<関連記事>性行為を“紅茶”に置き換えた、世界的ヒット動画の作者に聞く『性的同意』の話【来日インタビュー】
性犯罪の規定を大幅に見直した改正刑法が7月、施行されました。
「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」を統合し、「不同意性交等罪」に改称。「同意のない性的行為」を性犯罪として処罰するため、構成要件となる行為を具体的に示す内容となりました。
改正刑法の成立を受けて「性的同意」への関心が高まる中、同意を確認・記録できると謳うアプリのリリースも発表され、議論を呼んでいます。
そもそも「性的同意」とは?どのように確認したら良い?「同意書」は同意の証明となる?
専門家や法務省に聞きました。
【改正刑法のポイントまとめはこちら】「不同意性交等罪」を創設、性交同意年齢は引き上げ。改正刑法が成立、どう変わる?
「性的同意」とは、手をつなぐ、キスする、セックスするといった全ての性的な行為に対し、お互いがその行為を積極的にしたいと望んでいるかを確認することを指します。
性教育に関する講演や性の健康・権利をめぐる政策提言などの活動に取り組むNPO法人「ピルコン」代表理事の染矢明日香さんは、性的同意を確認する上で重要なポイントとして次の4点を挙げます。
①NOと言える環境が整っていること(非強制性)
→断られても、嫌な顔をされたり関係性が悪くなるというプレッシャーを受けたりしない
②社会的地位や力関係に左右されない対等な関係であること(対等性)
③一つの行為への同意は他の行為への同意を意味せず、その都度確認が必要ということ(非継続性)
→前回の性行為がOKでも、次に会った時の性行為もOKかは別
④その行為がしたいという明確で積極的な同意があること(明確性)
また、意識がないなど判断能力がない状態では、その人の同意を確認することはできません。
性的同意が取れているかを確認するツールとして、京都市男女共同参画推進協会が発行している「『Gender Handbook』「必ず知ってほしい、とても大切なこと。性的同意」に収録されているチェックリストも参考になります。
「キスをしたら、性行為をしてもいい」「家に泊まるのは、性行為をしてもいいというサインだ」「同じ相手に、毎回、性行為の同意を取る必要はない」など10の項目があり、一つでも当てはまる場合は「性的同意は取れていないということ」だとして注意を呼びかけています。
アメリカのクリエイターらによる、性行為を「紅茶」に置き換えた動画「Tea Consent(紅茶と同意)」も、性的同意の考え方をわかりやすく説明しています。
性的同意はどのように取ったら良いのでしょうか?
染矢さんは、「性的な行為をしたいと思った側に、相手の意思を確認する責任がある」と言います。その上で、「手をつないでいい?」「したいけど、どう思う?」などと一つ一つの行為を言葉で確認することが確実な方法だと話します。
その際、「嫌だったらいつでも断っていい」と伝えるなど、相手がNOと言いやすいような声かけをすることも大事だといいます。
「若い世代に性的同意の話をすると、『同意を確認することはムードを壊すのでは』『直接的な表現は恥ずかしい』という声を聞くことがあります。例えば『仲良しする』など、2人の間でセックスの意味になる合言葉やサインを決めておく人もいると伝えています」(染矢さん)
刑法改正により「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」が統合され、罪名も「不同意性交等罪」に変更されました。
こうした法改正の動きを踏まえ、「同意を証明するために、性行為の前に契約書や同意書を結ばなければいけないのか」との声も上がっています。
「性的同意アプリ キロク」という名称のサービスが8月下旬にリリースされるとも発表され、議論を呼んでいます。
プレスリリースによると、このアプリは性的同意があったかの認識に相違が生じることを防ぐため、デジタルの「同意書」を事前に行為者間で共有する仕組みといいます。
アプリや紙の同意書があれば、「同意」を証明できるのでしょうか。
染矢さんは「書類などで同意が表面上は取れたように見えても、強制されたものだったり、力関係の差などによって仕方なく応じたケースだったりする可能性はあり、それは真の同意とは言えません」と強調します。
過去には、性的暴行をした後、性行為が同意の上だったとする内容の書面を作成させた疑いで加害者が摘発された事件も起きています。
法務省の担当者は取材に、「あくまで一般論」と前置きした上で、「具体的な事案で犯罪が成立するかどうかは、捜査機関が情報を収集し、個別の証拠に基づいて裁判所が判断する」と話します。
「不同意性交等罪に限らず、どのような犯罪も『同意書があれば罪に問われない、なければ罪に問われる』というものではありません。
また、どんな罪であっても、被害者の証言のみで犯罪が成立するか否かを判断することはなく、法律上の構成要件を満たすかどうかで判断されます。同意書なら全て考慮されるというわけではなく、どういった状況で書いたのかなど、 個々の事案に応じて他の証拠も含めて最終的に判断することになります」(同省担当者)
不同意性交等罪は、「暴行・脅迫」や「恐怖・驚愕」、「不意打ち」など8つの行為で、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し、もしくは全うすることが困難な状態」にさせ、性的行為に及んだ場合に処罰されます。
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性的同意の本質は、「契約」ではなく「コミュニケーション」です。
染矢さんは「性的同意の話になると、『同意がなければ(裁判で)訴えられる』といったリスクに目を向けられがちです。その側面は確かにありますが、同意の確認をすることで、お互いの性行為における安心感や満足感につながるという面も含め、同意に関する教育を必須としていくことも重要です」と話しています。
【取材・執筆=國崎万智(@machiruda0702/ハフポスト日本版)】
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性的同意、「同意書」があれば罪に問えない?法務省の見解は。アプリ発表で関心高まる