変化する市場ニーズに応えるため、人的資本経営(人への投資)によりビジネスパーソンのスキルアップを目指す「リスキリング」。
人材開発支援助成金をはじめとした国からのサポートもあり、雇用する側の組織が主体となって取り組みを進めている。しかし、研修プログラムを整備しても、実際に活用するのは学びに前向きな一部の人に限られるなど、企業からは「従業員が自主的に学ぼうとしない」という嘆きの声も聞こえてくる。
そういった現状を受け、株式会社リクルート内のリクルートワークス研究所が、報告書「なぜ人は自主的に学ばないのか~学びに向かわせない組織の考察」を発表。
その内容を抜粋し、リスキリングの現在地を考える。
組織と個人の“ズレ”が、リスキリングを阻害している
まず調査分析で浮き彫りになったのが、組織と個人のコミュニケーション不足による“ズレ”だ。
従業員の自主性の欠落に悩んでいる企業には、「変化を嫌う」「新たなチャレンジを求めない」のほかに、「適したフィードバックが得られない」「学びの必要性が感じられない」などの傾向があるという。
また、自由記述の回答では、学ぶ範囲に制限がかけられていることや、業務における個人のレベルに対応していない一斉研修を疑問視する声も寄せられた。
このような“ズレ”による、やる気の阻害を改善するためには、学びのタイプを分類し、それぞれに学びの動機や目的、優先順位をクリアにしていくことが重要だ。
報告書では、学んだ知識を即座に日々の仕事に生かせる「課題解決型」、個人の専門分野を中長期的に磨くための「キャリア熟達型」、問いを立て、他者と共に課題解決を目指す「ソリューション共創型」、他者からのフィードバックを通して自分自身を変容させる「自己変革型」の4象限に学びを分類している。
4つの組織タイプと、それぞれの“打ち手”
学びの種類と同様に、報告書では「キャリア自律」「学び行動」の観点から、組織を以下の4タイプに分類した。
調査の結果、キャリア自律を促進しているのは「制度充実」タイプだけという実態が浮かび上がった。一方の「個別対応」「日本的雇用」タイプでは、キャリア自律を忌避する傾向にあることがわかった。
調査サンプルの中で最も多く見られた「現場支援」タイプは、旧来型の上意下達の傾向は薄れているものの、キャリア自律を積極的に支援することも忌避することもない中立的な立ち位置になっている。
組織タイプによって、今後取り組むべき“打ち手”も異なってくる。
「制度充実」タイプの組織では、同僚同士の関係性を充実したものにすることで、より刺激しあえる自主的な学び行動につながっていくと考えられる。
「個別対応」タイプでは、長期的成長に必要なスキルとアドバイスを明確に示すこと、「日本的雇用」タイプでは、社内キャリアを前提に専門性を磨き、上司とキャリアイメージを共有できることがそれぞれ重要と考えられる。
「現場支援」タイプにおいても、個人の成長に必要なアドバイスを職場で得られることや、上司とのキャリアイメージの共有など、学びの先にあるものをよりクリアにしていくことが効果的だという。
ふたつの「適正」を知って、より効果的なリスキリングへ
今後も、さらなる経済の減速が予想されている。それに伴い変動する市場ニーズに対応していくためにも、人材資本の育成は企業が取り組んでいくべき業務だ。
学びのタイプと組織タイプのふたつの軸から、それぞれに適したリスキリングの形を知り、実践していくことから、現在の取り組みを見直してみるのも良いかもしれない。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
組織のリスキリングが上手くいかない…。理由は「正しい学習ニーズ」に気づいていないこと?【調査結果】