通信システムや電力施設、さらには人工衛星などに壊滅的な被害をもたらす可能性のある太陽嵐。今後、地球に到達する約30分前に警告を出せるようになるかもしれません。海外メディア「sciencealert」が詳しく解説しています。
*Category:サイエンス Science *Source:sciencealert,wikipedia
NASAが開発する早期警報システムとは
NASAのチームは太陽嵐のデータにAIモデルを適用して早期警報システムの開発を行っています。このシステムは、太陽嵐によって太陽から放出される物質よりも、光(電波の元となるもの)の方が速く移動できるという事実を利用しています。
35年前、ケベック州で何時間も電気が止まるような出来事がありました。150年以上前にはキャリントン・イベントという記録に残る中で最大規模の太陽嵐が起きています。もし現代にこのキャリントン・イベントと同程度の太陽嵐が起きたなら、電気や通信のインフラに大規模な破壊をもたらす可能性があります。
しかし科学者たちは、この問題を長い間認識し、黙って見過ごしてきたわけではありません。太陽系を探査している現在、多くの衛星が太陽を観測しており、太陽フレアを特定するのに利用されています。これらの衛星には、NASAチームにデータを提供したACE、Wind、IMP-8、Geotailなどがあります。しかし、AIの研究者なら誰でもわかるように、予測モデルを開発するためには、そのモデルが何を予測するのかを指示する必要があります。
太陽嵐が近づいていることを知るだけでは、戦いの一端に過ぎません。太陽嵐が地球に衝突したとき、どのような影響を与えるかも理解する必要があります。そこで研究者たちは、衛星が検知した嵐の影響を受けた地表の観測点からもデータを収集しました。
次にディープラーニングモデルの学習に着手しました。今回「DAGGER」と名付けられたこのモデルは、同じ試みを行った既存の予測アルゴリズムと比較して、かなり優れた仕様を持っています。最も注目すべきは、その高速化でしょう。インドの天文学・天体物理学共同研究センターのヴィシャール・ウペンドランを中心とする研究者は、このアルゴリズムは1秒以内に太陽嵐の程度と方向を予測できると主張しています。さらにその予測は1分毎に行われるようです。
以前のアルゴリズムによる試みでは桁違いの時間がかかり、嵐が地球を襲う前に警告を発する時間は、ほとんどありませんでした。その背景は、地球上のどこに嵐が来るかを計算することが困難だったからです。その点、DAGGERは、地球上の全領域を対象にした迅速な予測ロジックを実行できるため、一歩前進と言えます。そしてこのような予測を局所的に行うことは非常に重要です。太陽嵐が地球を襲う可能性がある場合、地球の半分はいわゆる「夜」と呼ばれる状態になっており、守られているからです。
DAGGERは、このような予測スピードと地球全体に適用できる能力を兼ね備えているため、太陽嵐による危険を予測し、正確に対応する上で大きな前進を遂げたと言えます。そして、2025年に太陽が11年の太陽周期のピークを迎えるのに合わせて、多くのデータを収集するために、オープンソースプラットフォームが発表されました。
電力会社や通信会社がDAGGERを脅威評価システムに統合するのに数年かかるとのことです。アメリカ中西部にある竜巻警報のようなサイレンが鳴り響くことはないかもしれませんが、少なくとも、危険な状況を以前よりも早く知らせることができるようになるはずです。
オリジナルサイトで読む : AppBank
大規模停電を起こす「太陽嵐」を予測するNASAの最新AIシステム