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神宮外苑の再開発に「ゴーサインは出せない」と審議会委員。それでも事業は進められるのか

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「このままではゴーサインは出せない」

明治神宮外苑再開発計画の評価書に「虚偽がある」と指摘された問題をめぐり、東京都の環境影響評価審議会の委員から強い懸念が示されている。

三井不動産などの事業者は1月20日に、この再開発計画の環境影響評価(アセスメント)の評価書を提出し、東京都が公示した。

しかしユネスコの諮問機関である日本イコモスは1月29日、評価書では数多くの「虚偽の報告や資料の提出」が行われているとして、その詳細を48ページに渡る文書で説明した。

日本イコモスは「評価書の調査や予測は非科学的だ」として、小池百合子東京都知事による事業者に対する勧告と、環境影響評価審議会の再審を求めている。

ゴーサインを出すことは難しい

1月30日に開かれた環境影響評価審議会では、複数の委員がこの問題を指摘。

千葉大学大学院の池邊このみ教授は「事業者側の言い分もあると思う」とした上で、「環境影響審議会で、虚偽の報告が行われている評価書をそのまま受け取られるということがあれば、都民の信頼を裏切る行為だ」と述べ、修正した評価書の提出を求めた。

さらに、東京藝術大学非常勤講師の水本和美委員は「虚偽という言葉が出ていることは、真摯に受け止めねばならない」と懸念を表明。

審議会会長で明治大学名誉教授の柳憲一郎氏も「現段階で虚偽という指摘がされているので審議会としてゴーサインを出すことは難しい」と苦言を呈した。

問われる都知事の対応

一方、事業者は「特に間違った内容や不備があるとは考えていない」と回答したが、審議会では評価書に虚偽はないという具体的な立証はなかった。

さらに事業者は着工届を提出した後、本格的な工事に向けた準備として、仮囲いの設置作業など準備作業を始めている。環境影響評価審議会で「ゴーサインを出すのが難しい」と言われている状態で、事業者が計画を進めることに問題はないのか。

環境アセスメントの専門家である千葉商科大学の原科幸彦学長は「都の対応が問われている」と述べる。

原科氏が挙げるのが、東京都の環境影響評価条例第91条だ。

91条には、「事業者が虚偽の報告もしくは資料の提出をした場合、知事は事業者に対し、必要な措置を講ずるよう勧告することができる」と書かれている。

原科氏は「知事が必要な措置を講ずるよう勧告することができる、とされているので、ここは知事の判断次第です。小池知事がどうするかの判断が問われています」と話す。

東京都の中心地でありながら豊かな自然が残る神宮外苑。「都会のオアシス」となってきた東京都の中心地でありながら豊かな自然が残る神宮外苑。「都会のオアシス」となってきた

都営住宅への騒音について

審議会では、神宮球場の建て替えで、都営住宅の騒音レベルが悪化する問題も取り上げられた。

原科氏によると、今回の評価書の公示で、神宮球場のスタンド面高さでの都営住宅の騒音は、現状で環境基準の55デシベルを超える58デシベルであることがわかった。

神宮球場を移設すると、外苑の東側にある都営住宅との距離が半減し、その結果騒音の問題がさらに深刻になるという。

「今は160メートル離れていますが、新球場をイチョウ並木直近に移設した場合、距離が80メートルに半減します。その結果、騒音レベルはさらに4デシベルも上がり、62デシベルに。これではアウトです(環境基準は昼間55デシベル以下、夜間45デシベル以下)」

原科氏によると、環境アセスメントでは、近隣の住民に悪い影響を与えないための「現状非悪化原則(現状より環境を悪化させない)」というものがある。

現状で騒音レベルが環境基準より低い場合は、環境基準まで上ることは許容される。しかし環境基準を満たしていない場合、通常さらなる悪化は認められない。

「状況により誤差の範囲程度の悪化は認められる場合がありますが、それには事業の公益性が高くなければいけないという条件があります。さらに、当面は基準を僅かに超過したとしても、近い将来に改善策が講じられることが必要になります」

「神宮球場の移設に公益性はありませんから、移設は許されないと考えるのが自然だと思います」

池邊教授も、騒音レベルが上がることについて「アセスではありえないことであり、公害基準が環境基準を圧迫する時は、まずいという判断がなされるべき」と審議会で述べた。

都営住宅の騒音はすでに改善が必要な状態であり、原科氏は、この騒音問題について住民が声を上げることができるとも話す。

「都営住宅の騒音は、すでに改善が必要な状態です。それがさらに悪化するわけなので、住民が被害を訴えれば提訴できるレベルの問題です」

明治神宮外苑では、工事に向けた仮囲いが始まっている明治神宮外苑では、工事に向けた仮囲いが始まっている

審議会の委員は「助言」しかできないのか

審議会では、事務局である東京都の担当者が、委員の指摘や要請を「助言」と述べる場面が多々見られた。

委員の指摘は「助言」に過ぎず、計画に反映することはできないのか。

原科氏は、東京都の環境影響評価条例では、「知事は、審議会の意見を聴いて」となっており、審議会委員の要求は「単なる助言ではない」と指摘する。

さらに審議会の運営方法について「事業者から情報を得た場合、事業者を外し、審議会の委員だけで議論をすることが重要だ」とも述べた。

「事業者主導ではなく、あくまでも審議会が主導であり、その意見を知事が聴いて指示を出す。そうすることで、環境アセスメントは効力を発揮します。そのためには、十分な情報公開が必要です」

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神宮外苑の再開発に「ゴーサインは出せない」と審議会委員。それでも事業は進められるのか

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