寒さが厳しくなるこの季節は、お腹の調子が不安になったり、トラブルになりやすいものです。
「冬にお腹が緩むのは仕方がない、と諦めてはいけません。下痢は体力を失うだけでなく、繰り返せば肛門に過度に負担がかかったり、細菌感染などで痔疾患の要因を招いてしまうことも。
下痢になる原因を知ることで自分の体を守り、快適に過ごせるようになります」と説明するのは、肛門疾患・胃腸疾患を専門としている草間かほるクリニック(東京都港区)院長の草間香先生です。
冬に下痢が増える理由から、水分補給や下痢止めの服用方法などの正しい下痢の対処法について、詳しく教えていただきましょう。
そもそも下痢はなぜ起きてしまうのでしょうか。
「下痢とは、便が通常と比べて水分量が多くなり過ぎてしまった状態です。口から食べた食べ物は、食道から胃に送られて消化されやすい形になり、小腸で消化吸収が行われます。そして大腸で水分が吸収されて便として排泄されるのですが、水分量が80%〜90%で軟便に、90%以上で水様便、いわゆる“下痢便”になるのです」(草間先生)
冬は、下痢などのお腹のトラブルが増えます。
「下痢は、便が緩くなるメカニズムから大きく4つに分けられます。
腸での水分吸収が妨げられて起こるのが『浸透圧性下痢』です。人工甘味料や薬によってひき起こされたり、食べ過ぎによる消化不良、牛乳をうまく消化吸収できない乳糖不耐症などからも起きます。
腸からの水分分泌が過剰になるのが、『分泌性下痢』です。細菌やウイルス感染、寄生虫、アレルギーなどで起きます。
腸が過剰に動くことによるのが『蠕動(ぜんどう)運動性下痢』です。大腸で十分に水分が吸収されないまま便となるので、緩くなってしまうのです。ストレスや緊張、冷えで起きることが多いですが、暴飲暴食、香辛料やコーヒーなどの刺激物がきっかけとなることもあります。
冬に下痢が増えてしまうのは、寒さによりお腹が冷えやすいことがあります。また、ノロウイルスなどのウイルス性の食中毒も起きやすく、飲み会などのイベント後の消化不良、就寝時や起床時に冷えてしまうことなども原因となります」(草間先生)
お腹が緩くなってしまったら、下痢止めを飲めばいいのでしょうか。お腹が緩くなってしまったら、下痢止めを飲めばいいのでしょうか。
「まず必要なのは安静と保温です。体を冷やさないように、特にお腹まわりを温めて、楽な姿勢で体を休めましょう。お腹を温めるには腹巻きを活用するのがオススメです。
注意したいのが、下痢止めの服用です。細菌やウイルス感染、食中毒などが原因と疑われるときは、腸の蠕動運動を止めるタイプの下痢止めの薬は服用してはいけません。下痢によって有害物質を体の外に出しているので、無理に止めない方がいいのです。
ストレスや緊張により下痢になりやすい人は、医師や薬剤師と相談の上で使うようにしましょう」(草間先生)
水分補給が大切だと聞きますが、水を飲むのも怖いときがあります。
「下痢のときは体内の水分がたくさん排出されてしまうので、水分補給が重要です。ぬるめの白湯や薄めのお茶、冷たくないスポーツドリンクなどが飲みやすいです。少しずつ、こまめに飲むことを意識しましょう。
症状が落ちついてきたら、おかゆやスープ、薄いみそ汁など消化のよいものから食べるようにします。様子をみながら普通の食事に戻していきます」(草間先生)
病院に行った方がよいときもあるのでしょうか。
「高熱を伴うとき、血便、激しい腹痛などがあれば、すみやかに病院を受診しましょう。下痢や嘔吐を繰り返して、めまいや頭痛が出てきたときも体内の水分が失われている危険性があります。
急性の下痢はたいてい1週間以内に治りますが、長引く場合は何らかの病気が隠されている可能性もあります。専門医を受診することをおすすめします」(草間先生)
冬の間でも下痢にならないために、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。
「服装や暖房などでお腹はもちろん体全体を冷やさないようにしましょう。暴飲暴食を避けるとか、冷たい食べ物やアルコール飲料のとりすぎに注意しましょう。ウイルスへの感染を避けるために、手洗いや食べるものについても留意します。
普段の生活で体質改善をはかることも大切です。そのためには十分な睡眠をとって疲労をためないこと。軽い運動や趣味でストレス解消を心がけるなど、基本的なことが役立ちます。ヨーグルトや発酵食品を適度に摂取することで、腸内環境を改善するのもおすすめします」(草間先生)
暦の上では春ですが、まだまだ厳しい寒さが訪れることもあります。しっかり体をケアすることを心がけ、元気に過ごせるようにしましょう。
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