Appleは11月16日、RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)メッセージング標準をiPhoneに採用すると発表しました。この機能は「来年後半」のソフトウェア・アップデートによって開始される見込みです。
一方Appleは、Googleなどによる再三の説得にも関わらず、RCSの導入を拒否してきました。なぜAppleは突然、RCSの導入を決めたのでしょうか?これについて、テックメディア「9to5Mac」が背景を解説しています。
*Category:テクノロジー Technology *Source:9to5Mac ,The Verge ,WSJ ,Recode
AppleがiPhoneの「RCS対応」を決めたワケ
Appleの広報担当者はテックメディア「9to5Mac」に寄せた声明の中で、RCSがクロスプラットフォームメッセージの相互運用性を高めると考えていると述べました。
Later next year, we will be adding support for RCS Universal Profile, the standard as currently published by the GSM Association. We believe RCS Universal Profile will offer a better interoperability experience when compared to SMS or MMS. This will work alongside iMessage, which will continue to be the best and most secure messaging experience for Apple users.
— 引用:9to5Mac
訳:来年後半には、GSM協会が現在発表している標準であるRCSユニバーサル・プロファイルのサポートを追加する予定です。RCSユニバーサル・プロファイルは、SMSやMMSと比較して、より優れた相互運用性を提供すると確信しています。これはiMessageとともに機能し、Appleのユーザーにとって最高かつ最も安全なメッセージング・エクスペリエンスであり続けるでしょう。
RCSへの対応は、iPhoneとAndroidデバイス間のメッセージ交換で、iMessageのような多くの機能をもたらすものです。これには、既読受信、タイピングインジケーター、高画質の画像や動画などが含まれます。
AppleがRCSを導入することで、ユーザーはテキストスレッド内で他のユーザーと位置情報を共有することもできるようになるとのこと。通常のSMSとは異なり、RCSはモバイルデータやWi-Fi経由でも機能します。
しかしこれは、iMessageがAndroidユーザーにも解放されるというわけではありません。
This is not Apple opening up iMessage to other platforms. Instead, it’s the company adopting RCS separately from iMessage.
— 引用:9to5Mac
訳:これは、AppleがiMessageを他のプラットフォームに開放するということではない。むしろ、AppleはiMessageとは別にRCSを採用したのだ。
RCSはSMSとMMSに取って代わるだけで、利用可能な場合はiMessageとは別に存在するとのこと。またAppleは、SMSとMMSについて、必要なときに予備として引き続き利用できると述べています。
iMessageは、米国では若い世代を中心に非常にメジャーなメッセージアプリで、「チャットのやりとりでiPhoneのiMessageを使っていないと仲間外れにされる」という報道も以前にありました(WSJ)。
これに対しGoogleやサムスンなどの企業は、マーケティングキャンペーンを実施し、AppleにRCSをサポートするよう求めてきました。今月初めにも、Googleは欧州委員会に書簡を送り、iMessageをDMAのコア・プラットフォーム・サービスとみなすべきだと主張しています。
一方、AppleはRCSについて「iMessageほど強力な暗号化をサポートしていない」と主張しており、これまではRCS対応を拒んでいました。iMessageはエンド・ツー・エンドで暗号化され、アップデートによってそのセキュリティが継続的に強化されています。CNBCが開催したイベント「Code 2022」では、「Android携帯を使っている母親に(iMessageで)動画を送れない」というiPhoneユーザーに対し、Appleのティム・クックCEOは「あなたのお母さんにiPhoneを買ってあげなさい」と提案していたほどです。
今回の方針転換は、欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)に対する規制圧力への対応と見られています。これは、Appleのような大手企業に対し、自社のサービスを他のプラットフォームと相互運用可能にするよう求める規則です。欧州委員会は9月、iMessageを「コア・プラットフォーム・サービス」とみなすべきかどうかを判断するため、調査を開始しました。Appleは、iMessageは欧州では規則が適用されるほど普及していないと主張し、政府によるApp Storeへの規制に対して上訴する予定だと報じられています。
Googleのプラットフォーム&エコシステム担当SVPのロックハイマー・ヒロシ氏は、今回の件について、X(旧Twitter)で次のように述べています。
Everybody should have secure and modern messaging without worrying what kind of phone they’re texting to. So glad to see Apple joining our ongoing work with the GSMA on RCS to make texting better for all!
— 引用:@lockheimer
訳:誰もが、どんなスマートフォンにテキストを送るかを心配することなく、安全で最新のメッセージングを利用できるべきです。すべての人にとってより良いメールにするために、アップルがGSMAとのRCSに関する継続的な取り組みに参加してくれることをとても嬉しく思います!
一方、iMessage上でiPhoneユーザー同士のやり取りが「青い吹き出し」で表示されるのに対し、Androidユーザーは「緑色の吹き出し」で表示される点については、変更されるのかは不明です。「9to5Mac」はこれについて「おそらく変更されないだろう」と予測しています。
オリジナルサイトで読む : AppBank
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