【関連記事】女性受刑者の「出産時に手錠」、法務省の通知に反し6件。予算委で報告
女性受刑者の出産時の手錠使用を巡って、花村博文・法務省矯正局長は3月22日の参議院法務委員会で、刑事施設から医療機関に護送する間なども使用を控えることを求める通知を、全国の刑事施設に出していたことを明らかにした。通知は3月18日付。
社民党の福島瑞穂議員の質問に対する答弁で述べた。
法務省はこれまで、「出産のために分娩室等に入室している間」は手錠を使用してはならないと通知していた。さらに「授乳、抱っこ、沐浴及びおむつ交換等で子と接している間」は、原則として手錠等の使用を控えることも明記していた。
3月18日付で新たに出された通知では、「手錠等の使用が適当でない場面」として上記に加えて、「出産のために刑事施設から外部医療機関まで護送している間、同医療機関に到着してから出産のために分娩室等に入室するまでの間」も盛り込んだ。
今回の通知により、手錠の使用が事実上禁止となる範囲が拡大された格好だ。
国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルールズ)は、「女性に対し、分娩中や出産直後に拘束具を決して用いてはならない」と定める。
また、女性受刑者らの処遇などに関する規則を定めた「バンコク・ルールズ」も、一部の国で病院への移送や出産時に、妊婦に手錠などの身体拘束が使用されているとして「国際基準に違反している」と指摘。「陣痛、出産中及び出産直後の女性に対して、拘束具を決して使用してはならない」と定めている。
花村矯正局長は、今回の通知改訂が「マンデラ・ルールズやバンコク・ルールズの趣旨を考慮したもの」だと説明した。
「通知の順守を促すべき」
国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)は2023年11月、出産時の手錠を禁止する法務省の2014年の通知以降も、女性受刑者が出産の際に手錠をかけられるケースがあるとの証言が元受刑者らから寄せられていたことを報告していた。同省は今年2月、通知が出た2014年12月から約8年間で、通知に反し、出産時の女性受刑者に手錠を使用したケースが6件あったと発表した。
今回の通知改訂について、HRWアジア局プログラムオフィサーの笠井哲平氏はハフポスト日本版の取材に「法務省がマンデラルールズやバンコクルールズなどの国際基準を参考に、(手錠使用を事実上禁止する)対象を拡大したことは評価できます」との受け止めを語った。
一方、「バンコク・ルールズ」が婦人科検診で手錠などを使う行為も国際基準に違反すると指摘していることから、笠井氏は「法務省は、妊婦の定期健診などの際も手錠の使用が事実上禁止されるのかはっきりさせた上で、各刑事施設が通知を遵守するよう促すべきです」と指摘した。
さらに笠井氏は、「そもそも妊娠中や出産時、そして出産直後の女性を受刑させておくのが人権上、適切なのかを考える必要があります」とも疑問を呈する。
刑事訴訟法は、▽受胎後150日以上▽出産後60日を経過しない▽子や孫が幼年で、他に保護する親族がいない━などの場合、検察官の裁量による刑の執行停止を認めている。
だが法務省の統計では、2018年〜2022年で刑の執行停止となった女性受刑者はわずか11人だったとして、笠井氏は「政府は検察官に対し、同条を積極的に活用するよう働きかけるべきです」と提言した。
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女性受刑者の手錠「出産時の護送中や分娩室に入る前も控える」法務省が全国に通知