度設計に関する悩みの具体化」という、前進しているとも言える実情だった。
◆性的マイノリティも働きやすい職場を作るきっかけに
アカルクは、LGBTQ+に関する基礎知識や人事制度、顧客対応などに関する全15本の動画コンテンツを展開している(1本あたり15〜20分)。
今回のキャンペーンは、自分の性的指向や性自認をカミングアウトする勇気をたたえ、自分らしく生きたいと願う人々を応援する「国際カミングアウトデー」(10月11日)に合わせて実施。
各企業3人まで、新しく作った相談窓口対応者編、DE&I 基礎編と、アップデートをした基本知識編、カミングアウトとアウティング編、管理職編の計5本のうち1本を無料で視聴できる。
アカルクや「学んで終わらない!LGBTQ+ e-Learning」は、なぜ生まれたのか。
根底には、トランスジェンダー男性である代表の堀川さんが、働く上で数多くの生きづらさを感じてきた原体験がある。
例えば戸籍上の性別変更をする以前は、性自認は男性だったが、戸籍上女性だったため、リクルートスーツや履歴書、お手洗いや面接での座り方など、就職活動の準備の時点で、多くの困りごとに直面した。
また、高校時代に転機となる人と出会ったことをきっかけに、「地雷撤去をしたい」と自衛隊に就職。だが性同一性障害の診断書を提出すると、条件付き採用に切り替わり、結局、関わることはできなかった。
こうした体験から、自分と同じように悩むLGBTQ当事者の支えになりたいと考えた堀川さん。ユニバーサルデザインのコンサルティング企業に入社し、LGBTQ+に関する企業向けの研修などを担当した。
その中で各企業の担当者から、社内の取り組みをどう進めていけば良いのかといった悩みや相談を聞くことが多くなった。そうした声に向き合った問題解決をし、性的マイノリティも働きやすい職場を作るきっかけになればといった思いを抱き、アカルクを運営している。
◆具体化するLGBTQ+に関する取り組みや悩み
アカルクが現在メインで展開している事業の1つが、今回一部を無料公開するeラーニング教材「学んで終わらない!LGBTQ+ e-Learning」だ。
中でもよく見られているのは、LGBTQ+に関する基礎知識や、カミングアウトとアウティングに関するコンテンツ。人事担当者編、採用担当者編、中でも相談窓口対応者編は特に需要が高いという。
講師が各企業などに出向く従来の形だけでなく、eラーニングの形も取り入れたのは、新型コロナウイルス禍がきっかけだった。社員が自分のタイミングで学べたり、転職者や新入社員も入社後すぐに視聴できたりと、メリットも多く需要が大きかった。
学ぶだけでなく、受講後に理解度を確認するチェックシートや意識調査、匿名で相談ができる無料相談窓口などの機能もついている。企業の担当者が、社内の取り組みへ役立てる仕組みを作っているほか、担当者へのアドバイスも行っている。
堀川さんは、10年以上LGBTQ+に関する研修や講演などに関わる中で、企業からの要望の内容も少しずつ変わってきたと感じているという。
例えば当初は、LGBTQ+をはじめとする用語説明など、基礎的な内容を望む声が多かった。だが近年はそれに加えて、相談窓口をもっと多くの人に利用してもらえるように改善したい、トイレや更衣室はどのように整備すれば良いのかなど、各企業が感じる課題がより多様化しているという。
堀川さんは、「同性パートナーにも男女の結婚と同様に福利厚生を使えるようにしたいなど、具体的な相談が増えてきました。こういった社会の動きは嬉しいですし、それをサポートしていきたいと強く思います」と話し、時代に合わせたコンテンツのアップデートにも力をいれる。
また近年はブライダル企業などをはじめ、同性同士のカップルを対象にした事業の相談も増えており、事業設計に関する助言などの仕事も増えているという。
アカルクに勤めるゲイの社員の横田さん(仮名)は、こうした社内外に向けた企業の動きについて、「より広がってもらえたら嬉しい」と話す。
横田さんはこれまで勤めてきた企業で「彼女はいるのか」「なんで結婚しないの?」といった異性愛前提の質問をされ、同性パートナーを友人に置き換えるなど、嘘をつき続けてきた。
20年以上にわたる社会人生活を振り返り、これから先も嘘をつき続けないといけないのかと思うとしんどいと感じ、自分のことを正直に話し、大切にしたいと考え、アカルクに転職した。
横田さんが望むのは、「自分たちと同じような思いを、下の世代にさせない」という未来。
eラーニングを通して、正しい知識を知ったり、自身の言動や行動を考えたりするきっかけが広がり、あらゆる職場でLGBTQ当事者が働きやすくなることを願っている。
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オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
LGBTQ+への企業の取り組みの現在地点とは。働きやすい職場づくり目指すeラーニングができるまで