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大手芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」の元所属タレントが、創業者のジャニー喜多川氏(2019年死去)からの性被害を告発した問題。
同社の藤島ジュリー景子社長は5月14日、「世の中を大きくお騒がせしておりますこと、心よりお詫び申し上げます」と謝罪する1分程度の動画を公開した。
あわせて、事実関係を究明するための第三者委員会は設置しないことや、同氏が辞任しないことなどを盛り込んだ文書も発表した。
こうした対応を、有識者たちはどう評価したか。広報コンサルタント、ガバナンス(企業統治)の専門家、芸能界に詳しいジャーナリストの3人に見解を尋ねた。
わざわざ批判されるような対応ばかりを選んでいる。喜多川氏からの性被害を訴えたカウアン・オカモトさんの記者会見から謝罪に至るまで1カ月もかかり、遅かった。発表は報道の体制が整っている平日ではなく、正々堂々としているとはいえない。
動画や文書は、法的責任を免れようとする内容だった。
本来であれば、記者会見を開いて社長自ら説明責任を果たし、問題と向き合う姿勢を示さなくてはならない局面だ。ただ、動画などから、藤島社長は「不慣れ」な印象を受けた。きわめて珍しい形の謝罪方法となったのは、「会見で社長自ら説明すること自体がリスク」と同社が判断したためかもしれない。
オカモトさんらの告発と向き合わなければならない日が来ると予測し、前もって謝罪の仕方などを検討することもできたはず。だが、喜多川氏をめぐる問題や危機管理を甘く見て、「今まで大丈夫だったから、今回も乗り切れる」と準備を怠っていたのだろう。
第三者委を設置しないという表明からは、喜多川氏による性加害を事実として認定することで、法的責任を問われる展開を恐れているとわかる。だが、被害者の人権を踏みにじってまで、他に優先させるべきことなどない。徹底的な調査が必要だ。
このままでは同社にも不利益が降りかかるだろう。才能のあるタレントは同社への所属を望まなくなり、所属タレントがCM出演などをするスポンサー企業らは契約について考え直す可能性がある。
後手後手の対応だった。オカモトさんの告発からの1カ月、「嵐が去る」のをただ待っていたのだろう。少なくとも、告発後すぐに記者会見を開き、同社としての見解を示す必要があった。
同族経営の同社では喜多川氏によるワンマン体制が長く続き、幹部は「イエスマン」ばかりで固めてきたとみられる。喜多川氏をめぐる問題に向き合わなければ「軽傷では済まない」とトップに進言できる人は、今もいないように思えた。
外部の目で経営を監視するガバナンスの入り口にすら辿り着いておらず、時代錯誤な体制だ。上場していない同社の内部には、「口出しされる筋合いはない」との見方があるのかもしれない。
だが、同社は国内有数の芸能プロダクションであり、事業そのものの公益性を自覚しなくてはならない。情報を適切に開示し、社外からの監視を徹底するべきだ。
第三者委を立ち上げず、組織内部だけで問題を解決しようとしている。少なくとも1999年の「週刊文春」の報道から20年以上にわたり問題を放置した同社に、社会の信頼はない。被害者の心理的負担に寄り添いつつ、第三者の公正な立場から調査する体制をつくる必要がある。
藤島社長は「責任はあったと考えております」と述べたが、辞任はしないと表明した。事務所をめぐる性加害疑いという重大な問題が起きたのに、社長にとどまり続けるのは問題だ。今後の数年だけでもガバナンスを強化できる人物に経営を任せなければ、同社は建て直せないだろう。
一連の対応は場当たり的で、判断もダラダラと遅れていた。トップのリーダーシップのなさがあらわれている。喜多川氏をめぐる問題と向き合う覚悟を決めきれていない姿勢や、危機管理にあたるスタッフらの不足も露呈した。
藤島社長は「そのような行為(性加害)自体は決して許されることではない」と述べた。ならば、まずは性加害があった事実を認定することが重要な一歩だ。
第三者委を立ち上げない理由として、「ヒアリングを望まない方々も対象となる可能性が大きいこと」「ヒアリングを受ける方それぞれの状況や心理的負荷に対しては、外部の専門家からも十分注意し、慎重を期する必要があると指導を受けたこと」が挙げられた。
だが、被害者に参加を強制しなくても調査はできる。結果の公表にあたり、プライバシーに配慮することも当然だ。
第三者委の設立から逃げるのは、企業としての社会的責任を自覚せず、「自分たちを守ることで頭がいっぱい」という同社の姿勢のあらわれ。(元)所属タレントを性被害から救うことが優先だ。
イギリス公共放送BBCのドキュメンタリー番組や、オカモトさんの告発をきっかけに、喜多川氏による性被害を訴える人は増えている。
同社の対応が不十分なままでは、今後、大物タレントによる「#MeToo」(性被害の告発)につながる可能性がある。今こそスパッと第三者による調査を始める方が、「傷口」の広がりをおさえられるはずだ。
ワンストップセンター、性犯罪・性暴力に関する相談窓口の全国共通短縮番号#8891
警察庁の性犯罪被害相談電話全国共通番号
#8103
内閣府「性暴力に関するSNS相談支援促進調査研究事業」 Curetime
時間:24時間365日(17〜21時はチャット、それ以外の時間はメールで相談可能)
方法:チャットのみ。外国語での相談も受け付けている。
相談機関は性暴力専門の相談員が対応している。状況や本人の意思に応じて、どのような対応が良いか考え、一緒に警察へ行くなどの支援もしている。
性被害にあった際、証拠採取のため、次の2つが重要になります。
1. 被害に遭った時の衣服を洗わない
2. 身体を洗わないでおく
薬物の使用が疑われる場合は、尿検査や血液検査をしておく必要がある。
なるべく早く警察やワンストップセンターに相談することが大切だ。
〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉
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「『今回も乗り切れる』と甘く見た」「著名タレントの“#MeToo”に…」識者3人がみたジャニーズ社長の謝罪