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「デモの価値おとしめた」NHK五輪番組で虚偽の字幕、BPOが厳しく批判「重大な放送倫理違反があった」

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2021年12月に放送されたNHK BS1スペシャル『河瀬直美が見つめた東京五輪』で、五輪反対デモの参加者の男性が金銭で動員されたとする、事実ではない字幕が付けられた問題。放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は9月9日、「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を発表した

委員会は、「放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値を貶めた」などの問題が発生したとし、NHKを厳しく批判した。

「すり替えた」編集で「デモをおとしめた」

番組は、東京五輪公式記録映画総監督の河瀬直美さんとその制作チームに密着した、NHK大阪放送局制作のドキュメンタリー。

男性を取材した場面で、「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。

放送後、SNSなどで字幕の不自然さを指摘する声や真偽を問う声が多数あがり、2022年2月にNHKは、誤った字幕で放送したことを認めていた

BPOの意見書によると、男性はインタビュー時に「労働組合のいろいろなデモに行っている」「お金をもらえるが飯代ぐらい」などと答え、「五輪反対デモには行かないし行きたくない」と否定していた。しかし番組では「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕と男性の映像が使われた。過去に参加したデモについても、金銭のやり取りについて確証は得られていなかったという。

委員会は意見書の中で、制作時の「基本を欠いた取材」を批判し、男性の別のデモに関する発言を、五輪反対デモに関するものであるかのように「すり替えた」編集をしたことで、「五輪反対デモ、さらにはそれ以外のデモ全般までもおとしめるような内容を伝えてしまってしまった」と言及した。

さらに、放送前に番組の試写が6回行われていながらも「取材・編集過程のチェック機能として働かなかった」とも指摘。その理由として、▽デモや広い意味での社会運動に対する関心の薄さ、▽取材を担当したディレクターが入局20年ほどで実績があり信頼があったため、の2つをあげた。

BPOはこれらのことから、NHKと日本民間放送連盟が策定している「放送倫理基本綱領」や、NHKの放送ガイドラインに反していると認定し、「重大な放送倫理違反があった」と結論づけけている。

NHK「指摘を真摯に受け止める」、河瀬直美さん「公共放送であるという自覚を」

NHK側は同日、BPOからの意見書が通知されたとして、コメントを発表。「取材、編集、試写の各段階に問題があり、デモや広い意味での社会運動に対する関心が薄かったという指摘や、取材相手への配慮や誠意を欠いていたなどという指摘を真摯に受け止めます」とした。

また、同番組で密着取材を受けた河瀬直美さんも9月10日に公式サイトで声明文を発表。NHKに対し、「公共放送であるという自覚と意識を再確認し、大きな影響力があるテレビ放送というものに携わるあらゆる立場の方々が、より真摯に番組制作をして頂くことを、切に願います」とコメントした。

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