性別に関する誤情報が拡散され、誹謗中傷の被害にあっているパリ五輪ボクシング女子アルジェリア代表のイマネ・ケリフ選手が、アスリートに対するいじめを止めるよう訴えた。
AP通信によるとケリフ選手は8月4日、スポーツ動画配信サービスSNTVのインタビューで、バッシングは選手を破滅させると述べた。
「世界中の人に、オリンピックの原則とオリンピック憲章を守り、すべてのアスリートをいじめないでほしいと伝えたい。とても大きな影響を及ぼすからです」
「人々を破滅させ、思考や精神、心を殺します。人々を分裂させます。ですから、どうかいじめをしないでください」
バッシングの背景
パリ五輪に出場しているボクシング女子のケリフ選手と台湾の林郁婷選手に対し、「元男性だ」などの誤情報がネット上で拡散し、ふたりは激しく攻撃された。
【解説】女性ボクシング選手誹謗中傷の背景。パリ五輪前に両選手を「失格」としたIBAはどんな組織か
発端になったのは、国際ボクシング協会(IBA)が2023年の世界選手権で、性別適格性検査を理由にふたりを失格としたことだ。
ただし、IBAは検査の詳細を明らかにしていない。IOC(国際オリンピック委員会)は、IBAの出場資格剥奪は「恣意的な決定」だとして、ふたりの五輪出場を認めている。
IBAはプーチン大統領と近い関係があると言われているロシアのウマル・クレムレフ氏が会長を務めている。
AP通信によると、ケリフ選手は世界選手権でロシアのアザリア・アミネバ選手に勝利した後に失格になった。ケリフ選手が失格になったことで、アミネバ選手の無敗記録が復活した。
IOCは2019年に、ガバナンスや汚職などの問題を理由にIBAを資格停止処分にし、2023年には問題を解決できていないとして、国際統括団体としての承認を取り消している。
IOCのトーマス・バッハ会長は8月3日、ケリフ選手と林選手に対する誹謗中傷や誤情報について「ソーシャルメディア上での、計略的にあおられた攻撃や暴言などのヘイトスピーチはまったく容認できない」と述べた。
ケリフ選手はパリ五輪の出場が認められたことについて「オリンピック委員会は私を正当に取り扱ってくれました。真実の側に立った救済措置に満足しています」とSNTVのインタビューで感謝を口にしている。
また、3日に行われたハンガリー代表のアンナ・ハモリ選手との試合に勝利した後に、リングフロアに手の平を叩きつけ、涙を流したことについて「緊張をコントロールできなかった」と語った。
「メディアの熱狂状態の中で勝利した後、喜びを感じましたが、大きな影響も受けていました。正直、簡単に乗り切れることではありませんでした。人間の尊厳を傷つけるものだからです」
【画像】ハモリ選手との試合に勝利した後、ケリフ選手がインスタグラムに投稿した写真
ケリフ選手は、8月7日(日本時間)に行われる女子66キロ級準決勝でタイのジャンジャエム・スワンナペン選手と対戦する。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「アスリートへのいじめをやめて」ボクシング女子ケリフ選手、SNSの誹謗中傷に訴える(パリ五輪)