「鶏肉の使われていない部位を活用した商品ができないだろうか」
ある従業員が加工工場で感じた「もったいない」の思いを出発点に、エスビー食品が開発した、アップサイクル商品の「本鶏だし」が好評を得ている。
だしには、レトルト製品の原料となる鶏肉の加工過程で未活用となっていた部位を使用。同社によると、本鶏だしは発売から7カ月で2万8000パック以上の販売を達成した。
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「本鶏だし」には、ひき肉の加工時に残る親鶏の骨や筋とその周りの肉、鶏がら、丸鶏が使われている。
開発の発端は、エスビー食品開発生産グループの酒田充紀さんが、レトルトカレーの原料となる鶏肉を加工する工場を訪れた際に、使われていない部位が多くあると気づいたことだ。
酒田さんは「まだまだおいしさの残るそれらを活用した商品ができないか」と考え、周りに相談し、開発のプロジェクトをスタートした。
エスビー食品によると、一般的にレトルト食品の製造過程では、家畜や野菜などの素材の一部が廃棄されてしまうという現状があるという。
本鶏だしの開発は、未活用の食材をアップサイクルする事業の第一弾として実施された。
開発過程の紆余曲折について、酒田さんは次のように語っている。
「当社はスパイスとカレーを生業にしていることもあり、『本鶏だし』を作るにあたっては、右も左も分からない状態から始まりました。競合品がたくさんある中で、どうしたら差別化した商品を作れるか、試行錯誤を続けた結果、開発には約5年かかりました」
だしは鶏素材のみで、調味料などの他の材料は一切使用していない。国産鶏の「もみじ」と呼ばれる、コラーゲンなどをたっぷり含む鶏足を組み合わせることで、濃厚な味わいを出すことに成功したという。
発売にあたっては、応援購入サービス「Makuake」で先行販売のクラウドファンディングを実施。
すると想像以上の反響があり、開始2時間で目標金額を達成。最終的な目標達成金額は716%にも上った。
クラファンサイトの応援コメント欄には「『食材がもったいない』からおいしい商品を生み出す行動力に共感しました」「調味料が入っておらず素材の味だけというのがうれしいです」との声が寄せられた。
本鶏だしは、定番の和食だけでなく、パエリアや中華粥、ラーメンなど洋食や中華の調理にも使える。
実際に本鶏だしを使った、和食店「肴菜や藤の」の藤平徹治店主は「本鶏だしは非常に濃厚で、これひとつで味が決まるくらいの完成度」「実際にお店で本鶏だしを使った料理を提供した際、『おだしがおいしいね』とお客さまからの反応がとても良かったんです」と感想を述べている。
アップサイクル事業は本鶏だしが第1弾のため、まだ始まったばかり。
美味しさはもちろんのこと、サステナブルな事業を通じて、持続可能な食の形を模索していく。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
究極の“本鶏だし”は「もったいない」から生まれた。エスビー食品が5年かけた開発のきっかけは、ある社員の「気づき」だった