2024年も残りわずか。世界には、終わりの見えない紛争が続いたまま新たな年を迎える地域が数多くあります。
この記事では、紛争や人道支援をテーマにした映画をご紹介します。もしも自分の住んでいるところで戦争が始まったら、自分はどう生きるのかーー。
映画で擬似体験しながら、争いや平和、そして人道支援について、じっくり考えてみませんか。
Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT、Netflix、WOWOWオンデマンドなど各種サブスクサービスで見られるものを中心にご紹介します。
※配信情報は2024年12月18日時点の最新情報です。
(Amazonプライム・ビデオ、U-NEXTなどで配信中)
<あらすじ>
舞台は1990年代初頭、ソマリアの首都モガディシュ。国連への加盟を目指し、アフリカ諸国へのロビー活動に励んでいた韓国政府と、韓国より20年も早くアフリカ諸国と外交を始め、同じく国連加盟のために奔走していた北朝鮮政府は、互いに妨害工作や情報操作をエスカレートさせていた。そんな中、ソマリアでは内戦が勃発。北朝鮮のリム大使は、それまで相容れることのなかった韓国大使館に助けを求め、ともに脱出を試みる。
<見どころ>
1991年に始まったソマリアの内戦下の実話を元にしたヒューマンドラマです。
序盤では両国の大使がお互いに足を引っ張り合う様子をコミカルに描き、内戦が勃発してからはトーンが一変、緊張感が走ります。一触即発の事態を切り抜けようと、手を取り合うことになった両国の距離を、ある“食べ物”が縮めてくれるシーンは白眉です。
日常的には反目していても、有事の際に、相手を尊重できるか?
そんなことを問いかける社会派作品でありながら、手に汗握るカーアクションシーンもふんだんに盛り込まれています。見る人を選ばないエンターテインメントでもあるところに韓国映画の底力を感じます。
(2024年12月20日よりU-NEXTにて配信開始)
<あらすじ>
第二次世界大戦末期の1945年4月、デンマークの市民大学の学長ヤコブは、現地のドイツ軍司令官から、ドイツから押し寄せてくる難民の受け入れを命じられる。ドイツは敗色が濃厚になっていたものの、当時ナチス・ドイツの占領下にあったデンマークで、ヤコブに受け入れを拒否する選択肢はなかった。子どもを含む難民の多くが飢餓とジフテリアの蔓延で命を落とすのを見かねたヤコブは、家族とともに難民を救う行動に出るが、それは、同胞からは裏切り者と扱われかねない行為だった…。
<見どころ>
第2次世界大戦下の史実にインスパイアされた作品が数々ある中で、当時デンマークが置かれていたこの状況は日本ではあまり知られていないかもしれません。
敵国ドイツからの難民を救おうとすれば売国奴と罵られるけれど、今にも潰えてしまいそうな命が目の前にある状況。ヤコブや家族が直面する葛藤は思わず「自分だったらどう行動するか」と考えさせられるはず。
ヤコブを糾弾してもよいと自分たちの態度を正当化した大人の価値観は少しずつ子どもたちにも刷り込まれ、それが波紋を呼んでいきます。正義や高潔という理想に犠牲が伴う場合、どうすることが最善なのか。ラストシーンまで消化できないもどかしさに駆られます。
(現在、配信配信されているサービスはなし)
<あらすじ>
1938年、第2次世界大戦の直前、チェコ・プラハでは、ナチスから逃れてきた大勢のユダヤ人難民が住居も食糧も十分もない生活を送っていた。胸を痛めていたのは、ごく普通の若者で株式仲買人のニコラス・ウィントン。彼は、ナチスの侵攻が迫る中、子どもたちをイギリスに避難させようと、同志たちと共に、里親探しと資金集めに奔走する。ユダヤ人強制収容所に送られようとしていた669人の子どもたちを列車に乗せることに成功したが、遂に開戦の日が訪れる。ニコラスは救出できなかった子どもたちを想い、その後も自責の念に苦しみ続けていた…。
<見どころ>
大英帝国勲章(MBE)の叙勲者であり、「イギリスのシンドラー」とも呼ばれる人道支援活動家ニコラス・ウィントンの行動を追う本作もまた、極限状態における人間の煩悶を丁寧に描き出した良作です。
民間人として最大限の行いをしたにも関わらず、「もっとできることがあったのでは」と自問するニコラス。『羊たちの沈黙』『ファーザー』でアカデミー賞主演男優賞に2度輝いたレジェンド俳優、アンソニー・ホプキンスが演じる晩年のニコラスが、過去に成し得たこと、また成し得なかったことを表情や佇まいから観客に悟らせる姿はまさに圧巻です。
