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前首相秘書官が性的マイノリティについて「見るのも嫌だ」などと差別発言したことをきっかけに、LGBTQ当事者の人権を守る法整備を国に求める動きが、企業にも広がっている。
5月17日に当事者有志らが、日本国内での「LGBT差別禁止法」や結婚の平等などの法整備についての議論などを、G7広島サミット(5月19〜21日)で行うことを求めた要望書を提出。この要望には同日現在で72の企業から賛同が集まった。
提出に立ち会ったEY Japanの貴田守亮CEOは、すべての人に人権が守られるべきだとした上で、「日本に差別禁止法がないことで、国内の会社は海外の企業と取引をする上での信用度に差がついてきます」と、経済的な視点からも法整備が必要だと訴えた。
要望書では岸田首相と森まさこ補佐官宛てで、G7広島サミットで以下の3つの法整備を主要議題にし、具体的な取り組みを促すことなどを求めた。
・(性的指向や性自認に関する差別を禁止する)LGBT差別禁止法
・結婚の平等(法律上の性別が同じふたりの結婚)
・(「生殖腺を取る手術を受けること」などの要件を定めた)性同一性障害特例法の改正または新設の整備
提出した有志によると、森補佐官からは「ジェンダーとLGBTQに関しては、G7で議題になると思う」などと返答があったという。
これまでLGBTQ当事者の人権について発信するのは当事者が中心だった。だが『公益社団法人Marriage For All Japan ―結婚の自由をすべての人に』が主催するキャンペーン「Business for Marriage Equality」にも、2023年5月12日時点で、382の企業・団体が婚姻の平等に賛同を表明している。
同法人の寺原真希子共同代表は「結婚の平等訴訟で、すでに判決の出た3つの地裁うち2つで違憲判決が出たことや多くの人の活動が、こうした動きにつながっていると感じます」と分析。「数年前は少ない団体や個人で活動していましたが、企業の方と一緒に要望できるようになったというのは、いわゆる『理解』がすでにかなり進んできたのだと実感しています」と話す。
今回賛同したEY Japanの貴田CEOは、経済的な視点からも国が差別禁止法を制定する必要性を強く訴える。例えば採用の視点だ。多様な人材の採用は、各社ごとに取り組めば良いという意見もあるが、「法整備がないことで別の国に移ることを決める人もいます。日本では高度人材を受け入れる体制が整っているとはいえず、チャンスを失うなど、経済的な行方についても心配です」と話す。
近年は企業ごとに、LGBTQフレンドリーな取り組みを進める企業も増えてきた。だが 貴田CEOは「同性パートナーを配偶者として認め、企業として慶弔金や手当を出すのは、企業として一定数できます。ですがさまざまな面を異性婚のカップルと平等にしたいと思うと、例えば保険であれば、企業で負担して擬似的な保険制度を作ることが必要になってきます」などと例を挙げ、「社内と国の制度のギャップがどんどんと大きくなっているんです」と述べた。
また取引の上でも、「あなたの企業にも人道的な制度がありますか?、そうでないと取引できませんとおっしゃる企業もあります」と指摘。全く別の問題ではあるが、「例えば二酸化炭素排出の目標を立てている国とそうでない国の信用度は、国外から見ると大きく違います」とした上で、「LGBTQ当事者の人権を守る法律があることで、この国の企業と取引をするのが安全だと思ってもらえる信用度に、差がついてくるところだと思います」と話した。
有志によると、5月17日時点で賛同している企業・団体などは以下のとおり(五十音順)。
アクサ生命保険株式会社
アサヒグループホールディングス株式会社
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド
株式会社アルビノ
EY Japan
株式会社家や不動産
一般社団法人パートナーシップ協会
IDEO LP
合同会社Imaginic
株式会社WICH
株式会社エイト
ANAホールディングス株式会社
NECソリューションイノベータ株式会社
MSD株式会社
オコーネル外国法事務弁護士事務所
カスタマークラウド株式会社
株式会社サルソニード ハカシル事業部
河井耕治法律事務所
キンドリルジャパン株式会社
グラクソ・スミスクライン株式会社
株式会社クレイ
KDDI株式会社
合同会社KTラボ
株式会社Suns up
三洋化成工業株式会社
株式会社 jaybe
ステートストリート信託銀行株式会社
株式会社セールスフォース・ジャパン
積水ハウス株式会社
株式会社セプテーニ・ホールディングス
仙台TCMラウンジ
ソニーグループ株式会社
SOLIT株式会社
SOMPOホールディングス株式会社
Tsunagary Cafe(Tsunagaryオフィス合同会社)
株式会社 電通グループ
東京海上日動火災保険株式会社
株式会社ナイアンティック
ナショナルオーストラリア銀行
日本電気株式会社
日本アムウェイ合同会社
日本オラクル株式会社
日本コカ・コーラ株式会社
株式会社ニューピース
パナソニック コネクト株式会社
パナソニック ホールディングス株式会社
東日本旅客鉄道株式会社
合同会社ファーストさくら
ファインピース株式会社
富士通株式会社
ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)
株式会社 ポーラ
株式会社 ポーラ・オルビス ホールディングス
ボッシュ株式会社
本田技研工業株式会社
マイケル・ペイジ・インターナショナル・ジャパン株式会社
Money Atrium株式会社
Marimelo株式会社
Mizu Japan
三菱ケミカルグループ株式会社
モルガン・スタンレー・ホールディングス株式会社
ゆず兄弟株式会社
ra_shim hair【ラーシムヘアー】
ライフネット生命保険株式会社
ラッシュジャパン合同会社
らぺら株式会社
ランスタッド株式会社
株式会社Rine
株式会社releys
ロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社
株式会社ワーク・ライフバランス
LGBTとアライのための法律家ネットワーク
在日米国商工会議所
上智大学
同志社大学
<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>
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72企業がLGBTQ差別に「NO」。経済的視点からも差別禁止法が必要な理由