かつて「プリンター」は、技術産業を代表する製品でした。しかし、今では完全に時代に取り残された製品の1つになっています。
プリンターが時代に取り残された理由について、海外YouTubeチャンネル「Logically Answered」が解説しています。
*Category:テクノロジー Technology *Source:Logically Answered,wikipedia
プリンターは決して新しい発明ではありません。現代のプリンターの原型が登場したのは、1440年、ヨハネス・グーテンベルクというドイツの金細工師が1日に3600ページも印刷できる可動式印刷機を発明したときです。当時は、1日に40枚程度しか印刷できない手書き印刷が主流だったため、これはまさに革命と言えるでしょう。
1900年代に入ると個人や企業は、既存の書類を簡単にコピーする方法を求め出しました。しかし、当時のプリンターは聖書のような文章を複製するのには適していましたが、個々の文書やページを複製することに関しては、優れたものではありませんでした。
1938年、チェスター・カールソンが電子写真を使って、より効果的に文書を複写する方法を発見します。しかし、カールソンが発見した方法には「使い方が非常に難しい」という欠点がありました。そこで、カールソンはゼロックス社の支援を受けながら、21年間、電子写真の工程を簡略化することに没頭することになります。そして、1959年、商業用普通紙複写機として初めて成功した「ゼロックス914」が発売されました。
ただ、当時のプリンターは非常に高価だったため、個人が購入するのではなく地域のコピーショップやオフィスが月々約3万円でレンタルしていました。さらに、利用にあたっては1枚あたり約100円を支払う必要がありました。また、紙やインクも自分で用意する必要があり、1ページ印刷するごとに合計130円以上支払う必要があったのです。つまり、プリンターを利用する度に収益が上がるシステムだったということです。
ゼロックス社にとって、プリンターを売り切るよりも、コピー1枚ごとにお金を払ってもらう方が、はるかに良いビジネスであることは明らかでした。しかし、個人がパソコンを持つようになってからこのレンタルモデルは上手くいかなくなっていきます。ユーザーにとってわざわざコピーショップに行くことは不便になっていったのです。言い換えれば、家庭用プリンターの需要が高まったということです。
そこで、HP、エプソン、キヤノンの3社は「今がチャンスだ」とばかりに攻勢をかけます。1988年、HPから最初の家庭用インクジェットプリンターとして「HP Deskjet 500」が発売されます。
プリンターの価格は約11万円程でした。この価格は、当時人気を集めていたDELLのような格安パソコンよりも高かったため、プリンターはなかなかユーザーに受け入れられませんでした。ユーザーにアピールするためには、プリンターをいかに安く売るかが重要なのです。そこで考えられた方法がプリンターを赤字で売り、赤字の分はインク販売の収益でカバーするというものです。
これは、プリンターメーカーにとって非常に稼ぎやすいビジネスでした。実際、このインクの2019年のHP Inc.の全利益の63%を占めています。
プリンター各社は、印刷品質に影響を与えるプリントヘッドをインクカートリッジに搭載するなど、ユーザーにインクを購入してもらうための様々な工夫をしています。また、プリンターによっては、偽造インクの使用を防止するソフトウェアが搭載されているものもあります。
このようにプリンターの信頼性が欠け、品質と革新性が低下し、維持費がかかるようになったのは、業界がインクを多く売り収益を最大化させることに注力してきたからです。また、プリンターメーカーもいちど安くしたプリンター価格を上げるわけにはいかず、結果的には自分のクビを締めてしまう結果となりました。
プリンターメーカーは、現在もインクを売って収益を上げようとしていますが、今後はより厳しくなるでしょう。なぜなら、今はプリントした紙ではなく、データ上でやり取りをする機会が増えてきているからです。また、クラウド上のデータであれば、複数のバックアップを取ることもでき信頼性も高くなっています。
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家庭用プリンターはなぜ「安モノばかりで壊れやすい」のか?