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「私の名前は抹殺されていった」選択的夫婦別姓訴訟、3回ペーパー離婚をした原告が語った姓を失う痛み

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「結婚した時に、姓を同じにするか別にするか選べるようにしてほしい」として複数の夫婦が国を訴えている選択的夫婦別姓訴訟は6月27日、東京地裁(品田幸男裁判長)で第1回口頭弁論が開かれた。

この訴訟は札幌と東京で提起され、合計6組12人の夫婦が原告となっている。

27日の口頭弁論では、東京訴訟原告10人のうち3組6人が意見陳述をして、改姓で名前を失うことで生じる痛みなどを語った。

裁判所の前で記者団の質問に答える原告ら裁判所の前で記者団の質問に答える原告ら

 「私の名前は社会的にじわじわと抹殺されていった」

現在事実婚の内山由香里さんと夫の小池幸夫さんは、33年の間に3回の結婚とペーパー離婚を繰り返した。その間25年以上、内山さんは自分の名字を「通称」として使用してきた。

内山さんは「内山由香里」という名前を幼い頃から大切に感じ、「私そのもの」という感覚を抱いていたという。

しかし1991年に同じ職場の小池さんとの結婚が決まると、同僚から「結婚おめでとう、小池さんになるんだね。仕事どうするの?」と声をかけられ、衝撃を受けた。

夫の小池さんが同じ質問をされることはなく、内山さんは「大きな違和感とやり場のない怒りを覚えた」と意見陳述で語った。

「私だけ姓を変えるのは不公平」「結婚して違う人間にならなければいけないのはおかしい」と感じた内山さんは、小池さんと話し合い、夫の姓で婚姻届を出して職場などでは旧姓を通称として使い続けることで妥協した。

しかし、職場で通称を使えても、給与明細や健康保険証はすぐに戸籍の姓に変更され、銀行口座を名義変更しなければ給与は振り込まれなくなった。

運転免許書、パスポート、クレジットカード、保険……自分の名前が次々に消え、内山さんは「結婚しても別姓で通すはずが、私の名前は社会的にじわじわと抹殺されていった」と振り返った。

内山という名字を使うことに対して「わがまま」という誹謗中傷を受けたこともあるという。

「でも、多くの男性は姓を変えなくてもわがままだと言われることはありません。これが男女差別ではなく、何だというのでしょうか」

(左から)内山由香里さんと小池幸夫さん(左から)内山由香里さんと小池幸夫さん

夫婦同氏制度は「違憲」で「条約違反」と主張

現在の法律では、結婚した時にいずれか一方が必ず姓を変えなければならない。それぞれが姓を維持したければ、法律婚を諦めざるをえない。

また、姓を変えるのは圧倒的に女性で、全体の約95%を占める。

原告らはこの訴訟で、姓を同じか別にするかを選べない現状は憲法や条約に違反すると主張している。

<原告が主張する違憲や違反>

・「氏名に関する人格的利益」を保障する憲法13条
・「婚姻について自律的な意思決定」を保障する憲法24条1項
・「
個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した法律を作るよう」要請している憲法24条2項目
・「結婚時に姓の選択をできる権利」を保障している女性差別撤廃条約や自由権規約

選択的夫婦別姓は、最高裁で2015年2021年に「合憲」と判断された。一方で判決は「姓の変更でさまざまな不利益を被っている人々がおり、実質的に男女不平等な状況が続いている」として、国会に解決を委ねた。

しかし、その後も国会での法改正の動きは見られず、原告は「国会には期待できない」として、第三次訴訟を提起した。

夫婦が同じ姓しか選べない現状について、原告弁護団の寺原真希子弁護士は「氏名や婚姻に関する権利・平等・個人の尊厳という基本的な人権が侵害されている人権問題だ」と意見陳述で主張。

裁判所に対し「この人権侵害を食い止めるための役割を果たしてほしい」と訴えた。

一方、国側は争う姿勢を見せている。

内山さんと小池さんは法律婚していないことで、病気や入院した時に不利益を被らないかという心配も抱えている。内山さんは「選択的夫婦別姓が実現したら、一刻も早く法律婚をしたい」と語った。

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