「10年後の自分に『よくやってるね』と言われるか」。社会貢献とキャリアを天秤にかけない「幸せな転職」について考えた。

「社会貢献」と「キャリアアップ」と聞いて、何を思い浮かべるだろう?

その両立を「きれいごと」ではなく、どうにか成立させたいと志向する人も多いだろう。

そんな人のキャリアを考えるきっかけにしてほしいと「プロと話せる!『社会貢献』と『キャリア』両立の方法 〜ソーシャルビジネス×人事×キャリアの専門家と徹底議論〜」(ハフポスト日本版・ONE CAREER PLUS主催)が開催された。

(右から)市川衛さん、戸川晶子さん、泉谷由梨子編集長

イベントのテーマは「社会貢献をキャリアの軸にする方法」。転職サイト「ONE CAREER PLUS」を運営するワンキャリアとコラボした同イベントでは、トークセッションやディスカッションを通して「社会貢献のキャリア」について参加者たちが言葉を交わした。

登壇者は、NHKからREADYFORに転職した市川衛さんと、食品会社、医療機器メーカー、ディヴェロッパーを経て、ラッシュジャパンに転職した戸川晶子さん。そしてハフポスト日本版からは泉谷由梨子編集長が登壇した。MCは「ONE CAREER PLUS」のキャリアアナリスト、佐賀駿一郎さんが努めた。

イベントの様子

ソーシャルな転職で「食べていく」ためには?

イベントでは、市川さんと戸川さんが現職に就くまでに通ってきたキャリアの軌跡について聞いた。

NHKで医療報道を手がけてきた市川さんは、「もっと事業を通じて直接人の役に立つことをしたい」という思いのもと、現在はREADYFORで休眠預金の活用事業を主に担当している。金融機関で長期間使われず眠っていた預金を活用して、民間の公益団体に資金を配分し、社会課題解決に役立ててもらうこと、その伴走支援をすることが主な仕事だという。

市川衛さん

一方、戸川さんは、幼い頃から開発支援に興味があったという。闘病やいくつかの転職、そして大学への再入学を経て、人や環境に配慮した倫理的な経営に共感した、ラッシュジャパンに入社し、現在は人事やD&Iなどの領域を担っている。

戸川晶子さん

とはいえ、社会的なやりがいだけでは、生活を維持することはできないことも多いだろう。

それぞれに違ったキャリアを築いてきた2人だが、大きな決断をするに当たって背中を押したのは「『食べていくため』に必要なスキル」という共通のキーワードだったという。

市川さんは大企業からスタートアップへの転職をするにあたって、自身の積み上げてきた知識や働き方を全て手放して、学び直す必要があった。しかし、スピード感があり、社会への情熱を実装しやすい環境は、自分の肌にあっていたという。個人の裁量や責任が大きい分、大変な苦労も伴ったが、30代までに積み上げた医療報道という専門性があったため、「ダメになっても『医療の世界に戻れば食いっぱぐれはないかな』」との思いが、挑戦に踏み出せた理由だと語った。

また、戸川さんも「(就業経験を経てからもう一度入学した)大学で、英語ではなく中国語を学んだのは、日本の学習者人口が比較的少なかったから」「教員免許や言語など、専門性を要するもの(技術資産)を自分の強みとして持っておけば、『食べていけなくなる』ことは最低限ないはずと考えたんです」と振り返った。

2人のこれまでのキャリアからは、社会貢献を軸に転職してみる大胆さと、実績を作っておく慎重さの両輪という視点が浮かび上がってきた。

「社会貢献」を実現する方法はさまざま

イベントでキャリアチェンジについて話す市川さん(一番右)ら

イベント後半のディスカッションでは、参加者から「手に技術資産がないと、社会貢献でキャリアを築くことはできないのでしょうか?」という質問が寄せられた。

質問に対し、戸川さんは「決してそんなことはありません。ラッシュのように組織として社会貢献をしている企業もありますし、社会貢献の『社会』には色々な分野がありますから、ご自身の関心のある分野から絞って企業を見つけてみるのも良いと思います」と回答した。

市川さんは、さらに社会課題の解決と経済の両立を目指す「インパクトスタートアップ」について紹介した。

READYFOR代表取締役CEOの米良はるかさんら3人が発起人となり、市川さんが事務局長を務めているインパクトスタートアップ協会にも、既に48社が加盟している。

「政府が6月に発表した『骨太の方針』にも、インパクトスタートアップの育成支援が盛り込まれました。成長分野で、これからどんどん人も必要になります。ぜひ会員企業についてみてみてください」と話した。

10年後の自分に「よくやったね」と言われる未来を目指して

「ONE CAREER PLUS」のキャリアアナリスト、佐賀駿一郎さん

イベントの後半では、キャリアアナリストの佐賀さんを中心に「転職を目指すなら、何から始めたらいい?」という実践方法についても考えた。

佐賀さんからは、目指す業種と今の仕事との距離が遠すぎる場合は「経由地を設ける考え方をしてみてください」など、具体的なアドバイスがあった。

希望する転職先が遠すぎる場合の考え方について、佐賀さんのアドバイスは「経由地を設ける」こと

市川さんは、転職にあたってはそれまでの人間関係も重要になってくるといい、「自分が関心のある社会問題をある程度まで絞って、自分の“棚卸し”をしてみてください。そのうえで『自分は仕事でこんなことがしたいな』と口に出して周囲に発信し続けるのがおすすめです」。

泉谷編集長は「ウェルビーイングを考える上でも、キャリアや働き方の多様性は大切。今の働き方や仕事に対する“違和感”があるのなら、その違和感を無視しない転職が『幸せな転職』なのかもしれません」と、ウェルビーイングと転職の関係性にも光を当てた。

戸川さんは「今日のように新たな出会いがあるイベントも、広い意味の“転職”なのかもしれません。私は闘病もあり、20代の頃に何も社会に残せなかったという後悔もあります。しかし、そんなある種のコンプレックスがあるからこそ、新たな機会に積極的に参加できています。皆さんが社会貢献を軸に転職をするときも、ぜひ『10年後の自分は今の自分を見てどう思うかな』と問いかけてみてください。その時に『よくやったね』と言ってもらえる未来を目指せば、それが『幸せな転職』に繋がってくるように思います」とイベントを締め括った。

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