決して劇的に転びすぎることなく、戦争がもたらす支配関係の虚しさを誠実に捉えています。
(WOWOWオンデマンドで配信中、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXTなどでレンタル配信中)
<あらすじ>
2015年11月、過激派組織「イスラム国(IS)」がパリのコンサートホールやレストラン、カフェを次々と襲撃した同時多発テロ事件により、ジャーナリストのアントワーヌ・レリスは最愛の妻を失ってしまう。悲しみにくれながらも、生後17カ月の息子と生きて行かなくてはいけないアントワーヌは、実行犯へ宛てた”手紙“をFacebookに投稿する。「僕は君たちを憎まないことにした」。テロに打ち勝つ決意表明は、世界中で反響を呼び、アントワーヌは一躍時の人となる。
<見どころ>
「君たちを憎まないことにした」と決意するまでをゴールにするのではなく、決意してからもアントワーヌが直面する悔恨や戸惑い、そして繰り返す日常を淡々と映し出す作品です。
全ての争いの起点である「憎しみ」の連鎖を断ち切ることが、最も勇敢な行為であるとともに、その気持ちを維持することがどれほど困難か思い知らされます。
アントワーヌが私たちと変わらない普通の人だからこそ、複雑で繊細な心の機微が染みわたります。
(U-NEXTで配信中、Amazonプライム・ビデオでレンタル配信中)
<あらすじ>
2018年、アフガニスタンで、部隊を率いる米軍曹長ジョン・キンリーはアフガン人通訳アーメッドを雇いイスラム原理主義組織、タリバンの爆発物製造工場を突き止める。瀕死の重傷を負いながらも無事救出され、帰国することができたキンリーは、自分を助けたためにアーメッドがタリバンから命を狙われていることを知る。キンリーは家族や同僚の助けを借り、全ての危険を冒して戦場に戻ることを決意する。
<見どころ>
あらゆるリスクをかけて、恩人を救い出そうとするアツい友情に心を揺さぶられるとともに、兵士たちのトラウマも必至な過酷な戦場が目に焼き付けられます。
ただし、シンプルな英雄譚と安易に解釈できないのは、2021年に駐留米軍がアフガニスタンから撤退し、一度政権が崩壊したタリバンが復権するという、この映画と地続きの今があるからです。
いまだ終止符が打たれていない現実世界を思うと、戦争には映画のようなハッピーエンドはないのだという当然の事実を実感させられます。
(Netflix、U-NEXTなどで配信中、Amazonプライム・ビデオでレンタル配信中)
<あらすじ>
幼い頃から日本で育ったクルド人・サーリャ。ある日、家族の難民申請が不認定となり、これまでの日常が一変する。埼玉に住むサーリャは、進学のため父に黙って始めたバイト先で出会った、東京の高校に通う聡太と自由に会うこともできなくなる。
<見どころ>
イラン、イラク、トルコなど中東地域に居住し、「国を持たない最大の民族」と呼ばれるクルド人はトルコ政府による長年の弾圧により、1990年代から日本に逃れてくる人が増加。しかし、入国したクルド人の多くは難民認定を受けていません。
家族との毎日を守りたいサーリャの切実な願い、自らのアイデンティティへの逡巡、聡太と育む穏やかな友情…問題意識に富む一方、肩ひじを張ることなく、目の前の社会課題に向き合ってみようと思える、優しさと爽やかさを兼ね備えた一作です。
(U-NEXTで配信中、Amazonプライム・ビデオなどでレンタル配信中)
<あらすじ>
パレスチナ自治区ガザの小さな美容院では、13人の女性客が美容院で会話に花を咲かせている。離婚調停中の主婦や出産間近の妊婦、それぞれがおしゃべりを楽しんでしたが、通りの向こうで銃撃が始まり美容室は戦火の中に取り残されてしまう。外で戦争が始まる中、女性たちは他愛ない日常を続けることでささやかな抵抗をしようとする。
<見どころ>
2023年10月にイスラエルとガザの武力衝突が激化してから1年以上が経過し、依然として終わりが見えない状況です。
2015年に製作された本作(日本初公開は2018年)はそれ以前も絶えず紛争状態にさらされてきたガザにおいて、日常生活をまっとうしようとする女性の矜持を描いています。
戦線に立つ兵士だけが戦争や紛争を象徴するのではなく、そこに日々の営みがあることは、逆を返せばいつどこで争いが起こってもおかしくないということなのかもしれません。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
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