秘密(1)なぜ渦巻きに?
蚊取り線香はどうして渦巻型で緑色をしているのでしょうか。
「蚊取り線香は1890年、仏壇の線香にヒントを得て棒状に固めたものが創案されましたが、1本あたり40分ほどしかもちません。細いために殺虫効果も弱く、輸送の途中で折れやすいという欠点もありました。
そこで、長時間使えて効力を高めた丈夫な製品にするべく研究工夫を重ねた末、『金鳥』の創業者である上山英一郎(うえやま・えいいちろう)夫人ゆきが“とぐろを巻いた蛇”を目にしたことがきっかけとなり、渦巻型になったといわれています。緑色は涼しげに感じられるということ、蚊取り線香ができるまで“蚊遣(や)り”の際に燃やしていた、ヨモギなどの草の葉の色をイメージしたというのも理由の一つです」(金鳥)
他社製の蚊取り線香は右巻き(時計回り)ですが、『金鳥の渦巻』のみ左巻き(反時計回り)ですね。
「かつて蚊取り線香は手巻きで作っていたため、作業のしやすい右巻きが主流でした。1957年頃から機械で打ち抜くようになり、他社品は右巻きが多かったので、区別するために左巻きにしました」(金鳥)
秘密(2)除虫菊の殺虫成分は使っていない?
現在の蚊取り線香には除虫菊は使われていないと聞きました。
「当初の蚊取り線香の殺虫成分は、いまのセルビア共和国で発見されたシロバナムシヨケギク(除虫菊)に含まれるピレトリンという天然の殺虫成分でした。
除虫菊の日本での栽培は和歌山県で始まり、1938年には1万3,000トンも生産されましたが、戦前から戦後にかけての食糧増産のため、除虫菊の栽培がはなはだしく減少していきました。また、天然殺虫成分のピレトリンに似た、合成されたピレトリン類似化合物のピレスロイドが開発されたことで、その後日本では蚊取り線香をはじめとする家庭用殺虫剤の有効成分は、この化学合成されたピレスロイド系の薬剤が使われるようになりました。
ピレスロイドは人体には影響がなく、体に入っても速やかに分解し、無毒化され、体外へ排出されます。
ただし、“蚊取り線香の香りに癒やされる”という方も多く、独特の香りを残すために、弊社では今でも除虫菊の有効成分を搾(しぼ)った後の粉(粕粉)を原料に混ぜているのです」(金鳥)
秘密(3)効率性を高める置き方、使い方は?
蚊取り線香の置き場所は。
「基本的には風上に置いてください。風向きが変わってもいいよう対角線上に2カ所以上置くと、より効果的です。
実は、いろいろある蚊の対策商品のなかで、使用時間中に同じ効き目を持続させる力は、いまでも蚊取り線香が一番です。有効成分は先端から6~8ミリ、約200℃の部分から揮散(きさん)して長い時間空気中に浮かんでいます。そのため、タンスの後ろや部屋の隅といった狭い隙間にまで成分が届いて、潜んでいる蚊を退治することができるのです」(金鳥)
秘密(4)1時間でどれぐらい進む?
『金鳥の渦巻』の殺虫効果の持続時間はどれぐらいですか。
「レギュラーサイズの1巻の長さは75センチ。10センチで約1時間燃焼しますので効果は約7.5時間持続、大型サイズなら約12時間持続します。
蚊取り線香の断面(燃えている部分)には隙間が少なく空気(酸素)があまり入っていないので、ゆっくり燃えるのです」(金鳥)
秘密(5)効果的な消し方は?
蚊取り線香は長年使われていますが、意外と知られていないことなどはありますか。
「消すときの方法です。折る人が多いかと思いますが、折る時にやけどなどが気になるという方は、ストローなどを用いて水を一滴たらすのも方法の一つです。1日程度経てば乾燥するので、再度の使用が可能です」(金鳥)
さわやかな夜風が吹き抜ける縁側や軒先に緑の渦巻から煙をたなびかせ、浴衣姿で団扇を片手に花火を愛でる。そんな“日本の夏”の夜長を、蚊取り線香の渦巻きとともに楽しんでみてはいかがでしょうか。
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知ってた?蚊取り線香が“渦巻き”な理由。効率的な「置き方」も実はある【豆知識】