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東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を巡り、西村明宏前環境相が2023年6月の国会で安全性について答弁しなかったかのように編集された動画がXで出回っている。
国会議事録を確認すると、実際には安全性に関する政府の見解を述べていたが、動画ではその部分が意図的にカットされていた。
処理水の海洋放出から8月24日で1年が経つ。科学的根拠を無視し、危険や不安を煽る情報の拡散には注意が必要だ。
動画は海洋放出の2カ月前のやり取り
編集された動画の内容は、山本太郎参議院議員と西村明宏前環境相の国会でのやり取りを記録したもの。
3.1万フォロワーがいる発信元が7月22日に投稿し、翌23日午前10時時点で1900を超える「いいね」が付いているが、西村前環境相の答弁を切り取った動画だと警鐘を鳴らすコミュニティノートも付いている。
ハフポスト日本版は、この動画に映された2人のやり取りがいつどこでおこなわれたものなのか調べるため、動画内での発言を抽出し、国会議事録検索システムで検索した。
すると、2023年6月15日の「第211回国会 参議院 環境委員会」でおこなわれたやり取りであるということが分かった。
処理水が海洋放出される約2カ月前のやり取りで、直近のものではないということになる。
議事録を見ても、山本議員が冒頭、「海洋に今放出されている、原発施設内から流されているということはないですよね」と質問し、西村前環境相が「御通告いただいておりませんので確認はしておりませんけれども、そういった状況はないのではないかというふうに考えております」と答えている。
発信元が投稿した動画の始まりは、この次のやり取りからだ。
山本議員は「これ、大臣、ALPS処理水の海洋放出が水産物の汚染に影響与えることはないとお考えになられていますか。いかがでしょう」と質問。
これに対し、西村前環境相は「御質問の通告がなかったので詳細については把握しておりません」と答えている。
しかし、議事録を確認すると、この答弁には以下のような続きがあった。
「御質問の通告がなかったので詳細については把握しておりませんけれども、基本的に、ALPS処理水の海洋放出に当たりましては、トリチウム以外の放射性物質につきましては規制基準を満たすまで浄化した上で、そしてまた、トリチウムの濃度を国の規制基準の40分の1、WHOが定める飲料水基準の約7分の1である1500ベクレル・パー・リットル未満になるように希釈して海洋放出しているということで、様々な影響のないように対応してやる方向で検討しているというふうに承知しております」
つまり、西村前環境相は、処理水の安全性に対する政府の見解を示しているが、発信元が投稿した動画では「けれども」から「承知しております」の答弁までの全てがカットされていた。
なお、2人のやり取りが全て記録された動画は、「参議院」のクレジットのもと、インターネット審議中継のウェブサイトにもアップされている。
同ウェブサイトにアップされた動画を確認しても、西村前環境相は前述のように安全性に対する政府の見解を示していた。
ハフポストは、処理水の海洋放出に関する安全性について、「処理水とは何?汚染水と言わない理由は?危険じゃないの?福島第一原発【3分でわかる】」でまとめている。
国際原子力機関(IAEA)も2023年7月4日、処理水の海洋放出は「国際安全基準に合致」し、「人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどである」といった包括報告書を公開している。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
処理水の安全性を示す「答弁」をカット⇨編集された動画が出回る。山本太郎議員と前環境相のやり取りで