丸井グループの「応援投資」が、朝日新聞などが主催する「ウェルビーイング・アワード 2024」モノ・サービス部門のグランプリに選ばれた。
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応援投資は、エポスカード会員が、丸井グループの社債を購入することができる金融サービスだ。調達資金は途上国の低所得個人向け小口融資、マイクロファイナンスを手がける五常・アンド・カンパニーを通じ、新興国・途上国の人々の経済的な自立支援のために利用される。
社会貢献と資産形成を両立する金融サービスは、どのように生まれたのか。丸井グループ・共創投資部で応援投資を担当する小原ゆゆさん、CWO(チーフ・ウェルビーイング・オフィサー)の小島玲子さんに聞いた。
「応援投資」で購入できるエポスカード会員向けの社債は、1口1万円という手軽さと、年利1%という利息収入なども魅力となり、合計9813人から、約61億円分の応募があった。その中から770人が当選し、現在まで合計約4.5億円の社債が発行された。SNSでも反響があり、会員から好評を得ているという。
「丸井グループがお客様と融資先の間に入ることで、新たな選択肢を提供できたことが大きな意義だと思います」と小原さんは応援投資について説明する。
結果として、応援投資は丸井グループの利益につながった。参加した会員のカード利用額が通常の1.2倍になったのだ。
応援投資が共感を生み出し、カードの「ファン」になった会員にメインカードとして選ばれたことが要因だと分析されている。
小島さんは「通常、クレジットカードを選んでもらうための付加価値は、『ポイントが貯まる』など会員の金銭的メリットになるものが多いと思います。しかし、応援投資は、社会課題の解決にお金を使いたいというお客様の利他の気持ちと、利息による自己の利益(利己)とが両立できる。つまり、利他と利己が統合したサービスなのです」と同サービスの特徴を指摘する。
丸井グループは「あらゆる二項対立を乗り越える」ことをビジョンに掲げているが、「利益と幸せの二項対立を乗り越える」のが、応援投資なのだという。
応援投資は、1万円からの小口投資でサービスへのアクセスを容易にしている点も特徴だ。幅広い層が金融サービスを利用できるようにするファイナンシャル・インクルージョンの思想は、創業当時からあったと小島さんは語る。
「丸井グループは、家具の月賦販売から始まった会社です。創業者は、『信用は私たちがお客様に与えるものではなく、お客様と共に作るものだ』と言いました。例えばまだ若くて信用がなくても、富裕層でなくても、誰でもが欲しいものを買うことができるように月賦というしくみを活用し、どうしたら支払えそうかをお客さんと一緒に考えた。つまり、信用を共創することで、全ての人を取り残さない、インクルーシブな取り組みを推進してきたんです」
応援投資の社債は、証券会社を通じて個人投資家向けにも販売されていた。こちらは30代以下の販売は4%。それに対し、エポスカード会員向けの応援投資の社債購入者の38%は30代以下だった。
これまで社債を買う選択肢がなかった若年層にもサービスを提供し、ファイナンシャル・インクルージョンを実現していることがデータからも明らかになっている。
資産形成と社会貢献を両立する商品を提供したいという思いはかねてよりあった。しかし、新たな金融サービスを開発するには、法規制、技術開発、コスト面で課題が山積していた。
そもそも途上国への融資はリスクが高く、それをカード会員に背負ってもらうのは難しい。そこで、社債にすることで丸井グループがリスクをとるというアイデアがチームメンバーから出て、それが今のスキームのベースとなった。
その後も、丸井グループが出資をしていたマイクロファイナンスを手がける五常・アンド・カンパニーの提案や、証券会社などの外部機関との連携により、現在の形にたどり着いたという。
そして、金融商品取引法等の改正の追い風もあり、デジタル債として発行が実現した。構想から5年が経っていた。
小原さんは「社会課題解決型企業を目指す丸井グループだからこそ、ここまで執念を持って想いを貫けたんだと思います」と話す。
小原さんは2022年に新卒で丸井グループに入社した。サステナビリティなどの社会課題を解決するビジネスに関心があり、丸井グループであれば携われると思い入社を決めたのだという。
就職活動で見ていた企業の中で、本業を通じて社会課題の解決に本気で取り組むことができるのは丸井グループしかない、と感じたそうだ。
小原さんがチームに参画したのはすでに応援投資が開始されたあと。初めての仕事は、インドに行くことだった。融資先で資金がどう使われているか、自分の目で確かめるとともに、応援投資に参加したカード会員にレポートするためだ。
「酪農をされている女性に会いました。借りた資金で乳牛を仕入れて、お金を稼いでいると伺いました。その収入で家を改築したり、子供たちの教育費にあてたりしているそうです。将来は、子どもたちがしっかりと勉強して、良い仕事に就くことが夢だと語っていました。インドは遠く、日本とは全く違う国ですが、実際の生活に応援投資が活用されていることを実感できました」
現地で成果を感じるとともに、まだ課題があると認識した。現状に留まらず、さらに社会貢献が広がるスキームを考えていきたいと前を向く。
丸井グループは社員が自ら希望してプロジェクトに参画する「手挙げの文化」がある。応援投資も、様々な部署から自発的にメンバーが集まり、得意領域を活かすことで実現した。小原さんも、現在所属する共創投資部への異動を希望し、応援投資に携わることになった。
「初めての経験ばかりで難しいことも多く、周囲からも大変だねと言われました。でも、楽しくて好きだからやっているという気持ちが強かった。だからこそ、よりよい成果が出せる方法を自分で考えながら仕事ができています」
応援投資はその後第2弾として 再生可能エネルギー発電所の取得でCO2削減を目指す、グリーンボンドへと取り組みが広がっている。意欲的なメンバーが集まり、仕事を楽しんでいるからこそ、困難を乗り越え、次なる課題に取り掛かることができているのだという。
その背景にあるのは、丸井グループのウェルビーイング経営だ。後編では、小島さんに成果を生み出すウェルビーイング経営について聞いた。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「応援投資」でカード利用額が1.2倍に。利益と幸せの両立を目指す、丸井グループの新しい金融の仕組みとは。