新潟県の美術館で展示中の2作品が、修学旅行中の中学生に損壊されるという事件があった。作者の1人、クワクボリョウタさんは6月9日、Twitterで声明を発表した。作品を完全に破壊されたクワクボさんだったが修復可能だと表明した上で、問題の行動を起こした生徒達への心のケアを訴えた。「なんて愛のあるコメントなんだろう」「私もこんな心持ちの大人になりたい」などと反響が広がっている。
■破壊された作品とは?
今回破壊されたことが明らかになったのは、十日町市の「越後妻有里山現代美術館MonET(モネ)」に展示していたクワクボリョウタさんによる「LOST#6」および、カールステン・ニコライさんによる「Wellenwanne LFO(ヴェーレンヴァンネ エル・エフ・オー)」だった。
十日町市役所の6月6日の報道発表によると、4月21日に、新潟市立中学校が修学旅行の一環で美術館を訪れた際に、作品鑑賞した際に作品が損害を受けた。被害届を受けて警察が捜査しているという。朝日新聞デジタルによると、2作品を壊したのは、中学3年の複数の生徒で、「LOST#6」は踏み荒らされて完全に壊れており、「Wellenwanne LFO」は一部が壊されていた。4月29日から始まった「越後妻有 大地の芸術祭 2022」では、「LOST#6」は急きょ非公開とされたという。
美術館公式サイトによると、クワクボさんの手がけた「LOST#6」は、床に置かれた十日町の織物機具の一部や農機具などを、ゆっくりと動く光源が照らすことで、大きく影を投影されるというアート作品だった。
クワクボさんは9日、Twitterに日本語と英語で「作品の破損に関してのコメント」という声明を投稿。「確かに作品は完全に破壊されましたが、物は物です」として「作品を修復する気力も体力もあります」として修復可能だと表明。「物理的な面ではそれほど深刻な状況ではありません」と現状を分析した。
その上で、「それよりも重要なのは、生徒たちが内なる不満や怒りや欲望をさまざまな違った形で表現できるように支えることです」と続けた。「アーティストの力ではどうにもならない。大人や学校、友だちや地域の人たちの協力が必要です」と訴えた。
クワクボさんのコメント全文は以下の通り。
■作品の破損に関してのコメント
まず、このような状況に僕が平気でいられるのは、多くの人が作品を愛してくれている ことを知ったからです。支えてくれている皆さんに感謝しています。
暗い展示室で何が起こったのか、どうして生徒たちがこんなことをするようになったのか、自分はまだすべてを理解しているわけではありません。まだ中学生ですから、これからの発言や対応には注意深くありたいと思っています。考えてみれば、誰でも若いうちはちょっとした失敗をするもので、今回結果だけ見れば一線を越えていたかもしれませんが、それでも誰かに怪我を負わせたわけではありません。確かに作品は完全に破壊されましたが、物は物です。幸いこの作品に使われている素材は(その多くは現地の方に譲っていただいた織り機です)どれも修理や再生が可能なようです。しかも、作者はまだ生きていて作品を修復する気力も体力もあります。だから、物理的な面ではそれほ ど深刻な状況ではありません。
それよりも重要なのは、生徒たちが内なる不満や怒りや欲望をさまざまな違った形で表現できるように支えることです。これはアーティストの力ではどうにもならない。大人や学校、友だちや地域の人たちの協力が必要です。少なくとも自分は、修復を通じて、この事件が彼らや彼らのコミュニティ、そして芸術を愛する人々に悪い爪痕を残さない よう、最善を尽くしたいと思います。良い夏休みを迎えましょう!
2022年6月9日 クワクボリョウタ
すみません。日本語の方に意味不明な表現があったので直しました。こちらをお納めください pic.twitter.com/fmKBZTtahq
— ryota kuwakubo (@RyotaKuwakubo) June 9, 2022
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
破壊された私の作品よりも「重要なこと」がある。クワクボリョウタさんが生徒達の心のケアを訴える【コメント全文】