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東京電力福島第一原発の「処理水」の海洋放出を巡り、公明党の山口那津男代表が「(海水浴)シーズンにわざわざ排出する理由も特にない」と発言し、風評被害を懸念する声が上がっている。
政府の処理水放出方針は、国際原子力機関(IAEA)も「科学的根拠に基づくものであり、国際慣行に沿うもの」と評価しており、山口代表の発言は「処理水自体に危険なイメージを与えかねない」とSNS上で指摘されている。
今夏にも予定されている処理水の海洋放出。処理水とは何か。そして、なぜ海洋放出する必要があるのか。
簡潔にわかりやすくまとめられている、経済産業省の特設ウェブサイト「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと」をもとに改めて確認する。
朝日新聞によると、山口代表は7月2日、訪問先の福島市で記者団の取材に応じ、処理水の海洋放出について、「いたずらな不安を招かないように配慮があってしかるべき。(海水浴の)シーズンにわざわざ排出する理由も特にない」と発言した。
その上で、「科学的根拠に基づいて客観的に説明が尽くされることを期待したい。根拠なき批判を招かないような丁寧な対応の上でタイミングを計っていくべきだ」とも話した。
SNSではこの発言を疑問視する声が相次ぎ、日本維新の会の柳ヶ瀬裕文参院議員は、「このような発言が風評被害を生み出す。政府の方針を理解してないのかな」とツイート。
国民民主党の竹詰仁参院議員も「海水浴期は毎年ある。今年はダメで来年はいいのか?与党の一翼として根拠を示して説明していただきたいです」と疑問を投げかけた。
福島第一原発では、原子炉建屋に雨水や地下水が流入したりして、放射性物質を含む「汚染水」が発生している。
これを「多核種除去設備(ALPS)」などに通し、放射性物質を取り除く処理をかけたものが「処理水」だ。
そして、この処理水の海洋放出について、科学的根拠に基づく安全性を解説する経産省の特設ウェブサイトがインターネット上で公開されている。
地元の漁業関係者らを中心に風評被害を心配する声があり、「なんとなく不安」といった意識をもつ消費者もいる。
処理水や海洋放出に関心を持っている人だけではなく、全国的に福島の復興を考えるきっかけづくりにしたいというのが、サイトの狙いだ。
サイトでは、①処理水って何?本当に安全なの?②トリチウムって何?③なぜ処理水を処分しなければならないの?④本当に海洋放出しても大丈夫?⑤近海でとれた魚は大丈夫?ーーの「知ってほしい5つのこと」を解説。
それぞれの項目に動画による説明もつけられている。順に確認していきたい。
前述の通り、処理水とは、福島第一原発の建屋内にある放射性物質を含む汚染水をALPSなどに通し、放射性物質を安全基準を満たすまで浄化した水のことをいう。
処理水は技術的に取り除くことが難しい「トリチウム」を含んでいるが、処理する前に海水で大幅に薄める(1リットルあたり1500ベクレル未満)。
この濃度は、国の定めた安全基準(1リットルあたり6万ベクレル)の40分の1、世界保健機関(WHO)飲料水基準(同1万ベクレル)の約7分の1未満となる。
もちろん、放出する総量も管理して処分するため、環境や人体への影響は考えられない。
トリチウムは水素の仲間で、三重水素とも呼ばれる。
宇宙から降り注ぐ宇宙線によって日々発生しているため、水道水や雨水、人間の体内にも含まれており、「自然界にも広く存在する放射性物質」だ。
トリチウムが出す放射線のエネルギーは非常に弱く、紙1枚で遮ることができる。
また、トリチウムは体内に入っても蓄積されることはなく、水と一緒に体外へ排出される。
IAEAのグロッシー事務局長も「処理水の海洋放出は国際基準に完全に適合した形で実施され、環境にいかなる害も与えることはないと確信できる」とコメントしている。
現在、処理水は福島第一原発敷地内の巨大なタンクに貯蔵しており、タンクの数は増え続けている。
これから本格化する廃炉作業を安全に進めるためには、新しい施設を建設する場所が必要となり、施設内の敷地を圧迫しているタンクを減らす必要がある。
また、災害が発生した時の漏洩リスクや、タンクの存在自体が風評被害の原因になるという指摘もある。
前述の通り、処理水を海洋放出する際のトリチウムの濃度は、1リットルあたり1500ベクレル未満に薄められる。
これは、国の安全基準の40分の1、WHOの飲料水基準の約7分の1未満の値で、環境や人体への影響はないといえる。
処理水を海洋放出した際の放射線影響(1年間)も0.000002〜0.00003ミリシーベルトで、東京ーニューヨーク間を飛行機で移動した時に受ける0.11〜0.16ミリシーベルトを大幅に下回る。
そもそもトリチウムは、韓国や中国、イギリス、フランスなど世界各国の原子力施設から海に放出されているが、施設周辺からはトリチウムが原因とされる影響は見つかっていない。
国際的な方法に基づいて海洋放出による人体への影響を評価したところ、人が日常で受けている放射線量(1年間で平均2.1ミリシーベルト)の約100万分の1〜7万分の1になることが確認されている。
近海でとれる魚に安全上の問題はなく、海洋放出の前後で定期的なモニタリングが実施され、海水や魚類、海底土の放射性物質濃度に大きな変化がないか確認することになっている。
経産省によると、IAEAは5月31日、処理水安全性レビューの報告書を公表。
処理水の放射性物質の分析試料は、IAEA立ち会いのもとで採取され、IAEA研究所と第三国分析機関(フランス、アメリカ、スイス、韓国)が分析したが、「高水準の正確性と能力を持つ」とされた。
処理水に関しては、東京電力の「処理水ポータルサイト」でも詳しく説明されている。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
処理水放出めぐる公明・山口代表の発言に「風評招く」の声。政府が訴えてきた「知ってほしい5つのこと」とは【動画集】